大岩優美(てん)


研究テーマ:
木質バイオマス系無機有機混合外装材の品質評価と環境影響

研究概要:
昭和20年代頃から植林してきた木々は多くが利用可能な樹齢に達しているが、現在の日本は材木の7割以上を輸入に依存しているため、森林荒廃が目立ち未利用の間伐材が増加している1)。環境を保全し森林資源を循環させるため、未利用木材をバイオマスとして加工し使用可能な建材としたり発電用チップとして活用する必要がある。後者の場合固定化された炭素が燃焼時に排出するため、バイオマスを製品原材料とした低圧縮型木片コンクリートに注目した。これは骨材に木材を使用した無機有機混合コンクリートで、固定化されたCO2を排出せず建材にでき、構造用材料として外装使用できる等、多くのメリットがある。しかし、海外の耐火基準は満たしているが、日本の法律で定められた圧縮強度を満たしておらず耐火試験が実施できないため、日本で構造用材料としての使用は容易ではないが、圧縮強度20N/mm2以上を一部の水準で達成し、構造材料として使用を可能にする第一歩となっている2)。 建築材料を分類すると、構造材、仕上材、下地材及び機能材の4種類に分けられる3)。本研究では構造体としての使用と共に機能性を含んだ仕上材としての利用拡大に向け、表1の使用材料により製造した無機有機混合外装材(以下MYボードとする)としての評価を進め、CO2固定化に貢献できる建材を目指す(図1)。表2に必要な試験の抜粋とJIS規定を表3に比較試験体の種類を示す。試験体の作製にあたって、外装材として使用されているボード類のJISとの比較検討をふまえ4)、研究1、2でMYボードの性能評価を行い、研究3で環境影響に対する評価を行う。

本研究により以下の知見が得られた。
1)木チップの使用によりコンクリートに比べ屋外使用による色落ちが多くみられたが、熱伝導率の低下及び温度低減効果を発揮した。
2)大サイズの木チップで吸水による長さ変化率や色差の変化量が上昇したため、使用するチップが大きいほど耐久性に影響を与えると考える。
3)劣化による機能性低下の割合は木チップが大きいほど大きくなったため、機能性の向上はチップの使用量によって決まると考える。
4)無機有機混合材はセメント量増加での強度向上のためCO2排出量が上がるが、工法や必要性能の違いで木チップの割合を検討することによりCO2排出量を抑えることができると考える。

研究成果:

1)大岩優美、田村雅紀、木質バイオマス系無機有機混合外装材の品質評価と環境影響、2013年度日本建築学会関東支部研究報告集1,CD-ROM, 2014.3

2)大岩優美、田村雅紀、震災廃棄木材を含む木質バイオマス系無機有機混合外装材の品質評価と環境影響 平成25年度研究成果報告書,工学院大学都市減災研究センター,2014.3