佐々木亮人(リョウト)



研究テーマ
炭素固定性を有する各種ホタテ貝殻砂を用いたモルタル・コンクリートのフレッシュ性状・力学特性・耐久性および外観防汚効果の検討

研究概要:

1.研究の目的

現在、北海道では年間約 34万トンのほたてが水揚げ されているが、それに伴い約 13万トンの貝殻が廃棄物 として発生していることが明らかになっている 1)。本研 究では、ほたて貝殻の持つ炭素固定性 1)に着目し、コン クリート材料 の 細骨材をほたて貝殻に置換した PCaコン クリート部材の開発を目指す。 ほたて貝殻砂 記号 Hs を 使用したコンクリートの 耐久性 と 、 外観 防汚効果を評価 し、実施工 を想定して生じる課題に関して 検討する。 ま た、 低コストの貝殻砂を大規模設備で量産が可能な、北 海道東部にあるもう一つの製造会社からほたて貝殻砂 (記号 Hbs) を入手して、これまでと同様の実験を行い、 コンクリート用の細骨材として使用できるかを検証する。

2.研究の方法

研究 1では、事前研究 2 より ほたて貝殻 砂で置換 したモ ルタルは ほたて 貝殻 砂置換 率の増加に伴い流動性が下が り、空気量が増大した。そこにシリカフュームを加え る ことで、 流動性と空気量の改善が見られることがわかっ たため、それらの モルタル 調合を元に 調合した コンクリ ートを 使用 し、耐久性評価と外観色彩変化について試験 を行い 、外壁 PCaカーテンウォールの要求性能と貝殻砂 による防汚効果、意匠性の可能性について 検 証 する。 研究 2では、貝殻砂の Hbsを用いたコンクリート試験 を行うための事前検討として、 Hbsを用いたモルタルに よるフレッシュ性状、圧縮強さ、曲げ強さ、せん断強さ について確認する。既往の研究 2)で、貝殻砂 Hsを使用し たモルタルでは、貝殻砂置換率の増加に伴い、流動性が 低下し て空気量が増大したが、シリカフュームを添加することで、流動性と空気量に改善が見られた。今回は、 既往の研究 3)と同じ調合に Hbsを用いて、モルタルによる 試験 練りを行い、その結果を比較する。

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

1)貝殻砂コンクリートの促進中性化試験の結果、ほた て貝殻砂の置換割合が大きいほど中性化深さが大 きく、基本調合と 比較して、 貝殻砂を 70%入れた も のは約 1.8倍 だが 、シリカフューム 20%を併用するこ とで 2割近く改善され、中性化深さは約 6mmと であ る 。
2) 長さ変化率は、ほたて貝殻砂の置換割合が増加する につれて値が大き い 。また、シリカフュームを併用 したものは、無添加のものより値が大きくなり、貝 殻砂 70%にシリカフュームを 20%入れた調合では、 600×10-6近い値を示した 。
3) 耐久性上有効な仕上げがない、外壁 PCa カー テンウォール製品の最低かぶり厚さが 30mm 以上である 、 日本建築学会 JASS5 などで規定のあ る 800×10 6 以下であることから、 使用上 問題ない範 囲である。
4) 長期暴露試験について、初期の色差測定を行った結 果、ほたて貝殻砂の置換割合が大きいほど明色を示 すが、そこにシリカフュームを添加すると、添加割 合が大きくなるにつ れて暗色となる。コンクリート はほたて貝殻砂 (白色 )の置換割合が増加することで 、供試体の L*値が増加し、シリカフェーム (黒色 )の 添加割合が増加することで、その供試体の L*値が減 少する。
5) 貝殻種類の違うモルタルのフレッシュ性状・力学特 性から、 空気量において Mシリーズと比較して BMシ リーズが大き い。 力学特性においても、 BMシリーズ が 低い値を示しているために、 空気量と相関

5.研究成果
1)佐々木亮人ほか,炭素固定性を有する海洋生物殻廃棄物を用いたP
Caコンクリート 部材の開発 その4 ほたて貝殻砂使用コンクリートの耐久性評価と 外観防汚効果の検討日本建築学会関東支部研究報告集2021年度 日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2022.3

2)齋藤,佐々木ほか,炭素固定性を有する海洋生物殻廃棄物を用いたPCaコンクリート 部材の開発 その5 ほたて貝殻砂の製造方法の違いによるモルタル のフレッシュ性状・力学特性日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2023.3

 

3)佐々木亮人,炭素固定性を有する各種ホタテ貝殻砂を用いたモルタル・コンクリートのフレッシュ性状・力学特性・耐久性および外観防汚効果の検討工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3