保田 直哉(ヤス)

研究テーマ:
長期供用建物から多点採取した小径コアによる外部環境の品質影響評価

 

研究概要:
高度経済成長期に建設された多くの建築物が寿命を迎え始めている。現在、公共工事の多くはスクラップ&ビルドの工事から、ストック&メンテナンス1)2)(補修・改修)の工事へと移行傾向にある。それに伴い、建築物の診断の件数も増加しており、対象建築物を使用しながら試験を行うことが求められる。しかし、大きな機械の搬入・使用、音や振動の問題も多くある。また、人間の目視による診断は細かな評価項目を設けていても、試験者の経験、知識によって結果が変わることが考えられる。そこで、今後期待されている周囲への影響を抑え、機械的に評価ができる微破壊試験・非破壊試験3)4)を用いて既存建築物を対象に各実験を行った。さらに、建築物の劣化は経年のみではないと考えられる。使用状態や環境状態において、劣化の進行が早まる可能性もある。既存建築物がどのような状態であるかを調査し、知ることで、各面において効率的な工事ができると考えられる。ISO 21930の改正予定の中では、建築製品の使用環境別に材の耐用年数を仮定することも含まれていることからも推測される。 図1に研究の全体図を示す。本研究では研究1において微破壊試験で得た結果と環境因子による影響の関係、研究2において研究1で得た結果と非破壊試験の結果の関係を評価した。(図1)

本研究より以下の知見が得られた。

1)築50年のRC造の長期供用建物を評価するために、  1996年の耐震診断では12本採取で評価をしたが、今回は小径コアで多点の360本により、建物の品質状態を分析した。
2)小径コア(φ30o)でも圧縮強度評価は可能であるが補正定数が必要となるため、元データ(直径が粗骨材の最大寸法の3倍以上のもの)を得る必要がある。
3)小径コアの圧縮強度は多点採取により施工品質や方位、階数、庇有無による外部環境の品質影響の評価ができ、環境因子の影響をとらえるには複数のデータが必要である。
4)機械インピーダンス法を例とした非破壊試験により圧縮強度の相関が見られたが、ばらつきが大きく、外部環境因子の影響を含めた評価には微破壊試験と比べ、更なるデータの蓄積が必要である。

 

研究成果:

1)保田直哉、田村雅紀、長期供用建物から多点採取した小径コアによる外部環境の品質影響評価、2013年度日本建築学会関東支部研究報告集1,CD-ROM, 2014.3

2)保田直哉、田村雅紀、都市の長期供用建物から多点採取した小径コアによる外部環境の品質影響評価 平成25年度研究成果報告書,工学院大学都市減災研究センター,2014.3