学生の皆さんへ  総合文化科目受講動向調査報告(2004)

工学院大学共通課程人文・社会系教室

 工学院大学の学生の皆さん。

 皆さんの協力で、昨年に引き続き2004年度に実施した「総合文化科目受講動向調査(2004)」について、その調査結果をお知らせします。調査に協力してくれた皆さん、ありがとうございました。

 「総合文化科目」は、「工学部における文科系の科目」として、専門科目ではカバーし切れない幅広い関心に応えるという意味を持っていると私たちは考えています。これからも、できるだけ皆さんと対話しながら、より良い授業内容と方法を考えていきたいと思っています。この調査結果についても、感想、質問、意見などがありましたら、教員までどしどしお寄せ下さい。

 2001年秋から大学全体で「授業アンケート」が始まりましたが、私たちはそれに加えて総合文化科目独自で、目的を絞ったアンケートを行いたいと考えました。また、アンケート結果をこのような形で皆さんに開示することを大切にしたいと考えました。時間があるときに、ぜひ読んでみて下さい。

調査の目的:総合文化科目の受講動向を調査し、今後の授業運営に役立てることを目的としてアンケート調査を行いました。総合文化科目は、学校全体で一斉に教育カリキュラムを改革した1995年度から、それまでの「一般教育科目」などに代わって始まりました。その後、1998年度から受講人数制限を設け、1999年度から専任および非常勤の教員が集まる科目担当者会議を開いて授業内容の向上のための話し合いを試みてきました。また2001年度から文部科学省教養教育改革推進経費を受けるプログラムに選ばれたことによって、こういったFD(ファカルティ・ディベロップメント=教育改善)をさらに進めようということを考え、こういったアンケートを行うことことにしました。今回は昨年と比べて、さらに具体的な改善の方向性を探るべく調査項目を新たに設けました。

調査の方法と内容:2004年12月6日(月)から同月17日(金)まで総合文化科目(新宿・八王子、第1・2部とも)の授業中に用紙を配布し、その場で教員が集めるか事後回収箱に提出を求めるという方法で調査用紙の回収を行いました。

調査結果:回収数は八王子校舎1132枚、新宿校舎666枚(うち第1部303枚、第2部347枚、他不明)、合計1798枚でした。この数字は、本学の学生数のおよそ1/3にあたります。八王子や第2部と比べると、新宿第1部の回収率があまりよくありませんでした。教職・学芸員特別課程の学生および科目等履修生からも回収しました。

なお、この「学生の皆さんへ」は詳細版です。簡略版は、ハードコピーで3月末より配布しています。

では、各問に対する回答結果を紹介します。

II.「総合文化科目」の選択科目を決めるさいに、シラバス(授業計画)をどの程度読んでいますか。

 

 1.必ず読んでから選んでいる

 2.たいてい読んでから選ぶ

 3.読むときも読まないときもある

 4.あまり読まない

 5.読んだことがない

 

この項目は、学年および第1部と第2部で違いが見られたので、以下のようにグラフ化してみました。

左半分が第1部、右が第2部です。これから言えることは、1年生がもっともよく読んでおり、2年生以降は下がる傾向があるということです。また、第1部と第2部では、第2部の方がよく読んでおり、この傾向は学年が上がっても変化はありません。また昨年も同じ調査を実施しましたが、昨年と比べると「1」が14%→20%、「2」が25%→26%と、上昇しているようにも見えます。

 系別では、あまり大きな違いは見られませんでしたが、若干建築系がよく読んでいるという結果が出ました。グラフは以下の通りです。(A=機械系学科、B=化学系学科、C=電気系学科、D=建築系学科、K=教職特別課程他、をそれぞれ示しています。)

 

III.「総合文化科目」の履修選択にあたって、何を重視しましたか。下記から3つまで選んで下さい。

 

 1.以前からの興味・関心に合っていたから

 2.シラバス(講義要項)を読んで興味をひかれたから

 3.新入学時の学生自治会のオリエンテーションで説明を聞いたから

 4.友だちから一緒に受講しようと誘われたから

 5.実際にとった友だちから勧められたから

 6.クラブ・サークルの先輩から勧められたから

 7.教員が良い、面白そうだと思ったから

 8.役に立ちそうだ、実力がつくと思ったから

 9.苦手な分野に挑戦したいと思ったから

10.単位がとりやすそうだと思ったから

 11.履修人数が少なかったから

 12.時間割の空白を埋められるから

 13.教員免許をとるのに必要な科目だから

 14.その他(                                 )

