坂上 志帆(しほり)

 

研究テーマ:
建物ライフサイクルの各種工事における環境騒音の周波数特性と改善手法

 

研究概要:

建築活動の行為には活性化と工事音によるリスク予防が挙げられ、音にはうるさい音と気になる音がある。具体例を挙げると車がある。車の走行音がうるさいということで走行音が静かな車が開発されたが、車が近くを走行していることに気付かなかったという事例があり、国土交通省は車両接近通報装置を取り付けることを義務化した。施工現場も同じでこれと似ていると考えられる。 そこで、建築作業行為で現場内の音を下げる必要がある。環境省の騒音に係る苦情件数1)(平成23年度)は15,944件であり、内訳を見ると建築作業が5,206件(32.7%)であった。建設作業の比率は年々増加している。これは、特定建設作業は一過性の騒音のため工場騒音に比べて騒音規制値が高く設定されていることが要因のひとつである。また、住宅密集地等でも建設重機が使われるようになったことも要因である。 人間の可聴領域は20〜20000Hzであると言われ、人の体の各部位には共鳴周波数2)というものがあり、人間の耳は4000Hzである。これは人間にとって最も感度が良い周波数であり、高くても低くても感度が低下するとされている。これ等ラウドネス曲線からも言える。 図1に研究概要図を示す。本研究では研究1で実施工物件における工事機器の音の伝わり方、また周波数特性について調べる。研究2では工事を新築、解体、改修の3種別に分類しそれぞれの音の特性を質量則、距離、位相の入射位置の観点から実験を行う。

本研究の結果、以下の知見が得られた。
1) 研究1より、作業室からの部屋の距離やスラブ厚、壁厚により減衰かつピーク帯が変化することがわかった。
2) 研究2の距離減衰実験より、ピーク帯が同じものよりも距離によって違うピーク帯を持っている機器の方が大きく減衰している結果となった。
3) 研究2の質量則実験より、どの機器も高周波数の吸音率は高く特に材料を2枚重ねるとより大きく吸収することがわかった。
4) 研究2の位相差入射実験より、目的とした周波数では音圧を下げることに成功したが、それ以外の周波数で騒音レベルが上がってしまったものもあった。

研究成果:

1)坂上志帆、田村雅紀、建物ライフサイクルの各種工事における環境騒音の周波数特性と改善手法、2013年度日本建築学会関東支部研究報告集1,CD-ROM, 2014.3

2)坂上志帆、田村雅紀、都市建築ライフサイクルの各種工事における環境騒音の周波数特性と改善手法 平成25年度研究成果報告書,工学院大学都市減災研究センター,2014.3