NOBE Laboratory
My Work
2002Aomori


青森市北国型集合住宅国際設計競技
特別賞

1000点近い応募作品の中から、特別賞に選ばれた。小生の役どころは環境や省エネルギーといった漠然とした概念に具体的なかたちを与えることであった。多少コンペという場を意識して大仰な表現になっているが、雪の多い地方に住むかたの気持ちになって(薄くなった)頭をひねったつもりである。工学院大学建築学科藤木研究室(+α)有志諸君の頑張りに感謝。

青森市都市整備部都市政策課内/北国型集合住宅設計競技事務局 ホームページ >> http://www.e-convention.org/aomori/index.html
(2002年2月28日まで)


北国の街に、清らかな不凍湖をつくる

建築群を取り囲む水盤には、土壌に穿たれた幾つかのボアホールが接続されている。水盤の水はボアホール内部にも満ち、年間にわたって温度が一定である地中の不易層へ達している。ボアホールの底部へはブロアによって少量の空気が送り込まれ、そこで生じた小さな泡は、エアレーションの効果によって大量の水を浄化しながら地底から水盤へ湧き上がらせる。この流れは水盤とボアホール間の水の循環を促し、ボアホール内面では周囲の土壌との熱交換が促進されて、効率よく地中の熱が地表の水盤へと供給される。地中から取り出された熱は、冬期においては水盤や周囲の融雪に利用され、街区の風景を一変させる。一方、夏期においては逆に水盤の温度上昇を抑制する効果によって、建築群を取り囲む局所気候の緩和に寄与する。
「水盤」、「ボアホール」、「エアレーション」というシンプルなシステムによって、恰もそこに深く清らかな湖があるかのように、浅い水盤は夏期には周囲の暑熱を地中深くへと移し、冬期にはその熱を地中から再び取り出して、雪のない風景を出現させることができる。


周辺インフラへの負担が少ない設備計画

水盤とボアホールによる「熱的に安定した基盤」とともに、建築群のスケールメリットを生かして周辺インフラへのインパクトが少ない設備システムを提案する。
降雨、降雪は広大な水盤を一時貯留の場として活用し、下水道の負担にならないように放流することができる。同時に水盤の水は大量の防火用水として、あるいは非常時のトイレ洗浄水、飲料水(浄化が必要)として、街区の防災に貢献することができる。ボアホール内のエアレーションは、土壌熱の搬送とともに、水盤の水質向上に寄与する。また、都市ガスによるコージェネレーションは大量の低温排熱を発生させるが、排熱はボアホールを介して土壌の加熱に利用することによって、総合効率が極めて高い運転を安定して行なうことができる。排水はバッファータンクを設けることによって、下水道の処理能力に余裕のある時間帯に放流するようにし、生ゴミはまとめてコンポスト化することによって、敷地内緑地の涵養とともに廃棄物の減容・減量が可能となる。
水盤とそれに連動する設備システムにより、安全で環境が安定した、快適な街区を創出することができる。