栗島 千佳(ちかちゃん)



研究テーマ:

長期使用した既存鉄筋コンクリート構造体の非破壊試験と現場業務への展開

研究概要:
長期使用した既存鉄筋コンクリート構造体の非破壊試験と現場業務への展開は
、スクラップ&ビルドでは、建築に伴う資源の浪費や環境負荷が大きくなり、環境への負荷を低減する取り組みとして、建物の維持保全を考えざるを得ない状況となっている。 鉄筋コンクリート造の建物を維持保全するには、経年劣化による建物全体に与える影響の対策、躯体の品質を評価することが必要となる。品質を評価するにあたり、検査・調査目的に合わせた試験データを多量に、簡易に入手できるかが重要である。 試験データを入手するには、実際の建物よりコンクリートコアを採取する破壊試験と、目視・超音波・衝撃弾性波などを利用する非破壊試験がある。破壊試験は、結果の信頼性は高いものの、構造耐力上の問題があり、高価な費用負担につながるため、多数のデータを入手することが難しいとされた。これらの問題は、非破壊試験によれば解決できるが、精度のよさを第一に考えると破壊試験に頼らざるを得ないことも多い。しかし近年の非破壊試験の開発・整備は、これまで破壊試験だけでは把握できなかった品質・性能を高い解像度で提供している。

1)既存コンクリート造の現地調査については、3件の調査より、鉄筋コンクリートの劣化はひび割れを中心にひどくなっていた。

2)工学院大学八王子校舎1号館煙突コアについては、反発度より圧縮強度を推定した結果、平均19.95N/.であった。反発度と衝撃弾性波速度比より、推定換算圧縮強度を求める式y=0.056x-12.75を導いた。試験体の中性化深さは68.92oになった。この結果を岸谷式の算出式より10850年に相当した。これは、通常の築53年の中性化深さよりも200倍進行していた。

3)実際の構造物における推定換算圧縮強度については、保存対象建築物であるため、衝撃弾性波速度比により推定 換算圧縮強度を求める式y=0.056x-12.75から圧縮強度を推定できた。平均推定換算圧縮強度は7.49N/.であった。これは建築基準法施行令第74条鉄筋コンクリート造に使用するコンクリート圧縮強度12N/.に満たしていない。この保存対象建築物は、補修、補強などの対策が必要である。工学院大学八王子校舎1号館と同様、煙突であるため中性化の進行を示唆している。

4)総括として、実強度に対する値と非破壊試験による換算圧縮強度では大きな差が出た。反発度と衝撃弾性波速度比による非破壊試験では、コンクリートの骨材、セメントなどの部分により結果の影響が及びやすい。この影響を回避するためには、コンクリートの骨材、セメントなどの部分ごとに検討し、非破壊試験による推定換算圧縮強度式の精度を向上させなければならない。非破壊試験による推定換算圧縮強度式の精度の向上は現場業務への展開につながる。

 

研究成果:
栗島,長期使用した既存鉄筋コンクリート構造体の非破壊試験と現場業務への展開,工学院大学卒業論文