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研究概要

 当研究室は、新しいアイデアに基づく装置や方法の開発をメインテーマとしています。電子デバイスや材料の開発には、それらを観察・解析する方法が必要です。第1のテーマはこうした分析装置を開発する研究です。
 第2のテーマは各種電気・電子材料の新しい作製方法の研究です。21世紀はエネルギーと環境の時代です。これまでの「性能・価格重視」の物作りから、「環境配慮型」の考え方への転換が必要です。また、半導体素子は従来より無機元素・化合物が用いられてきましたが、それらとともに有機半導体も注目されはじめています。そこで、本研究室では有機半導体を中心として、新しい作製技術を開発することを目指しています。
 研究内容は多くの分野にまたがりますが、電子回路、制御プログラミング、画像処理、データ処理などは応用物理学科でこれまで学んだことが役立つでしょう。一方で、測定対象になる材料や物質、原子や分子に関する知識も必要です。このあたりは研究室に配属されてからセミナーなどで知識を得ることができるでしょう。


研究1.物質がわかる顕微鏡 "FIBナノサンプリングREMPI"の開発

     電子部品の一部など微小な部分を観察するための身近な方法としては、電子顕微鏡(SEM)があります。SEMは確かにナノレベルで固体試料を観察することができますが、その物質が何であるのかは判りません。また、固体表面は観察できても、内部は観ることができません。

     一方、固体の組成を調べる方法にも幾つかあります。たとえば、電子線マイクロアナリシス法、オージェ電子分光法などの電子線を使った分析手法です。これらはSEMに元素分析の機能を組み合わせたようなものですが、やはり表面の組成しかわかりません。唯一、固体内部の組成を高感度に調べる方法として、二次イオン質量分析法(SIMS)があります。

     ところが、一般のSIMS装置はそれほど細かなところを分析したり、顕微鏡のように画像として組成を分析することが得意ではありません。そこで、当研究室では収束イオンビーム(FIB)という新しいタイプのイオンビームを開発し、これを使ったSIMS装置を開発しています。これが完成すれば、電子顕微鏡のように画像を観察しながら、組成分析をしたり、特定の場所を微細加工して、固体の内部も探ることができるようになります。
     また、通常のSIMSはイオンビーム照射によって自動的にイオン化して出てくる二次イオンを検出しますが、当研究室ではこれのほかに短パルスレーザーによる共鳴イオン化も行っています。共鳴イオン化法が完成すれば、複雑な混合物でも容易に物質を特定することができます。


  • 現在のテーマ(主なもの)
    <装置開発>
    ・多色共鳴イオン化SNMS法の開発
    ・チタン:サファイアレーザーの開発
    ・細胞分析のための急速凍結・真空導入法の開発
    ・有機薄膜作製のためのエレクトロスプレー装置の開発
    <応用>
    ・PM2.5、黄砂といった大気微粒子の個別組成分析
    ・同重体干渉を抑えた微小固体試料イメージング
    ・リチウムイオン電池の劣化解析
    ・化粧品添加物の分析
    ・有機太陽電池、ポリマー多層有機ELの製作
    ・単一細胞の前処理無しイメージング



  • 学生募集 こんなことに取り組めます
    この研究で開発している装置は非常に複雑で高度な技術を用いており、なかにはやってみないと判らない部分まで含まれています。また、各種物理現象は勿論のこと、真空工学や物質化学など広い分野の知識も必要とされます。これまでの応用物理学の知識を活かしつつ、幅広く学ぶことができると思います。また、理論計算等も必要に応じて行いますが、基本は実験です。頭と手足を動かしたい学生が向いています。
  • 産業との関連
    このような研究の知識や経験は、様々な業種と関連があります。電子部品産業では素子の開発、検査といった部門、分析を業務とする企業、鉄鋼・セラミックスなどの材料関連企業などです。また、これからは有機電子材料も発展が見込めますので、有機ELや有機太陽電池といった新しい分野にも繋がりがあります。


研究2.スプレーでLEDを作る? "エレクトロスプレー"

    次の世代のディスプレイの候補の一つとして有機ELが注目されています。有機ELは従来の無機半導体と異なり、有機物を材料として使います。材料が異なれば作製方法も異なるのですが、作製技術は完全に確立されているとはいえません。これまでに真空蒸着や印刷法などが検討されていますが、それぞれに問題点があります。本研究室では、これら何れの方法とも異なる方法を発案・実証したいと考えています。有機半導体はディスプレイだけではなく、トランジスタや太陽電池といった方面でもその発展が期待されています。 具体的には、新しい方法として、エレクトロスプレー法と超臨界流体スプレー法を提案・研究しています。両方とも、有機薄膜作製方法としては新規なものであり、基礎的な研究からスタートさせています。

    エレクトロスプレー法では、写真のように、高電圧を印加した金属キャピラリーから材料を溶かした有機溶媒を静電界により噴霧して基板にスプレーします。噴霧された液体は正に帯電しており、この反発力によってさらに微小な液滴となります。これを繰り返すことによって、基板に到着するときには溶媒がほぼ揮発し、材料だけが基板に堆積されます。つまり、溶液を用いながらもドライな環境で成膜できるという特長をもっています。

    材料溶液を電界でスプレーEL素子が発光している様子

  • 学生募集 こんなことに取り組めます
    この研究で取り組んでいるのは、静電スプレー現象を有機薄膜作製に利用する新しい方法の開発です。電子・電気分野のなかでも物質科学に近い分野となり、化学の知識も多少必要になります。新材料・新手法など、新しいものに興味を持つ学生が向いていると思います。

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