長崎 翼(つばさ)



研究テーマ:

アジアモンスーン地域の海外住居構造壁の繊維補強

研究概要:
現在、東南アジア諸国を初めとする新興国の住宅ではコンクリートブロック、日干しレンガ、土壁等を用いた構造壁が主である。
しかし、鉄筋を挿入しない、材料が安価であるため強度が十分ではない等の問題点が挙げられる。
これらが要因となり外力に対する抵抗が小さく、地震時に壁面の倒壊が確認されている。

また、今回対象とするインドネシアの住宅は、平均価格250万前後であり建築基準法が定められていないため日本に比べてスペックが低い。
よってコストがあまりにかかるとニーズがなくなる。そのため低コスト化が第一に求められ、費用対効果の大きい工法としなければならない。 
これらを踏まえ、本研究では東南アジア諸国の平均的な住宅構造壁の安全性を高める為、三軸型ポリプロピレン(PP)シートを壁面の仕上げモルタルの下に付着させブロックの飛び出しや倒壊の危険性を低減させる新工法の開発を行う。

ブロックの面外への飛び出しや倒壊をppシートにより面で外力を受ける構造へと昇華させ、安全性を向上させる。
・低コストである。・壁面仕上げモルタルの下に付着させる工法により容易に施工が可能。・同上の工法により既存の建築物への応用が可能。
これらの利点により東南アジアを初めとする新興国で広く普及が予想される。
また、国内の補修が必要なレンガ造への応用も視野に入れている。
本実験では壁面に外力が加わることを仮定し、試験体を作成し三点式界面せん断試験によりppシートの有無による抵抗差を評価する。

使用材料
1. レンガ(JIS R 1250)
2. 現場調合モルタル (質量比)水:セメント:砂=1:2:53. 三軸型ポリプロピレンシート実験手順(外力水平方向)
1. レンガ2つのひら面を目地とし、現場調合モルタルで付着させ、長手面目地部分に仕上げモルタルでppシートを張る。
2. レンガを下端2点で支え、片側上端に圧縮試験機で荷重を加える。
3. 左右のレンガのひずみ、変位、破断荷重によりせん断抵抗値を求める。
4. ppシートの有無によるせん断抵抗値の差を評価。鉛直方向に外力が加わる場合、小口面に目地を造り、同上に試験を行う。

研究成果:
1)長崎翼、田村雅紀, 東南アジア地域レンガ造住居壁面の繊維補強シート面材による変形抵抗性の改善2017年度 日本建築学会関東支部研究報告集1,CD-ROM, 2018.3
2)田村雅紀、六角暁、横田将吾、長崎翼、2017年ISATジャパン アジア・モンスーン地域住宅における自然災害対応型−建設技術の開発・普及、ポスターセッション、2017. 8工学院大学
3)長崎翼、東南アジア地域レンガ造住居壁面の繊維補強シート面材による変形抵抗性の改善 2017年度 工学院大学卒業論文報告集,CD-ROM, 2018.3