環境水をセンシングする化学
本研究室では,環境水質を計測するための様々なセンサーやセンシング方法を開発しています。光化学や電気化学あるいはその融合をベースにした自由な発想の展開により,簡便迅速で新しい計測法となるものをデザインします。

スケール・ファウリングのリアルタイム測定のための
光ファイバーセンサーの開発
光ファイバーはインターネット通信に今や欠かせない存在ですが,これを化学センサーの母体として使用する技術を開発しています。光ファイバーベースの分光学的化学センサーは,低コストで化学的な耐久性が高く,遠隔地からの測定が可能な特長があります。特に,光の進行方向に対して直行する「胴」方向に感応部をもたせるセンサーは高い感度を有し,種々の光共鳴現象を適用できる特長があります。これを用いて地熱由来のスケールや水処理におけるファウリングを計測するセンサーを開発しています。
世界第3位の地熱資源大国である我が国では,カーボンニュートラルのための更なる地熱利用の促進が望まれています。その際,配管や設備内への炭酸カルシウムやシリカ等のスケール(沈殿)生成が,熱交換効率や流量の低下など深刻な問題を引き起こします。そこで,新しく簡便で迅速なスケール評価手法の一つとして光ファイバーに基づく「スケールセンサー」を開発しています。光ファイバーの胴の箇所において光の通り道である「コア」を露出させて地熱流体に暴露し,コア表面へのスケールの析出に伴う屈折率環境の変化を伝播光強度から連続検出します。このセンサーは耐熱・耐圧性に優れており,高感度,低コストで単純な構成です。またスケール生成情報をある拠点から遠隔かつ多点的でリアルタイムに得られ,スケール計測に適した種々の特性があります。
一方,膜分離技術は,相変化を伴わない省エネルギー型の分離プロセスとして,温室効果ガス排出抑制や環境負荷低減に資する技術として期待されています。しかし膜表面に汚染物質が堆積することで引き起こされる「ファウリング」は,膜の処理性能を大きく低下させる重大な問題であり,その挙動の監視は重要です。ここで先述のセンサーを使ってファウリングを調べるセンサーの開発にも挑戦しています。

電気化学-光ファイバーセンサーの開発
前述のものも含め,光ファイバーを利用した多様なセンサーが考案されています。金や銀などの金属薄膜と光ファイバーを通る光が共鳴する「表面プラズモン共鳴」という現象を利用したセンサーや,光ファイバーに周期的な屈折率変化を施した,長周期ファイバーグレーティングやファイバーブラッググレーティングなど様々です。特に減衰モード共鳴(Lossy mode resonance; LMR)は主に無機材料の薄膜と誘電体である光ファイバーコアとの光共鳴でありLMRセンサーはそれを利用した新しいセンサーです。これらのセンサーは,光ファイバーの持つ遠隔利用性や波長選択性といった優れた機能を持つものの,適用可能な分析物が限られている課題がありました。
そこで私たちはこれらのセンサーに「電気化学」を融合したセンサーを提案しています。電気化学による化学反応の制御は,試薬の添加や洗浄操作と異なり半遠隔的に実施可能です。現在は,重金属を対象とした遠隔的なモニタリングセンサーの開発に注力しています。


他にも,分光電気化学センサーの開発,電気化学CO2RR生成物のリアルタイム測定,リチウムイオンバッテリー正極材料のリサイクル技術開発などの研究も行っています。