 

 

 各項目ごとに学年別に色を分けています。全体の傾向を見ると、「1.以前からの興味・関心に合っていたから」がもっとも多く、ついで「シラバス」「役に立つ」「単位がとりやすい」といった項目が多いことがわかりました。そのほかに、「友達」「教員」「少人数」といったものも多く見られます。

 

次に、各学年での回答の割合を示しました。複数回答なので少々不都合がありますが、学年ごとに回答者数が異なるため、このような表にしています。

1.以前からの興味・関心に合っていたから」は学年に関係なく最も多いことがわかります。「シラバス」と答えた学生の総数は学年が低いほど多いです。回答者内での割合を見てみると、2年生で減るものの、3年生では増えていることがわかります。「友達」というのが最も多いのは2年生でした。「教員への関心」は2年生以降で強くなることもうかがえます。「役に立ちそうだ」というのが1年生で多く、就職などを考える23年生で少なくなるのは一見意外に思えますが、昨年も同様の結果が出ています。学年が進み、学習の専門性が高くなるにつれて、それ以外の学習内容を総合文化科目に期待していると解釈することができます。「時間割の空白」という回答は、上級生で多くなります。

 系ごとの比較では、あまり目立った特徴は出ませんでしたが、建築系で「2.シラバス(講義要項)を読んで興味をひかれたから」が若干多く、電気系で「4.友だちから一緒に受講しようと誘われたから」が若干多いことがわかりました。グラフは以下の通りです。(A=機械系学科、B=化学系学科、C=電気系学科、D=建築系学科、K=教職特別課程他、をそれぞれ示しています。)

 

 

 

IV.「総合文化科目」を学ぶことであなたが一番身につけたいものは、以下のうちどの技能・能力ですか。下記から1つだけ選んでください。

 

 1.人間性を豊かにする幅広い教養

 2.人前で自分の考えをきちんと話せる能力

 3.日本語で論理的な文章を書ける表現力

 4.複数の人と討論(ディスカッション)できる力

 5.一般書・専門書の内容を正確に読みとれる力

 6.実社会・生活に役立つ知識

 7.専門科目とは異なるものの見方・考え方

 8.その他(                                 )

 

身につけたいことで最も多かったのは「教養」で、ついで、「役に立つ知識」「専門外」が多いという結果になりました。それ以外は非常に少ないです。「プレゼンテーション能力」と「論理的な文章力」を求める学生もいることが分かります。

 

次に、各学年での違いをみるために、それぞれにおける回答の割合をグラフにしました。

これによると、「1.人間性を豊かにする幅広い教養」と答えた学生は学年によらず一定の層がいると思われます。「6.実社会・生活に役立つ知識」というのが学年を経るにつれて少し減る傾向にあるのは、問IIIの集計結果とも符合します。また、専門知識を身につけていくにつれて、専門外のことへの興味も大きくなっていくことがうかがえます。「2.人前で自分の考えをきちんと話せる能力」については、1、2年生と4年生で多くなります。4年生では就職活動の経験などを念頭においているのかも知れません。一方、「4.複数の人と討論(ディスカッション)できる力」は3年生で割合が大きくなります。「3.日本語で論理的な文章を書ける表現力」という回答はあまり多くありませんが、私たちは必要な能力であると考えています。

V.「総合文化科目」の受講者数は、何人くらいが適正だと思いますか。あなたの考えに最も近いものを次の中から選んでください。

 

 1. 20人

 2. 50人

 3.100人

 4.150人

 5.その他(理由:                              )

 

全体の傾向として、50人規模の授業を求める学生が最も多く、ついで20人と100人が同数程度でした。昨年と比べると、「1」が14%→18%、「2」が45%→51%と、それぞれ上昇しており、少人数授業を希望する傾向は、ますます進んでいるものと推測されます。

 また、学年が進むにつれて、少人数授業を希望する傾向は高くなります。

 第1部と第2部では、後者の方が少人数を希望する傾向が高くなります。

 系ごとの違いはあまり見られませんでした。(A=機械系学科、B=化学系学科、C=電気系学科、D=建築系学科、K=教職特別課程他、をそれぞれ示しています。)

