辻 健汰(ケンタ)



研究テーマ:

炭素固定性を有するホタテ貝殻砂コンクリートを用いた模擬壁片面加熱温度変化と耐火残存強度の評価

 

研究概要:

1.研究の目的

現在、北海道では年間約34 万トンのほたてが水揚げされて、 それに伴い約11 万トンの貝殻が廃棄物として発生している 1)-3)。本研究は、この廃棄物となっているほたて貝殻の炭素固 定性に着目し、外壁プレキャストコンクリート(以下PCa 部 材)に、貝殻砂を細骨材として導入したカーボンオフセット建 材を開発することを目的として進めている1)-4)。コンクリート は、火災による建物の延焼を防ぐための耐火性能を有する必 要がある。 そこで、コンクリート模擬壁体による簡易耐火試験によっ て、加熱温度変化と表面の観察からほたて貝殻砂コンクリー トの耐火性を評価する。また、円柱供試体による残存圧縮強 度試験によって、表面のひび割れの観察と圧縮強度からほた て貝殻砂コンクリートの耐火性を評価する。

2.研究の方法

既往の研究その6、7 で所要の強度と耐久性が確認できた2)- 3)。貝殻砂コンクリート調合BC50/5/12 と、PCa 部材製造に用 いる普通コンクリート調合の2 種類を用いてコンクリートを 練り、フレッシュ性状を確認後に簡易耐火試験体を作製して 試験を行う。 今回は、含水率試験、圧縮強度試験、引張強度試験、含水状 態を考慮した耐火試験および簡易耐火試験、残存圧縮強度試 験を行い、ほたて貝殻砂コンクリートと普通コンクリートの 比較を通して、貝殻砂コンクリートが外壁PCa 部材としての 耐火性能を満たすことができるかを確認する。

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。
1) 含水率が0%、2%、3%の円柱供試体による耐火試験で、 BC50/5/12、BC0/0 ともに爆裂しなかったことから、いずれ も十分な耐火性を有していると考える。

2) BC50/5/12、BC0/0 ともに爆裂しない理由として、電気炉内 の広さとコンクリート熱容量の大きさにより温度上昇に 時間を要したことが考えられる。

3) コンクリート模擬壁体の簡易耐火試験では、BC50/5/12 の 方がBC0/0より表面部分(S)の温度の変化が僅かに早いが、 裏面の奥行方向に対しては、双方で特段に熱伝達の速度に 違いはなく同様であった。

4) 強度試験結果と耐火試験後の残存強度試験結果を比較し て、BC50/5/12 は耐火試験後の残存強度の方が材齢28 日 強度より抵抗性が大きく強度が増した。一方、BC0/0 は耐 火試験後の残存強度の方が材齢28 日強度より小さい結果 となった。

5) 円柱供試体のひび割れの様子はBC50/5/12 とBC0/0 どち らも含水率が高いほどひび割れが高い傾向があった。なお、 ひび割れ面積割合は、BC50/5/12 の方がBC0/0 より僅かに 多いことが分かった。

6) 以上のことから、貝殻砂コンクリートBC50/5/12 は普通コ ンクリートBC0/0 と比較して、加熱によるひび割れの発 生はやや多く見られたが、残存圧縮強度の抵抗性は大きく、 ほぼ同等の耐火性能を有していると考えられる。

5.研究成果
1)辻ら、炭素固定性を有する海洋生物殻廃棄物を用いたPCa コンクリート部材の開発 その10 コンクリート模擬壁体 における耐火性の検討, 2024 年度日本建築学会関東支部研 究報告集, 2025 年3 月

2)辻、炭素固定性を有する海洋生物殻廃棄物を用いたPCa コンクリート部材の耐火性の検討, 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3