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ここでは当研究室で行っている研究の一部について紹介します。 |
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一般のディスプレイに用いられている「ネマティック液晶」は一般に電圧(電界)で制御されていますが、誘電応答といい印加電界の二乗に応答します。つまり電界の極性は関係ないということです。これは、一般的にネマティック液晶分子の頭と尾っぽが区別できない(反平行に並んでいる)ことで、分子が持っている電気的な特性(双極子モーメント)が打ち消されているためです。ところが、たたえば、液晶分子が特殊な形状をしている場合、ある配向歪が生じた時に分子の頭や尾っぽの方向が揃ってしまうことが有ります。そうすると双極子モーメントは打ち消されず、「分極」として認識されることになります。そうすると、ネマティック液晶でありながら「印加電界の極性に応答する」ということになります。これをフレクソエレクトリック分極といい、この分極が生じる現象をフレクソエレクトリック効果と呼びます。一般にこの分極を生じさせるのはスプレイ(広がり)歪とベンド(曲げ)歪と言われており、それぞれ係数(e11,e33:フレクソエレクトリック係数)があります。
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通常、ネマティック液晶は印加電界の極性には関係なく応答しますが、フレクソエレクトリック効果を積極的に用いることで、ネマティック液晶を用いて印加電界の極性に応じた極性スイッチングができる可能性があります。特に現在、ハイブリッド(HAN)セルを用い、双安定界面と組み合わせたメモリー性を有する双安定液晶セルの研究を行って居ます。
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現在一般に市販されているカラー液晶ディスプレイは、R・G・Bのマイクロカラーフィルタを各画素に付随し、液晶を白黒シャッターとして用いる構造になっています。バックライトには白色光源を用います。各画素は細かいので(離れて見ることにより)目の解像度を超えることになり、空間的に色が混合されて認識され、R・G・B以外の色が認識されます。一方、バックライトをR・G・B・R・G・B・・・と時間的に切り替え、それに同期させて白黒液晶シャッターを開閉すると、網膜の残像効果により色が混合(時間的に混合)されて見えるワケです。このような方式をフィールドシークェンシャル方式といいます。この方式を使うと、前者のように3画素で色を表現するのではなく、1画素でフルカラーが表現できます。また、透過率特性が悪いカラーフィルタを使わずに済むので明るい表示ができます。しかし、バックライトの切り替えや、シャッターとして用いる液晶セルの応答速度が速くないと、十分な特性を得ることができません。
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古くから知られている成膜手法の1つにエレクトロスプレーデポジション(ESD)法という方法が有ります。配向材溶液を充填したシリンジに先端の極細管(キャピラリ)と適度な距離をおいて設置したガラス基板(ITO電極付)との間に高電界を印加すると、キャピラリ先端から静電気力により配向材溶液が吐出し、さらに空中で静電気力で分裂し基板表面に到達するときには非常に細かい液滴として付着、堆積させることができます。これを利用して成膜を行うのですが、スパッタや蒸着のような真空装置がいらず、また常温常圧で処理ができ、有機物の膜が製膜できる特徴等があります。これを利用して、配向膜を塗布する研究をしています。例えば、種類の異なる配向膜材料を別々のキャピラリから吐出させて堆積するときに混合させたり、基板電極の上だけに配向膜を製膜したりすることが出来ます。一般に配向膜の成膜で使われている印刷やスピンナーによる成膜と異なった配向膜の形成が可能なため、新たな液晶の配向制御ができる可能性が有ります。 |
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上記に示したESD法とほぼ同じ原理の装置で、用いる溶液に分子量が大きな材料を用いるとキャピラリから吐出した溶液は分裂・拡散せず細いファイバーとなります。この手法は、静電紡糸法(エレクトロスピニング:ES法)と呼ばれます。
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紫外線を照射すると固まる液晶があります。(紫外線硬化型液晶性モノマー)この材料を微量、通常の液晶(ここでは、一般にディスプレイ用に用いられているネマティック液晶)に混ぜて液晶セルを作ります。その後、いろいろな条件下で(例えば適当な電圧を印加した状態で)その液晶セルに紫外線を照射すると、セル中の液晶分子の配列に沿って、その材料が固まります(ポリマー化、あるいは高分子安定処理と呼ぶ)。しかし、その添加量が微量なので全ての液晶分子の動きが完全に抑えられてしまうわけではなく、ある程度自由に動くことが出来ます。このようにして作製したセルは、電圧を印加しなくても液晶分子配列が変形した状態になっているので、光学特性や応答特性等を改善できる可能性があります。また、電圧印加するときに通常の液晶セルでは起こりえないような分子配列の変形が起こる可能性もあるので、新しい表示モードができるかもしれません。
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一般に市販されている液晶ディスプレイにはネマチック液晶が用いられており、それらの表示モードとしては一般に、電圧を印加すると液晶分子の配向が動き、電圧を切ると分子群は初期配向状態に戻るという単安定のモードが用いられています。一方、例えば、BTN(Bistable Twisted Nematic)等の双安定モードは、書き込み、消去という動作により、ある1つの電圧で暗状態、明状態を実現することが出来ます。このモードではTFT(薄膜トランジスタ)などのスイッチング素子を用いずに高精細な表示が出来ます。(ただし、現在の所「暗」・「明」のどちらかなので中間調表示に問題は有る・・・)
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エレクトロウェッティング(EW)現象・電気的濡れ性制御というのは古くから知られています。これは基板上の液滴の接触角を電気的に変化させるというものです。例えば、空気中に置いた基板上の液滴の接触角は[基板・液滴]、[液滴・空気]、[基板・空気]のそれぞれの表面エネルギーが吊り合って「ある形」を保っています。これに電気的なエネルギ−(静電エネルギー)が加わると、そのバランスが崩れ、エネルギーのバランスを保つために接触角が小さくなるように液滴が変形します。液滴の接触角が全て同時に変化すれば液滴はその場にとどまっていますが、液滴は接触角が小さい方へ移動する性質を持っているので、部分的に接触角が小さくなるとその方向に液滴が移動しようとします。この現象を利用して水と油を用いて、つまり水の動きを利用して着色した油膜を張ったり、端っこに追いやったりすることで、ディスプレイの画素を形成する研究がされています。本研究室でも、この方式の研究を行なっています。また、この原理を用いた光学素子への応用などに関する研究を行っています。 |