河内萌音(モネ)

 



研究テーマ:

木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材仕上げによる耐久性向上技術に関する研究

研究概要:

1.研究の目的

2010年に「公共建築物等における木材利用の促進に関す る法律」が制定され、建築物への積極的な木材の利用が進め られている一方で、建材としての木材には、紫外線による老 朽化、雨水による糖類等の溶出、物資の腐朽など様々な欠点 も存在している。本 研究 では静的荷重が生じた木質部位を想 定し、木材表面へ透明保護塗膜を施すことで経年変化の抑制 が可能かを検討し、耐久性向上により木材利用の促進を目的 とし検討を行う。また、木材に含まれる水の放出、大気中の 水分吸収によって引き起こるひび割れ現象も透明保護塗膜を 施すことで経年変化の抑制が可能かの 検討を行う。

2.研究の方法
表 2に 研究 1~4の 試験体の測定項目を示す 。 継続的な屋外 曝露により試験体の退色を観察するため 、 色差計を用いて計 測を行い 、色彩 値 C*ab にて評価する 。 物理変化 の 観察に質量の測定 、 表面粗さ測定による Ra値の評価 、 60度 鏡面光沢度の評価 を 行 う 。 研究 2の 試験体には 、 軽量化 、 寸法 安定性の向上が挙げられるサーモウッド処理木材を使用する 。 未処理木材 、 難燃木材 、 不燃木材の 3種類を用い 、 木表面と木 口面それぞれの評価を行う 。 ここでは 試験体の塗装条件別の 経過時間における白華の発生および劣化の進行に着目し 、 比 較を実施する 。 また 、 研究 3では 、 ウッドデッキ のような静的 な動きが継続する部位 での試験を行い 、 木材の動きに対する 評価・調査を行 い 検討する 。 静荷重試験体にはひずみ測定と してひずみゲージの取り付けを表裏 2カ所ずつ取り付けを行 う。研究 4では、無垢材のひび割れ傾向を確認するとともに 木口部分からのひび割れ抑制効果を検討する。

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度
図 2に曝露 170週目における未塗装とアクリルシリコン系 透明保護塗装の色彩値をまとめたグラフを 示す 。 X軸に屋外 曝露の経過時間 週 、 Y軸にそれぞれの色彩値をとる 。 C*abは色彩値 a*と b*の初期値からの変化量を求めた値である 。 は じめに図 2a),b)より L*値に着目すると 、 未塗装の 試験体は 曝 露 開始から 170週目 時点 において も数値の低下が進行してい る 。 塗装を施した試験体は 曝露開始から 150週目 頃から 0 において 数値の減少 が確認でき た 。 図 h)より C*abに着 目すると 、 未塗装の試験体は 、 変化量に変動がみられなが らも 、 0°、 45°において約 24週目に最も変化量が大きくなり 、 その後 一定の値まで低下し安定する 。 一方で塗装を施した試験体は 、 曝露経過時間における変化量にあまり変動がみられ なかった が 、 140 週目頃から数値のばらつきが確認できた 。 これらより 、 曝露 170週目において 、 塗装を施した試験体は未塗装の試験 体と比較し色彩値の変化を 未だに 抑えられることが確認でき た 。 一般木材において 、 木材表面に保護塗膜を施すことが退色 変化の抑制に有効であることから 、 仕上げ材への利用にも期 待ができる 。

5.研究成果
1)
河内萌音他,木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材仕上げによる耐久性 向上技術に関する研究 その2 木質部位の面を区別した経年変化の 特性 日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2023.3

2)河内萌音他,木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材仕上げによ る耐久性向上の研究 その 7 動的・4 ヶ月経過静的荷重 がある木質部位の表面保護持続性検討 2022年度日本建築学会学術講演梗概集,CD-ROM, 2022.9

3河内萌音他,木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材仕上げによる耐久性 向上技術に関する研究 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2020.3