NOBE Laboratory
Profile of Tatsuo NOBE
Ski


底なしパウダーの浮遊感覚を求めて、厳冬の一瞬に賭ける。


スキーの原点は山スキーにある。舗装道路のようなゲレンデを一歩飛び出すと、スキーはターンのたびに三次元の跳躍を始める。ある時は雪煙で息が詰まるほどスキーは雪に深く潜り、次の一瞬には重力から解き放たれて軽々と雪面から飛翔する。素晴らしい浮遊感覚の連続。20代前半、それまでスキー理論に振り回されてゲレンデで雪の表面を撫でて満足していたが、一度ゲレンデを飛び出して深雪の魔力に取り憑かれて以来、チマチマしたスキーはいやになった。「千回転んでやっと一人前」と仲間うちでは云うが、今でも転倒を恐れて消極的な滑りにならぬように自戒している。厳冬の一瞬の晴れ間、広大な斜面、安定して軽い雪質、装備と腕前が揃った信頼できる仲間、と条件は厳しいが、好機を掴んで大斜面に自分たちだけのシュプールを刻みつける喜びは計り知れない。しかし、そこは容赦のない白銀の魔境だ。行動の責任はすべて自分にあることは言うまでもない。