熊谷早織
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テーマ: ホウ酸―ケイ酸ナトリウム処理による難燃化茅葺材を用いた文化財建物の高度維持技法の開発 |
研究概要: かつて日本の屋根の主流であった茅葺屋根の建築物は年々減少傾向にある。その背景として、屋根に使用する茅材の耐用年数確保が難しいことや火災に弱いなどの物理的要因、定期的な葺き替えに多額の修繕費用がかかるなどの経済的要因、職人の高齢化、後継者不足、生活様式の変化および茅材料が入手困難なことなどの社会的要因が挙げられる。伝統的木造建築物である茅葺屋根は保存対象となっているが、これらの物理的、経済的、社会的要因のため文化財として指定されていても個人で保存していくには困難な状況である1)。既往の研究によると、珪酸ナトリウム(水ガラス)、ホウ素化合物系およびコロイダルシリカ溶液系による木材を用いた無機質複合体を生成することにより木質材料の難燃性、耐朽性、耐蟻性および硬さの性能を向上させることが明らかとなっている4)5)6)。特に、ホウ素化合物で生成した場合、寸法安定性、耐朽性および難燃性などの性能が向上すると報告されている。そして、ホウ素化合物と珪酸ナトリウムを混合するとゲル化し使用材料に固着すると考えられている。以上を参考に、本研究は茅葺屋根材料に使用されるススキの難燃化を試み、無機物である珪酸ナトリウムおよびホウ酸と有機物であるススキを用いて、茅材の作業工程を前提とした難燃性能付与を試みたものである。 1) 短時間で複数回含浸処理を行うと1回で同時間含浸させるよりも多くの溶液を含有させることが出来る。Aa60は非常に高い質量増加率を示した。 2) 研究2の方法では根本付近に密度が集中し、その部分しか難燃化できない。難燃剤の含有量の調整が困難である。未処理材と比べても難燃効果はほぼ変わらない。 3) 難燃効果が高いと進展速度が遅くなり、上部着火が遅くなる。上部着火遅延時間を軸に見ると、Ac60の難燃性が非常に高い。 4)上部着火遅延速度および残炭率は今回1本燃焼および5本燃焼を行ったが一般化できる可能性がある。 |
自己アピール: 趣味、弓道、読書、散歩、人間観察 研究成果;
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