概要:
2011 年に発生した東日本大震災により、新宿都心部の高層ビル群も大きな地震外力を受け、直接的な地震動の影響や、長周期地震動作用時に発生するスロッシング現象のような影響による、内装界壁の破損等の甚大な被害を受けた。現在、地震力に対する高層ビルの安全性は、極めて稀な地震動に対して、建物高さ
1/100 以下の層間変位、部材高さ 1/200 以下の許容変形により、部材内コンクリート単身の変形が1/300 程度でひび割れが生じないように設計する基本的な考え方がある。工学院大学新宿校舎を含む都心部の超高層建物は、PCaCW(プレキャストコンクリートカーテンウォール)
が 多く採用されており、許容変形量の範囲内ではあるものの大変形が生じた階層もあったといえる。本研究は、近年のドローンによる建物外壁状態の検査・診断が注目されていることから、災害前後において、ドローンに搭載した各種カメラで建物の外壁の画像を事前・事後に取得し、災害による影響や経年劣化の状態に対する検査・診断・評価までの一連の維持管理作業を行えるようにする。これにより、従来の足場やゴンドラ等による調査方法よりも安価で短時間、高精度に外壁劣化を判定できるようになる。なお、新宿高層街区は、地上30階以上になると上空150m以上の高さとなりやすく、この場合、ドローン飛行による航空法の規制対象となることから、都市部の高層ビル街区における実測データは乏しいのが現状である。その状況下で、実際に大規模地震などの災害前後の調査を想定して、ドローンにより当該建物の石張りの色彩劣化度、PCaCW間の目地シーリングのひび割れ等の表層劣化状態、コンクリート面の錆汁・ひび割れ部の状態等を撮影し、壁面材料や施工方法の違いによる劣化種類の捕捉基準や判定基準の定量評価ならびに定性評価の限界範囲の評価を行ない、以後のドローンを用いた次世代型維持管理方法おける基礎資料を得ることができた。
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