工藤真美(マミー)

 



研究テーマ:

劣化した建築用仕上塗材の環境影響改善性に関する研究

研究概要:

1.研究の目的

本研究では,SDGs やライフサイクル性能を踏まえた環境配 慮型の建材開発をする上で,河川や海洋への化学物質の溶出 リスクが高い仕上塗材,十分な耐候性が確保できるかという 観点からの,調査が必要であるため,本研究では,樹脂の濃 度を5〜85%まで変えた上で,炭酸カルシウムなどを配合した 塗料をスレート板にローラーで施工し,屋外暴露試験を10 年, キセノンランプ式促進耐侯試験を5 年分行い劣化させる。そ れらの質量変化や,白亜化テープを貼り付け,配合した塗料 の汚れ具合を調べるともに,合成物質の成分構成を分析し, 仕上塗材の環境影響改善性について検討する。

2.研究の方法

評価対象建物は,1986 年に竣工され,鉄筋コンクリートと鉄骨造建築物である。使された塗料は,鉄筋コンクリート造はアクリル系弾性吹付 けタイルで,鉄骨造はアクリル系エマルションペイントであ る。また,評価対象建物の配置図および測定箇所として,外 壁の全方位,室外機の裏,入口,屋上の合計9 箇所測定した。

白亜化の測定方法 白 亜化テープを使用した測定写真,白亜化等級を用いてデグリ ーで評価したものを示す。JIS K 5600-8-6 に記載されている塗 膜劣化の評価の中の,白亜化の等級試験の基準をもとに,白 亜化テープを使用して同じ箇所に2 回テープを貼り付け,白 亜化等級の評価を行う。白亜化の劣化デグリーは,5 段階で評 価され,数字が大きくなるにつれて劣化が進んでいると評価 される。

3.まとめ
1)材料の樹脂量,可塑剤量の配合の割合によって,塗料塗り状 態は大きく異なり,乾燥状態で,より明確に違いが分かる。
2)樹脂量を5〜85%まで変えた塗材密度は,1.6〜2.2g/.であ り,樹脂の割合によって大きな差があった。
3)2021 年4 月〜2021 年12 月までの屋外暴露試験で使用した 試験体の質量変化は,同様な変化である。
4)2021 年4 月〜2021 年12 月までの汚れ面積率は,試験体に よりばらつきがあるが,材齢データの加算を継続する。
5)5 年相当の促進耐候試験により,質量変化は評価でき, 劣化後質量比は,25%と85%ともに同様の変化で推移する が,樹脂量の少ない25%が著しく,2 年経過時には,大き く減少し,汚れ面積率も同様の傾向となった。


4.研究成果
1) 工藤,田村,深澤,杉山、劣化した建築用仕上塗材の環境影響改善性に関する研究 その1 10年屋外暴露試験と促進耐侯試験の実験計画,2021年度 日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2020.3

2)工藤,田村,深澤,杉山、劣化した建築用仕上塗材の環境影響改善性に関する研究 その2 鉄筋コンクリート造建築物全外壁における白色塗料仕上部の経年変化をふまえた白亜化調査 2021年度日本建築学会学術講演梗概集,CD-ROM, 2021.9

3)劣化した建築用仕上塗材の環境影響改善性に関する研究 その3促進耐候試験結果と屋外暴露試験の開始2021年度 日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2022.3

4)工藤真美,田村雅紀,深澤宏彰,杉山成明,鉄筋コンクリート造建築物全外壁における白色塗料仕上げ部の経年変化を踏まえた白亜化調査,日本色彩学会環境色彩研究会研究発表報告,2020.2

5)工藤真美、劣化した建築用仕上塗材の環境影響改善性に関する研究,2021年度 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2020.3