石塚 裕美

卒論タイトル:
茅勾配を変化させた伝統的茅葺屋根の内部温湿度分布と乾燥状態の評価

研究概要:

伝統的木造建築物の一つである茅葺屋根とは草で葺かれた屋根のことであり、茅とは屋根を葺く草の総称である1)。茅葺屋根は年々減少しており、その理由として、屋根の耐用年数が茅の劣化により確保し難いこと、定期的な葺き替えを必要とするため修繕費用が掛かる等があげられ、伝統的な茅葺建築を保全するためには屋根の長期耐用化が求められている。
茅葺屋根に関する既往の研究として、茅葺屋根の主要な劣化要因は雨による茅の水分保持とそれに伴う菌類の繁殖からの腐朽2)であることがわかっている。また、防水性や防雨性能の観点からガラス棒を積層した雨水の浸透性3)と材の勾配による影響4)などが検討されているほか、熱環境の観点から茅を用いた内部温湿度5)が検討されているが、茅の種類と茅勾配を区別した茅葺屋根の雨の影響による内部温湿度と乾燥性状の観点から、耐久性状に関わる検討を行った事例はない。
本研究では、茅葺屋根を保全するために、屋根の長期耐用化に繋げられるよう、既往の研究をふまえて降雨後の早期乾燥状態を確保するため、実際の茅葺屋根に葺かれる材と茅勾配に着目した実験を行い、検討する。現場調査(研究1)として@茅葺屋根の葺き替え現場を調査し、材料実験(研究2)としてA乾燥湿潤状態の密度、BX線CT撮影による茅の密度、C散水後の重量変化に伴う含水重量比と水分逸散速度係数を算定し、部材実験(研究3)として、実際の茅葺屋根に近い状態の試験体を作成、D試験体と現場調査で得た茅密度の比較、E茅勾配を変化させた茅葺試験体表面における散水試験を実施し、屋根内部温湿度と乾燥状態を評価する(図1)


後輩へのメッセージ:

茅葺きの文化と歴史を材料の視点から研究することもできます 今は屋根の研究を通じ,太陽光パネルの設計・施工関連の業務に携わり,社会と環境と経済の問題に直接かかわっています!

研究成果:

石塚,田村,後藤,田揚:茅勾配を変化させた伝統的茅葺屋根の内部温湿度分布と乾燥状態の評価,日本建築学会関東支部研究報告集,2011.3

石塚ほか:茅勾配を変化させた伝統的茅葺屋根の内部温湿度分布と乾燥状態の評価,日本建築仕上学会研究報告集,2011.10予定