中薗慎太(ぞの)



研究テーマ:

建築木質材における釘および部材接合金物の表面劣化による 腐食溶出物が及ぼす木表層部への外観影響

研究概要:

日本には多くの森林資源があり、その多くが木材とし ての利用適齢期を迎えている。そのため、耐火木造など の開発に加え、持続可能な資源である木材を利用し、循 環型社会を形成する目的で都市木造として中規模公共建 築に木造を利用する機運が高まっている。しかし、木材 は腐朽、蟻害など様々な不具合の要因を持つ材料である。 不具合のひとつである鉄汚染 1)は、木材と鉄、水の3つ の共存によって容易に引き起こされる現象にも関わらず、 鉄汚染に関する研究 2)は未だ少ないのが現状である。鉄 汚染の防止としてシュウ酸(COOH-COOH)、次亜リン酸 H3PO2 などの酸が使用されるが、接合として利用する 金物の腐食を促進する可能性 3)があるため、完全な鉄汚 染と腐食への対策は未だ確立されないでいる。 そこで、本研究では木材と鉄の化学的性質から両者の 共存によって引き起こされる不具合を調査し、水の含有 による木材中の pH 変化が不具合に影響するかを調べる。 そして、鉄や防食処理を施された釘との接触状態の違い により外観影響に変化が生じるかを検討する。また、こ の結果を踏まえ、既存の材料が付与する機能を利用して これらの外観影響への対策が可能かを検討する。

1)含水により心材及び辺材は同様に汚染される。
2)有機酸の量は木材含水量や、含水する木材量に影響す る。
3)放出される有機酸は徐々に中和されるが、一部の有機 酸は木材内部に取り込まれる。
4)防錆被膜と木表層部の汚染には相関は見られなかった。
5)表層部汚染は釘の打込み角度や深度にも影響する。
6)表層部汚染は付近の水移動の影響が示唆された。
7)石膏ボードなど、木材付近の湿度を抑えることで金物 の表面劣化や木材表層部の汚染を抑制できる可能性が ある。

研究を進めるに当たり、KN 村田産業株式会社の皆 様には建材用金物の製造現場の見学の機会を頂くと共に、 有益な資料を提供頂きました。ここに感謝の意を表しま す。

 

研究の成果

中薗慎太、田村雅紀,建築木質材における釘および部材接合金物の表面劣化による腐食溶出物が及ぼす木表層部への外観影響,2020年度 日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2021.3

中薗慎太、建築木質材における釘および部材接合金物の表面劣化による腐食溶出物が及ぼす木表層部への外観影響,2020年度 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2020.3

 

特技・趣味:
木材の人生を観察するのが趣味かも!?