研究概要:
現在、地下空間は大都市における残された貴重な空間として、景観上や防災上の観点から活用が改めて認識されつつある。
大都市における建築物の多くは地下階を有しており、上下水道といった個別施設をはじめ共同溝、さらには人や車が移動する交通空間と駐車場、店舗などが一体となった地下街まで様々な施設が道路をはじめとする公共用地の地下を中心に存在している。
地下空間はまさに都市の活動を下支えしているといっても過言ではない。また、大深度法の制定など新しい地下利用の概念が提起されたこと、加えて国が進める都市再生政策によって大規模な都市開発が推進されていることもあり、都市部の地下利用に関する関心は高まりを見せつつある。
しかし、既存の都市地下空間では、地下歩道や地下街の老朽化と空間の劣悪さが目立ち始めており、既存ストックの改善が緊急の課題となっている。これらを踏まえ、本研究では無機質な地下空間に緑化を施し、定着させることで、アメニティを創出し、屋内の環境を向上させることを目的とする。また緑化に使用する植物は軽量で建物への負荷が小さく、ローメンテナンスかつ施工性の良い苔を選択した。
苔は、他の植物と異なり、微生物分解によってCO2を大気に還元することがないため、極めて高い炭素の貯留性を誇る。
地下歩行者空間のような閉塞感のある場所では二酸化炭素がこもりやすいため、苔による緑化を施すことで空気を浄化する効果が大きく見込めると考えられる。
また、その他の効果として精神の安定・肉体疲労の回復促進・ストレス解消効果などの癒しの効果が期待される。
使用材料
1.苔付き試験体の下地材:モルタル、リシン/スタッコ、石材、ALC、タイル
2.苔付き試験体の苔:砂ゴケ
3.光源:白色LED、3波長蛍光灯、LED、蛍光灯
実施計画
1.地下空間の緑化、苔による緑化に関する既往の研究分析、植物工場の調査を 行う
2.地下空間と緑化に対する印象評価アンケートを実施する
3.試験体を作成し、使用する壁材や光源などの諸条件と苔の定着関係について分析する
4.試験体の物性評価、植生評価を行う
研究成果:
1)赤堀美遊: 地下空間における内装壁材への苔植物の緑化,工学院大学卒業論文報告,2018.3
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