鈴木志野

テーマ:鉄筋コンクリート造建築物における左官仕上材の躯体保護効果

研究概要:

近年,地球環境問題の対策等の影響により,建設業界には産業廃棄物の削減や二酸化炭素排出量の削減等が促されている。産業廃棄物を削減することによって,二酸化炭素排出量,および,廃棄に関するコストも削減することができる。よって,鉄筋コンクリート建造物の耐久性能を向上させ,長期に渡り使用することが現在の建設業界には求められてきている。 住宅の品質確保の促進等に関する法律,および長期優良住宅の普及の促進に関する法律では,鉄筋コンクリート建造物の耐久性を向上させ,長期的に使用するため,仕上材を用いてコンクリート造建築物を保護することが可能となっている。しかしながら,その効果を確認した実験データはまだ少ないことが現状である1)2)。実際に内装に漆喰仕上げを施した鉄筋コンクリート造の蔵が長期に渡り立ち続けている例がある。

本研究では,築93年になる内壁に漆喰を塗布したコンクリート造蔵を参考にしてコンクリートに左官仕上材を塗布した場合のコンクリート造建築物の躯体保護効果を評価することを目的とする。研究の流れは,調査対象となる内壁に漆喰塗布が施されたコンクリート造蔵の調査をし,現状を把握する(研究1)。コンクリート試験体を作製し,左官仕上材を塗布して強度試験(研究2)を行う。続いて,表層性能試験(研究3)を行う。

以上の研究から仕上材がコンクリートに及ぼす影響を調査する(図1)。また,本報告では研究1の実例調査,および研究2の圧縮強度試験,静弾性係数,ポアソン比,破壊臨界ひずみの試験についての報告を行う。

1)コンクリート打設後,より早い段階で仕上げをすると,圧縮強度および破壊臨界点は高い数値になることが確認できた。

2)漆喰仕上げおよび石膏仕上げは,同仕上げ日のモルタル仕上げに比べ破壊臨界ひずみが大きくなる傾向がある。

3)コンクリート打設後,仕上げや封緘等をせずに気中にて養生を進めると,剛性が弱くなる傾向がある。また,より早い段階で仕上げを塗布することで剛性も高くなる傾向がある。

4)漆喰,石膏,モルタルの3種類の材料を仕上材として用いた場合,漆喰が最もコンクリート躯体の保護効果が期待できる。

学部卒業研究では、左官仕上げをコンクリートに施すことにより、コンクリートの強度が強くなり、破壊臨界点も高くなるという結果になりました。左官仕上げ材を施すことでコンクリート内部の含水量が保護され、その結果コンクリートの強度が強く出たと考えられます。

また、修士での研究で行う予定の表層性能試験においても、左官仕上げ材を施すことによりコンクリートが二酸化炭素に直接触れなくなるので、中性化速度の遅延等が見込まれると考えています。

自己アピール:

好きな食べ物はお酢です。

好きな飲み物は熱燗です。

誕生日:3月25日 プレゼントください。

研究成果:

1)鈴木,田村:日本建築学会関東支部,2012,3

2)鈴木,田村:日本建築仕上学会学生奨励賞審査論文,2012,3

3)鈴木,田村:工学院大学UDM論文集,2013.6

4)鈴木,田村:日本建築学会学術講演梗概集,2012,8(予定)