熊本・大劇会館

担当: 北面ファサード外壁タイル・改修技術協力保存再生改修工事
実施: 2019年改修(竣工1969 年)
体制: レーモンド設計事務所、清水建設、工学院大学田村研(担当:B4櫻田華子)
場所: 熊本県熊本市中央区手取元町
概要:
日本近代建築の父と称される建築家アントニン・レーモンド夫妻が設計した大劇会館は、地上7階、地下1階建で1969年に竣工していた。正面外壁面(縦横20×31m)には、赤茶色や濃紺の有田焼の二丁掛タイル(縦横6×22.7cm)が6.5万枚程度が使用され、三角形、長方形、半円などを組合せたキュビズム模様が描写されていた。しかし所有者の変更等により、時期を置いて商業用途に対応するためにモルタル化粧仕上げが施されてタイルは見えないまま使用されていた。その後、2016年熊本大地震による建物被害の復旧工事の際、約7割程度の有田焼タイルが当時のまま使用できそうな道筋が立てられ、現レーモンド事務所の監理のもとで、レーモンド建築の文化性の確保に向けて、モルタル仕上げを剥離し、外装を1969年の創建当時の姿に復原した。田村研究室では、モルタル化粧仕上げの剥離方法、モルタル剥離後の外装タイルの打診調査および付着強度の評価、当時のタイル張り工法の詳細分析、壁面へのタイル張付け角度と躯体への固定強度の影響、ならびに復原タイル目地からの含水防止用表面保護透明塗料の影響などを踏まえた技術評価を行った。文化的価値を有するタイル外装を有する非木造建築は増加の一途を辿っているが、本作品のように歴史的建造物としてタイルの文化的価値が強く意識される場合も生じる可能性は多くあるため、建材的価値を重視した復原・復元手法の追求は今後も大切になる。
関連Web:
https://taigekikaikan.com/
www.ns.kogakuin.ac.jp/~dt40009/tamura/member/obog2020/sakurada/sakurada.htm