小野 幸彌(レール)


テーマ:

建築外壁タイル仕上げの施工時環境を踏まえた剥離剥落要因の検討


研究概要:
現在、日本では高度成長期に建築された建物が経年により一般外壁仕上材劣化を起こし剥離剥落として確認されている。中でもタイル仕上げ材は広く建物の外壁材として剥離剥落による事故が最も多く報告されており、剥離剥落原因要因として施工方法や施工使用時環境などの工法による問題、下地表面処理である目荒しの問題や施工時間、天候などの外部因子要因、又は施工技術者の練熟度によるヒューマンエラーが大きく関係しているが、施工における要因とモルタル付着力の関係性は不確定事項が多く関係性が明確になっていない。本研究では研究1に剥離剥落調査を行う。図1に研究の流れを示し表1に研究における要因と水準を示す。研究1ではタイル外壁材の剥離剥落基準類調査を行い、事故調査報告書を収集し、事故に関する原因究明結果を調査する。研究2では研究1を基に実際に発生した都内タイル外壁仕上材剥離剥落調査を行い、施工時代背景等の残留資料等から剥離剥落原因を様々な方向から解析し原因究明を行う。研究3においては施工・使用時環境を考慮した躯体目荒し法及びモルタル下地試験にて躯体製作を行い、各種規程目荒し、各施工方法にてタイル施工を行う。これらの研究3の結果と研究2の結果を合せ予防保全維持管理の視点提案に活用してゆく。

本研究より以下の知見が得られた。
1)調査建物において剥離剥落原因は施工時環境が影響する事が分かり、剥離剥落防止に繋がる予防保全型の施工管理は重要である。
2) 躯体面への水湿しは張付けモルタル調合により水分量が多いと効果が低下する為、水湿しが必要な施工時環境に把握が必要である。
3) 躯体面への目荒しは1mmを超える深さがある場合、モルタル調合により施工技術の影響が生じる可能性があり水湿しの余剰水が残留する可能性も考えられ付着強度に影響する。
4) モルタルの砂率は施工性を重視して決められるが、砂率が低い場合水湿しによる界面付着強度の低下や砂率が多い場合は荷重時のひずみの分散によりひび割れの局所化が妨げられ剥離防止に繋がる。
5) 施工時のタイルモルタルが可塑性がある段階で、衝撃力を受けた場合、タイル重量によってはひずみが分散しひび割れの局所化が妨げられ、強度低下が生じない場合がある。
6) 施工時の躯体が重量物や収縮の影響で800(μ)に近づくひずみを生じた場合、付着力が低下し剥離しやすくなる。
7)砂率が低くなると荷重に対して脆性的な強度低下を示し、逆に砂率が高くなると微細なひずみにより脆性的な破壊が回避された。
8)タイル施工を行う施工者は極端な施工を行う事は考えにくいが、モルタル調合においてはモルタル粘度と水湿しの目安が必要である。


研究成果:
1)小野幸彌、田村雅紀、建築外壁タイル仕上げの施工時環境を踏まえた剥離剥落要因の検討、2013年度日本建築学会関東支部研究報告集1,CD-ROM, 2014.3.2

2)小野幸彌、田村雅紀、都市建築物における外壁タイル仕上げの施工時環境を踏まえた剥離剥落要因の検討 平成25年度研究成果報告書,工学院大学都市減災研究センター,2014.3