NOBE Laboratory
My Opinion
Territory


空間認識と個体間距離

いつもの酒飲み話から、最近はガサツに人のテリトリーに踏み込む輩が多くて不愉快だ、との議論になった。空いている電車の中でもわざわざ隣に座られたりした気持ち悪い経験は諸兄もお持ちでしょう。小生も市塵を離れて静かな山中でキャンプしていると、わざわざ隣にテントを張る阿呆がいて、こやつの空間認識はどうなっているのかと逆に心配してしまうことがある。また、オートキャンプ場のように狭苦しく隣接したサイトでも平気で楽しむことができるお方もいらっしゃるが、小生から言わせれば気丈というべきか、あるいは無神経というべきか。小生は個体間距離をやや広くとりたがる傾向があり、人混みには恐怖を感じてしまう。また、行列するのも苦手で、並ぶ場面を極力避ける努力をしている。旨いメシ屋に並ぶぐらいなら、不入りな不味い店で苦悶するほうがマシだと思うほどである。
小生のテリトリーの堅さは極端な例かもしれないが、平気で隣にテントを張るような「空間認識があやしい人」が建築に関わると、危険極まりない。設備設計の分野でも同様で、空間オンチの手にかかると、「収まっていない」部分が頻出する。人間と同様に、物を据える時も周囲の状況を察知して、干渉のないようにする必要があるが、空間に対する洞察力は生来のものかもしれない。機械室の詳細図を描かせると、センスの有無が如実に現れる。そこに配置される物体は無機的なものでしかないが、それぞれが主張する「テリトリー」を心で聴く必要があるのではないか。一品生産の建築に対するこの心配りこそ、設備設計者の大事な職能であると思われる。