工学院大学 宇宙物理学研究室

研究内容

本研究室では、宇宙物理学における様々な問題に、理論・観測の両面から取り組んでいます。特に、「星形成」を一つのキーワードとして、銀河進化の歴史の解明・星や惑星の形成シナリオの構築といったことをテーマに掲げています。計算機や世界中の最新鋭の望遠鏡を駆使して、国内外の研究者と連携しながら、日々研究を進めています。

以下に、現在取り組んでいる具体的な研究テーマやプロジェクトについて、詳しく説明します:

このページのトップに戻る

惑星の形成現場の観測

現在、太陽以外の星でも、惑星を持った星が数多く見つかってきています。そのような惑星を持った星がどのように生まれてくるのか、惑星を持つ星は普遍的に存在するのか、ということを解明することを大きな目標に研究をしています。

星は、宇宙の中でガスの濃い領域(分子雲と呼ばれます)で、ガスが自分の重力によって収縮することで形成されます。その際、星の周囲には「原始惑星系円盤」と呼ばれる冷たい回転円盤が形成されます。その円盤には、ガス成分とともに固体成分(塵と呼ばれます)が含まれ、円盤の中で固体成分が集まることで惑星が形成されます。

惑星形成の過程は、長年研究がされてきましたが、最近の観測の進展によって新たな展開を迎えています。特に、すばる望遠鏡などの大型の光赤外望遠鏡や、ALMA望遠鏡により、原始惑星系円盤の詳細な画像が手に入るようになってきました。その結果、原始惑星系円盤は豊かな構造を持ち、ガス成分と固体成分の分布も必ずしも一致していないということも見えてきました。

原始惑星系円盤の構造がどのようにでき、それがどのように惑星形成につながっていくのか、理論モデルと観測結果を付き合わせながら調べることで、現実的な惑星形成シナリオの構築を目指します。

このページのトップに戻る

回転円盤の力学過程

原始惑星系円盤の研究に関連して、回転円盤の中でどのようなことが起こるのか、理論的研究を行っています。

宇宙には、様々なスケールで回転円盤が存在しています。大きなスケールでは、私たちの銀河系に代表されるような銀河がそうですし、ブラックホール周囲の円盤、生まれたての星周囲の原始惑星系円盤、そして土星の環も円盤の物理としての研究対象です。それぞれの系の温度やスケール、エネルギーなどに応じて様々な現象が起こりますが、一方でどのようなスケールでも起こるような現象も存在します。特に、力学に関連する現象は様々なスケールで同じような現象が起こることが期待され、宇宙で起こっている多様な現象を大きな視点から理解することが出来る可能性があります。

こういった、円盤の中で起こる様々な力学現象や不安定性といった基礎的な物理過程について、主に力学や流体力学をもとに、コンピュータシミュレーションや解析的な計算などの手法を用いた研究を進めています。

このページのトップに戻る

銀河衝突での分子ガスの運動や性質の変化

銀河は宇宙の長い歴史のなかでは実は頻繁に互いに衝突を起こします。この衝突によって生じる衝撃波によって銀河のガスは激しい運動を行い、その性質を変化させます。ガスの運動や性質の変化はその後の銀河の星形成活動にも影響を与え、結果的には数億?数10億年の単位で銀河全体の色や形を変えてしまいます。多くの銀河の色・形の変化は「宇宙の進化」であると表現されます。

衝突前後の銀河のガスや星の観測を行い、銀河同士の衝突がガス・星形成に与える影響を調べています。

このページのトップに戻る

ガスや周辺環境と星形成の関係

星は、水素を主原料としたガスでできています。当然、材料であるガスが多く存在する場所では多くの星が産まれます。実際に銀河を観測するとガスの多い銀河にはたくさんの若い星があります。しかしより詳細に宇宙を見渡してみると、ガスが多くてもあまり星がなかったり、一方でガスが少ないのに星がたくさん生まれているような場所があります。このような場所ではガスの量以外にも星の形成に影響を与えるものがあると推測できます。

銀河に何百もある星形成の現場を詳細に様々な波長で観測する事で、ガスの量以外にその環境を表す量(塵や光の強さ、組成など)を推測し、星形成の激しさや年齢と比較する事で星の形成をまとめてあらわす方程式をつくりたいと考えています。

このページのトップに戻る

将来の望遠鏡計画に向けたサイエンス検討

私たちの宇宙の理解を深めるために、将来に向け、の様々な望遠鏡や観測装置の検討が進められています。特に、ハワイに建設予定の30メートル望遠鏡 (Thirty Meter Telescope) は、日本・米国・カナダ・中国・インドが参加する国際プロジェクトで、2020年代初頭の完成を目指しています。

このTMT計画に、国際サイエンス検討チーム (International Science Development Team) の一員として加わり、TMTにおいてどのようなサイエンスを目指すべきかといったことについて検討を進めています。また、TMTに搭載を目指す系外地球の撮像装置「SEIT」の検討にも加わり、将来計画に向けた装置開発も視野に入れた研究を行っています。

2015年5月にリリースされた、TMTによるサイエンス検討文書(英語)はこちら:
http://arxiv.org/abs/1505.01195

国立天文台TMT推進室のページはこちら:
http://tmt.nao.ac.jp/