秋田・小坂鉱山事務所(国重要文化財)

担当: 改修済漆喰壁の長期耐用に向けた維持保全状態調査と再改修技術検討
実施: 2019年(竣工1955年)
体制: 小坂町立総合博物郷土館、工学院大学田村研(担当:B4佐藤みのり、B4土橋巧)
場所: 秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山古館
概要:
当建物は、1905年に秋田県内随一の鉱山資源の採掘所である小坂鉱山の事務所として建設された。ルネサンス様式の外観を残す建物は、1997年まで事務所として使われていたが製錬工場の増築に伴い解体された後、2001年に旧小坂鉱山病院跡地に移転復元され、観光施設として新たな出発を辿ることとなった。復元の際は、竣工当時の状態を再現するために、壁面はモルタルから白漆喰に戻し、屋根もトタンから杉板葺きや、耐候性を要する箇所は銅板葺きに変更された。室内の装飾等も当時の設計図を元に復元し、2002年に康楽館とともに国の重要文化財に指定された。研究室では、当該復元建物に施工した白漆喰が20年も経たない期間で剥離等の劣化が生じたために、長期耐用に向けた維持保全状態調査と再改修技術の検討に関する依頼を受け、2年間に渡る研究調査と技術提案を行った。その結果、100年前の本漆喰仕上げは、砂漆喰、スサ入り本漆喰等を薄塗りで積層させる伝統的な塗り壁仕上げを行うのに対し、20年前の復元時には、大面積の屋外漆喰仕上げを限られた工期で実施工する必要が生じた可能性があり、既調合漆喰を利用した厚塗り仕様の仕上げを施している。そのため。15mm以下の漆喰仕上げ断面は砂漆喰を含む1層構成となり、その内部から表面にかけた凝集破壊が進行した部分が確認され、伝統仕上げのような生漆喰とスサ入り本漆喰等による複層構成断面とはなっていないことの違いが影響したと考えられた。これら双方の再現試験も行い、曲げ抵抗性、含水時強度、曲げ破壊エネルギーなどの長期耐用に関係する性能の差異を検証することで、次の再改修時における外壁漆喰面の材料選定および施工方法への改善対策を具体化することができた。
関連Web:
http://kosaka-mco.com/publics/index/46/
www.ns.kogakuin.ac.jp/~dt40009/tamura/member/obog2020/satou/satou.htm
www.ns.kogakuin.ac.jp/~dt40009/tamura/member/obog2021/dobashi/dobashi.htm