佐藤友亮(トモアキ)



研究テーマ:

過去・現在・将来の建設ストックによるカルシウムカーボネートコンクリート(CCC)原料の発生量推計と全国の中間処理場実態調査

研究概要:

1.研究の目的
現在,環境問題を端緒にSDGs やカーボンニュートラル への取り組みを具体的に示していかなければならない状 況になっている。日本は2050 年のCO2排出を正味ゼロと するカーボンニュートラルに向けた目標達成に向けて 2030年までに2013年度比で46%の削減を目指している。 日本では長年、コンクリート構造物が多くの建築インフ ラを支えてきたが、コンクリートがセメント燃焼段階の 脱炭酸により二酸化炭素を大量に発生させるという課題 が存在する。そこで開発されたのが、CCC(カルシウムカ ーボネートコンクリート)1)であり、破砕処理をしたコン クリート塊を原材料として、粒子間の空隙を埋めるため に廃棄微粉末水溶液に、二酸化炭素を溶け込ませた炭酸 水素カルシウム溶液を利用して固化される。 本研究では、CCC の原材料となるコンクリートのストッ ク量を把握するために、過去から現在そして将来的に建 築物を中心に使用されるコンクリート量を詳細に推計す る。この結果によって、将来の二酸化炭素吸収・固定を 基本としたCCC の開発を推進する資源循環シナリオの基 礎的情報を得る。 また、全国の中間処理場の処理能力などの評価を行うこ とで将来CCC 原料がどの程度発生して、利用ができるの かを知ることができる。

2.研究の方法

研究2では、カーボンニュートラルの実現が目標とされ る2020〜2050 年の間に、CCC 原料となるコンクリート塊 の発生量を推計する。これらは実際に国内でリサイクル 可能量として算定できる。図6a)に近年の着工量を、図 6b)に近年の除却量の推移を、図6c)にはこれを外挿推 計した図を、図6d)に将来の建築物ストック量と着工量・ 除却量の比較を示した。単純な線形回帰の外挿推計の場 合2040 年ごろに着工量と除却量が同程度になると考え られるが、新築を建てないで解体だけを行うことは実際 には想定し難く、一定の差をもって推移することが考え られるため、次節に詳細を分析した。

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。 1) 建築物着工統計より、1951 年?2017 年までの非木造・ 木造に含まれるコンクリート量を算定し、118 億トン 程度のコンクリートの製造量が推計された。 2) 建築物ストック統計より、1951 年?2017 年までの非木 造・木造に含まれるコンクリート量を算定し、77 億ト ン程度のコンクリートの蓄積量が推計された。 3) 建築物着?統計で求めた過去のコンクリート製造量 (118 億トン)から建築物ストック統計で求めた蓄積す るコンクリート量(77 億トン)の差分より、現在までに 廃棄・再資源化されたコンクリート量は41 億トン程 度と推計され、当該期間年あたりコンクリート塊の廃 棄・再資源化量は0.58 億トン程度と推計された。 4) 建築物ストック統計と建築物着工統計により推計した 2018 年?2050 年までの解体建物からのコンクリート 塊の発?量は39 億トン程度、当該期間年当たりコンク リート塊の発?量は1.26 億トン程度と推計された。 5) 2005 年から2018 年の期間における建築・??ストッ クから発?するコンクリート塊量の平均値は建築が約 56.2%、??が約43.8%の割合となり、2050 年には建 築39 億トン程度、??30 億トン程度のコンクリート 塊が発?すると予想される。 6) 中間処理場の施設数と発生量の比較を見ると現状と同 じようにコンクリート塊が発生するとしても全国的に 処理能力がコンクリート塊発生量を下回る可能性が低 いと考えられるが、都道府県により処理能力が不足す る可能性がある県も確認できたため、地域間を通じて、 過大が環境負荷を生じることなく合理的にコンクリー ト塊をCCC 原料にするための中間処理施設の地理的・ 施設的な改善を図る必要がある。

1) 佐藤友亮ほか,既存建物群の各種統計情報に基づくコンクリート量分析と 資源循環シナリオの構築 その 1 建築物ストック統計 によるコンクリート量評価 2022年度日本建築学会学術講演梗概集,CD-ROM, 2022.9

2)佐藤友亮ほか,過去・現在・将来の建設ストックによるカルシウムカーボネートコン クリート(CCC)原料の発生量推計日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2023.3

3)佐藤友亮,過去・現在・将来の建設ストックによるカルシウムカーボネートコン クリート(CCC)原料の発生量推計,工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2020.3