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研究概要：
意匠性、耐候性に優れるタイルは、高層建築のコンクリート躯体を保護する外装材として数多く採用されている。
しかしながら、タイル仕上げには、剥離や剥落のリスクが伴う。貼付け時のモルタル充填不足や、経年による接着材料の性能低下、震災被害によるものなど原因はさまざまである。
剥落事故を未然に防ぎ、建物を安全に使い続けるためには、定期的な点検が必要である。
現在は、パルハンマーなどでタイル壁面を叩き、その音の高低から浮き部分を耳で聞き分け判別する、打診法が主要な診断方法である。
そのため、調査員の熟練度により、判定結果に違いが生じることがある。また、調査範囲の広さによっては、集中力が求められる状態が長時間続くため、思わぬ見落としが懸念される。
近年の、建築物の長寿命化政策の実現に向け、構造躯体を覆い、建物の健全性を保持するタイルの、浮き判定技術の向上は今後ますます重要な課題となってくる。
本研究では、壁面タイルの一般的検査手法である打診法の、打撃時反発音に着目する。
タイルの浮き状況を再現した試験体をパターン別に複数個作製、各種実験を行い、音の周波数特性とタイルの浮き・剥離等の劣化状態の相関を評価する。
また、結果を踏まえて既存超高層ビルのタイル剥落リスクの算定も行う。
超高層ビルにおける、劣化判定精度の向上は、建物利用者、歩行者の安全性確保につながる。
また、熟練度に左右されない診断技術の確立は、維持管理の効率を改善し、補修費用を削減する効果が期待される。
１．研究の流れ
①外装タイルの現状調査、
②試験体の作製と各種試験、
③劣化状態と打診音の相関評価、
④既存高層ビルの劣化傾向分析
２．試験体作製
タイルの擬似浮き試験体を、改良圧着張り製法にて複数作製する。
浮きの位置、大きさ、厚さ、剥離界面、などの条件を個体ごとに変更し、実建築物で想定される劣化状態を可能な限り再現する
３．使用材料
タイル種類は、乾式外装タイル（50角モザイク、50角２丁掛）。
下地材は、水セメント比28％のモルタル。
構造材は、普通コンクリート平板。擬似浮き材は、発泡スチロール。
貼り付け剤は、変成シリコーン樹脂70％の弾性接着剤と、水セメント比28％のポリマーセメントモルタル。
４．実験項目と方法
水平に固定した試験体に一定の高さから金属球を自然落下させる。打音チェッカにて、衝突音を計測する。テクノテスターにて引張試験を行い、付着強度を測定する。バンビーノにて、弾性衝撃波試験を行い、HLD値を計測する。
研究成果：
１）乙幡祐平，田村雅紀、超高層ビルのタイル施工部材における打診検査時反発波の周波数特性・エネルギーと劣化性状の相関評価工学院大学研究ブランディング事業，巨大都市・複合災害に対する建築・情報学融合によるエリア防災活動支援技術の開発と社会実装，成果報告書2018.3
２）乙幡祐平，超高層ビルのタイル施工部材における打診検査時反発波の周波数特性・エネルギーと劣化性状の相関評価 工学院大学卒業論文報告書 2018.3
３）乙幡祐平，田村雅紀、築31年を経過した超高層ビルタイル外壁の打診調査と弾性波速度比による剥離危険度評価，2018年度日本建築学会学術講演梗概集，CD-ROM,
2018.9
４）乙幡祐平，田村雅紀、築31年を経過した超高層ビルタイル外壁の打診調査と弾性波速度比による剥離性状の評価，2018年度 日本建築仕上学会研究発表論文集，pp.169-172,
2018.10
５）Yuhei Oppata, Masaki Tamura, Inspection of Outer Wall Tiles
in High-rise Building by Measuring Impact Response Value 17th
International Symposium on Advanced Technology (ISAT-17) Engineering
Innovation for Sustainable Future November 13 - 15, 2018 Danang,
Vietnam
６）乙幡祐平, 田村雅紀,各種の?離状態を模擬したタイル張り試験体の弾性波速度比と付着強度の関係,2019年度 日本建築仕上学会研究発表論文集，2019.10
７）乙幡祐平、田村雅紀、三條場信幸、小林良太郎,外壁タイル剥離診断に向けた標準化仕上げ材料による打診時反発音の周波数特性分析，2019年度
日本建築学会関東支部研究報告集，CD-ROM, 2020.3
８） 乙幡祐平外壁タイル剥離診断に向けた標準化仕上げ材料による打診時反発音の周波数特性分析，2019年度
工学院大学大学院修士論文，CD-ROM, 2020.3
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