 

VI.「総合文化科目」をさらに充実させるためには、どのような分野の内容のものが新設されることを期待しますか。できれば理由を添えて答えてください。

 

 新設科目の希望については、多種多様な回答が寄せられました。以下にその回答を1部八王子、1部新宿、2部新宿に分けて、掲載します。なお、HPに掲載するにあたり、個人を特定できないよう修正を加えてあります。今後、皆さんのご意見を参考にさせて頂くつもりですが、回答の中には既に設置されている科目の新設を希望するものも少なくありません。恐らく1部の1、2年生は新宿校舎開設の総合文化科目についてあまり情報を持っていないためではないかと思われます。学生便覧の授業科目履修課程表(36〜37頁)や本学のHPでシラバス等を参照・確認して下さい。

 現状の科目で十分満足しているという回答も少なくありませんでしたが、かなり具体的な科目の新設を求める声も多く、今後のカリキュラムの見直しの参考にさせてもらうつもりです。

 

VII.「総合文化科目」一般に対する要望や意見がありましたら、自由に書いて下さい(教室の大きさ・設備、受講制限のための抽選など)。

 

 自由記述の中で、特に多い共通した意見について紹介し、それに対する総合文化科目担当の専任教員の考えを記すことにします。

 最も多かったのは、履修制限・抽選の廃止や改善を求める意見でした。八王子校舎での履修制限はクラス人数を適正化(少人数化)して、授業環境を向上させることを目的として始めたものです。取りたい科目を履修させてほしいという皆さんの気持ちを尊重したいと思いますが、学習環境に問題の生じやすい多人数の授業クラスを作らないためには、履修制限をしなければならないのが現状です。今回の動向調査でも、クラス人数を少なくしてほしいという意見が多数寄せられていました。人気の高い科目については、同じ科目を他の時間帯に設置するとか他にも対策があるのではないかと思われるでしょうが、例えば八王子校舎開設の総合文化科目の設置時間帯は大学全体の時間割制度として月曜1〜4限(1年生)と木曜3〜4限(2年生)に固定されており、総合文化科目担当者の意向だけで他の時間帯に勝手に配置することはできないのです。また、現状では授業数に対し教室数が目一杯なため、簡単にクラス増設もできない状況です。とはいえ、皆さんの意見を全く無視することはできませんので、何らかの改善策を現在考慮しています。なお、初回の授業にきちんと出席した4年生以上の学生には履修制限・抽選がないので、自分の取りたい科目を優先的に履修できます。総合文化科目は専門学科の科目を学ぶための基礎科目ではありませんから、1、2年で取りきってしまうのではなく、4年間かけてじっくり履修してもらいたいというのが教員側の考えです。

 次に目立った意見としては、シラバスだけで科目を選択しなければならないことに対する不満がありました。体験授業のような時間を設けて、科目をじっくり選択させてほしいという意見もありました。履修登録してみたものの、実際に授業を受けてみると自分が考えていたイメージとは違っていたという場合があり、その上、総合文化科目では原則として学期途中での履修科目の変更を認めていないため、このような不満が生まれているのだと思われます。しかし、半期13回という限られた授業時間を有効に活用するためには、初回の授業からきちんと講義を行わなければならないということがあります。そのためには、様子見的な体験授業を設けたり、履修変更に伴う受講回数の減少を認めたりすることはできないということを理解して下さい。シラバスや教員プロフィールの充実など科目選択のための情報をもっと増やしたり、履修登録方法自体の見直しをするなどして、皆さんの不満を少しでも減らして行きたいと思っています。

 授業内容・評価基準や私語の問題などについての意見もありましたが、専任教員と非常勤教員で運営している総合文化科目担当者会議において取り上げ、総合文化科目担当の全教員がこの問題について共通認識を持って対処したいと思っています。

 また、受講者数と教室サイズのズレ、机・椅子の不具合など教室設備に関する問題については、大学の関係部署と協議し、改善を働きかけたいと思います。なお、プロジェクターなどAV機器については、少し時間がかかるかもしれませんが、改善が図られる見通しです。 

以上です。