清永美奈子
テーマ:
伝統的木造建築に用いるこけら葺き屋根の表面改質処理による1年間の屋外暴露性状評価

研究概要:
伝統的木造建築の屋根にこけら葺きがある。こけら葺きは、天然杉やさわらの木を柾目に割って敷き詰めた屋根である。こけら板は、採取された木材の産地をはじめ、生育環境、伐採時の年輪密度などの様々な条件で、屋根材としての耐久性に関わる基本的性質が大きく相違する。特に人工林材においては、天然林材と比較して材の損傷や木材成分の溶出が顕著となり、結果、使用年限が天然林材の25年より短くなる傾向にある。また、こけら材に関して、天然材が不足してきたこと、こけら材を作製することができる伝統職人が激減してきた社会環境を踏まえ、維持保全技法を提案し、その初期劣化性状を中心に計測・評価を行う。 

本研究では、こけら台を作製し、こけら材の改質処理を行うため、山梨県甲州市塩山で2009年12月から2020年の1月の10年間に渡り屋外暴露試験を実施し、天候、気温・湿度、部材内部の温湿度、紫外線強度、表面の退色度を行い、継続的にその分析を行う。今回は最初の年である1年間の暴露試験結果についての考察を行う。

本研究より、以下のことが明らかになった。

1) 内部温度は、深夜頃が最も温度が下がり、昼頃に温度が高くなる。

2) 秋田産と宮崎産の杉で明らかに湿度の差に違いがあることから、こけら材の種類によって湿度の差があることが考えられる。

3) 表面色の測定では、色が退色し、無彩色になってきていることが確認できた。

4) こけら材の種類により表面塗料がはがれていることから、適してる塗料と適していない塗料があると考えられる。

5)年輪数が多いとひび割れ数が多くなる。秋田杉よりも宮崎杉の方がひび割れが発生しにくい。

6)変形アスペクト比は人工林材と比較して、自然林材の方が値が小さいく、材が反りにくい。

後輩へのメッセージ:
田村研究室ではさまざまな実験、研究が出来ます。コンクリートから木材、色の評価などいろいろ出来るので、興味のある方はぜひ研究室に来てください。

研究業績:

田村雅紀,清永美奈子,山本博一,後藤治,伝統的木造建築に用いられるこけら材の高度維持・保存技法に関する研究,その1 こけら材の表層性状分析,pp.123-126, 学術講演会研究発表論文集,日本建築仕上学会,2009年

田村雅紀,清永美奈子,山本博一,後藤治,伝統的木造建築に用いられるこけら材の高度維持・保存技法に関する研究,その2 こけら材の表層性状分析,pp.123-126, 学術講演会研究発表論文集,日本建築仕上学会,2009年

田村雅紀,清永美奈子,山本博一,後藤治,伝統的木造建築に用いられるこけら材の高度維持・保存技法に関する研究,その3 こけら材の表層性状分析,pp.123-126, 学術講演会研究発表論文集,日本建築仕上学会,2009年

清永美奈子,田村雅紀,山本博一,後藤治,伝統的木造建築に用いられるこけら材の高度維持・保存技法に関する研究,その4 こけら板の基礎力学特性,pp.127-130, 学術講演会研究発表論文集,日本建築仕上学会,2009年

清永美奈子,田村雅紀,山本博一,後藤治,その1,田村雅紀,2009年度日本建築学会関東支部発表論文集,2010年3月

清永美奈子,田村雅紀,山本博一,後藤治,その2,田村雅紀,2009年度日本建築学会関東支部発表論文集,2010年3月

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