半座 三紗子(misa)



研究テーマ:

遺産的建造物におけるラス漆喰天井補修及び左官仕上げの色彩復原に関する技術検討

研究概要:
文化遺産とは文化を共有する集団の歴史、伝統、風習などを集約した象徴的な存在である。
そして、文化財建造物は地域復興や観光復興において観光拠点形成となる ように、日本の社会において重要な役割を果たしている。

2011年に起きた東日本大震災では近現代の建造物を含む文化財建造物にも一定の被害があった。
そのなかでも、九段会館に見られるラス天井漆喰にはラスの劣化が原因とみられる影響も見られた。
ラスは内部や天井からのCO?を吸収することにより、漆喰が中性化することで湿度や温度の条件では、ラスの防錆処理により鉄部分が腐食し膨張することでラスが表面で剥離する。
そのため、今後特定天井は剥落する危険を持っている。
美しい天井漆喰を守るために、本研究ではかつて使用されていたラス天井漆喰を採取しCO?透過率やラスの成分を調べ、現代のものと比較し、また現代のラスの大きさ別に漆喰の付着強度を実験し、補修に特殊アクリル樹脂を使用することで特定天井の剥落を防止することを目指す。文化財建造物におけるラス漆喰天井の特殊アクリル樹脂を用いた剥落防止効果として,まずはラス漆喰天井の歴史について調べている。
また,実際のラスしっくい天井の現場を視察し,使用環境について観察をしつつ,実部材を採取して,その断面の測定,天井裏側からの長さ を測定した中性化の程度を,蛍光X線分析,示差熱・熱重量分析により,どの程度のラスに対する腐食しやすい環境かを評価している。
今は,実際の部材を作成し,ラスの大きさ,しっくりの調合の程度により,特殊アクリル樹脂により付着程度がかわるかを研究している。


研究結果により期待される効果
ラス天井漆喰は洋館の物に多く使用されている。天井漆喰が腐食し、剥落してしまう原因を過去の剥落したラス天井漆喰から分析し、補修を目指すことで将来的には剥落漆喰を蘇らせることができる。また、現代のラスを比較し、より良いラスや漆喰の形や成分を研究することでこれからできるラス天井漆喰を安全で長く利用される文化財となることを目指す。
そして、日本だけではなく、洋館の多い海外でも補修の技術が広まることが期待できる。

研究の実施計画
本研究は以下により進める。
1.蛍光X線と熱分析器による測定
  (1)1917年に使用されていたラスと漆喰から蛍光X線でラスと漆喰の成分量を分析する。
  (2)熱分析器で4層になっている漆喰の層別に含まれる酸素量を測定する。
2.現代のラスと漆喰の比較のための試験体を作る
  (1)目の違う数種類のラスに漆喰を塗り性能の試験をする。
  (2)試験体で中性化と強度の試験をする。 
3.現代のラスの成分の試験をする。
  (1)現代のラスに含まれる亜鉛メッキの量を蛍光X線で分析する。
  (2)ラスの腐食試験をする。
4.漆喰の補修方法を模索する。
  (1)特殊アクリル樹脂を用いた補修をする。
  (2)中性化しにくい漆喰を模索する。

研究成果:
1)半座三紗子,田村雅紀,既存の現近代建築におけるラス漆喰天井の劣化状態の評価工学院大学研究ブランディング事業,巨大都市・複合災害に対する建築・情報学融合によるエリア防災活動支援技術の開発と社会実装,成果報告書2018.3
2)半座三紗子,既存の現近代建築におけるラス漆喰天井の劣化状態の評価,工学院大学卒業論文報告書2018.3
3)半座三紗子,田村雅紀,岡健太郎,後藤治,遺産的建造物における剥離したラス漆喰天井実部材を用いた劣化状態の評価,2018年度日本建築学会学術講演梗概集,CD-ROM, 2018.9
4)Misako Hanza, Masaki Tamura, Kentaro Oka, and Osamu Goto,Deterioration Evaluation of the Stucco Lath Ceilings in the Historic Building in Japan, 17th International Symposium on Advanced Technology (ISAT-17) Engineering Innovation for Sustainable Future November 13 - 15, 2018 Danang, Vietnam
5)半座三紗子、田村雅紀、岡健太郎、後藤 治、施工後100年が経過した遺産的建造物におけるラス漆喰天井の劣化状態の評価,2018年度 日本建築仕上学会研究発表論文集,pp.133-136, 2018.10

6)半座三紗子、田村雅紀、遺産的建造物におけるラス漆喰天井補修及び左官仕上げの色彩復原に関する技術検討、2019 年度 鉄筋コンクリート構造物の非破壊試験部門ミニシンポジウム−歴史的構造物の非破壊検査−、2020.3(延期)
7)半座三紗子, 田村雅紀,姜灌涵,後藤治,菅澤茂,陳啓仁,石澤玲美,台湾における日式建築の左官仕上げ復原に向けた材料特性評価,2019年度 日本建築仕上学会研究発表論文集,2019.10
8)Misako Hanza, Masaki Tamura,Study on Collapse Prevention Construction of Wooden Lath and Plaster of Ceiling Boards,18th international symposium on advanced technology (ISAT-18),Taiwan,2019.11
9)半座三紗子、遺産的建造物におけるラス漆喰天井補修及び左官仕上げの色彩復原に関する技術検討、2019 年度 工学院大学修士論文、2020.3

特技・趣味:
食べることが大好き,運動したり,音楽聞いたり,生け花したり,絵をかいたりすることが好き!