NOBE Laboratory
Philosophy


研究の理念

建築は人間という不可思議な存在を包み込む物理的なシェルターだが、
それは自然科学と社会科学あるいは人文科学の接点で、それが建築の難しさでもあり面白さでもある。
したがって建築設備に関する諸々の研究にも、単に数値的な解を求めるのではなく、
人間を原点とした包括的なフィロソフィーを具備する必要がある。
気候風土や社会に相応しい次世代の建築および設備システムの創造を目標に、
理論研究から具現化のストラテジーまで、幅広い活動を範疇とする。

サステナブルな建築とは何か?それは決して物理的な耐久性でも表面的な省エネルギーでもあるまい。建築は多面的で複雑な成り立ちであるばかりか、それを取り巻く社会や環境の変化とは無縁ともいえる恒常性をもって、長期間地上の定点に存在し続ける。現在、我が国における住宅の平均寿命は欧米に比べて極端に短く平均26年といわれるが、それでも住宅建設は「一世一代」の大事業との思いが強い。伊勢神宮は古来20年ごとに遷宮を繰り返して機能の維持と建設技術を後世に継承してきたが、この20年というスパンが意味するものは我が国における建築を取り巻くあらゆる環境における最適解であったのではなかろうか。地震や台風などの天変地異が多く、さらに夏期は高温多湿で物が腐りやすい環境においては、欧米に比べて世の儚さを説く無常観が支配的な社会にならざるを得なかったことも肯ける。科学技術が発達した今日においてもこの無常観を構成する大部分の要素に変化はなく、政治や都市計画など本来その評価スパンが長い分野においても、社会を取り巻く環境に影響されて短期の最適化がなされている。このような現実のなかで、これからの建築は社会の短周期の変動にも適合し、なおかつ地球環境の保全という長期的な視野に立つ最適化も同時に達成しなければならないという矛盾を内包する。これは建築物の徒な長寿命化だけで成し遂げられるものではなく、我が国固有の「環境」にあった長寿命化とは何かを真剣に考える必要がある。その一つの解は、「建築と設備システムのシンプル化」にあると思われるのだが‥‥‥‥。