概要:
東南アジア諸国を中心とした新興国は、今世紀末までに人口の大幅な増加により世界の半数がこの地域に集積する想定もなされている。現在、人口が3億人を越えるインドネシアは、熱帯雨林地域を中心に都市や地域のインフラ整備がなされており、住宅建築に関しては、コンクリートブロック、日干しレンガ、土壁等を用いた構造壁が現在も主流である。その細部については、鉄筋を挿入しない、材料単価が極めて廉価で品質が安定しないため、力学的な問題が生じやすい等の課題が挙げられる。地域によっては、地震や津波の災害が生じやすいことから、将来に向けた頑強で安全性の高い都市国家を形成する上では、住宅建築の安全性を確保して、基本的なすまいの体系を構築する必要が生じている。本研究開発では、鉄筋コンクリートのラーメン構造に、コンクリートブロックおよびレンガを用いたメーソンリー積層壁を構築する基本住宅に対して、地震時の壁面倒壊を防ぐために、三軸型ポリプロピレン(PP)シートをメーソンリー積層壁面の仕上モルタルの下に伏込み、メーソンリーユニット同士の面的連続性を確保することで、地震時の面内剛性の改善や面外倒壊抵抗性を確保する簡易な新工法の開発を行った。今回対象としたインドネシア・ロンボク島地区の住宅は、平均価格250万前後であり、建築基準法が定められていないことから、施工コストの高騰はニーズ低下の直接要因となるため費用対効果の大きい工法を実現する必要があった。このような条件も踏まえながら、東南アジア諸国の平均的な住宅構造壁の安全性を高める検討を継続する。
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