山川夏希(ナツキ)



研究テーマ:

多摩地質帯における地域産土を利用したソイルコンクリートの品質評価

 

研究概要:

1.研究の目的

昨今、コンクリートの材料となる天然資源の骨材不足が 叫ばれており、細骨材となる砂資源の不足が長年の課題と なっている。資源の不足と需要に追い付かない供給により、 砂資源の枯渇は地球環境問題や、原価、運搬コストの上昇 に大きな影響を与え、大変深刻な状況であると言える。本 研究では資源不足解消を図り地産材料を可能にするため 土に着目した。 土は土地ごとに質感と色味が異なり、土素 材を利用した土壁等に代表される建築材料は、土地の愛着 と建物そのものの魅力につながっている 1 。土素材を活用 した基礎部材の開発と施工実現に向けて、多摩地 質帯の地 域産土由来の土素材を利用した新たな建築材料の開発を 目指す。 本研究 は、多摩地区 ・ 川崎市での実施工を想定し、地域 産土由来の 実施工地で 採取した土素材である砂質粘性土 とセメントを利用したソイルコンクリートを 製造 し、 既往 の 研究 2 を踏まえ、基礎 物性調査や力学特性調査 、品質評 価 を行う。

2.研究の方法

図 1 に研究 の 流 れ、 表 1 に実験 方法と 要因 ・ 水準を示 す。 研究 1 では、協働的取組にて建設 を 検討した川崎市麻生 区五力田の敷地 を対象に 、敷地内で採取できる多摩地質帯 の地域産土 の特徴を活かし た ソイルコンクリートとして 練塀壁 への 使用可能 性を検討する。 複数箇所からサンプル を採取し、基礎物性調査 乾燥処理による質量変化・蒸発率 の調査、色彩値測定、粒度分布調査 を行った。 研究 2 、 3 では、 W/C 、 S/C の異なる組合せにより、 地 域産土を利用した セメントによるモルタル供試体を作製 して、色彩値の分析や W/C 、 S/C を決定する為の調合検討、 力学特性調査 を行った。 この際、 A 種 は、普通ポルトラン ドセメントとホワイトセメント による 色彩 値 の分析を検 討すると共に、 W/C を 50% 、 60% 、 S/C を 300% の 強度特 性を重視し た 調合で行う。 B 種 は、普通ポルトランドセメ ントを利用し、 W/C を 90% 一定、 S/C を 300% 、 500% 、 600% の調合にし、 A 種 から水量、土量を多くした 土素材 のテクスチャー を重視した 調合で力学特性の違いを調査 する。

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。
1) 現地粘土の粒度分布、含水率の評価を踏まえて最適 な調合がほぼ確定できた。
2) A 種 と B 種 の比較から、 W/C や S/C(%) が増加する と圧縮強度が下がる事が分かった。普通コンクリー トの 最低値 (12N/mm 2 から圧縮強度が A 種は 8 0% 程度、 B 種は 45% 程度である。
3) 同じ W/C(%) と S/C(%) のもので、セメントの違いによ って圧縮強度自体は大きく変化せず、材齢による密 度変化や圧縮強度の変化から、粘性土による空隙が ある為に、一般的コンクリートと比べて乾燥後に強 度が伸びない こと が分かった。
4) 長さ変化測定 によって、 A 種・ B 種の収縮の違いが分 かった。 砂セメント比が大きくなるほど収縮が大き く、土素材の影響が出ていると考えられる。 屋外曝露 によって、 降雨による明度の低下や A 種・ B 種の色味の 変化や値 の違いが見られた。

5.研究成果
1)山川夏希ほか,多摩地質帯における地域産土を利用したソイルコンクリートの品質 評価日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2023.3

2)山川夏希ほか,多摩地質帯における地域産土を利用したソイルコンクリートの品質評価と基礎部材開発,2022年度 日本建築仕上学会研究発表論文集,2022.10

3)山川夏希ほか,多摩地質帯における地域産土を利用したソイルコンクリートの品質評価と基礎部材開発, 月刊リフォーム 2023年3月号

4)山川夏希ほか,多摩地質帯における地域産土を利用したソイルコンクリートの品質評価と基礎部材開発, ISDCセブン&アイクリエイトリンク選抜論文、2022年5月

5)山川夏希,多摩地質帯における地域産土を利用したソイルコンクリートの品質 評価 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3