科学言説研究プロジェクト

 ここは、「科学言説研究プロジェクト」のホームページです。
 このプロジェクトは、工学院大学総合研究所プロジェクト研究「近代日本における科学言説の浸透と変容をめぐる文化研究」(2006−2009年度)および日本学術振興会科学研究費補助金交付課題「近代日本における科学言説の浸透と変容をめぐる文化研究」(平成16ー19年度、研究課題番号16520111)等に支えられています。
 科研費の研究は終了しました。報告書希望の方は、お早めにお問い合わせ下さい。

研究者紹介

吉田司雄。工学院大学教授。日本近代文学・文化研究・映像論。

一柳廣孝。横浜国立大学教授。日本近代文学・文化史。

林真理。工学院大学教授。科学史・科学論。

研究計画紹介

 本研究は、文学研究と科学史研究の両方の側から、科学言説を検討します。文学に見られる科学的な内容の言説、科学者による一般向けの言説の両方を探ることで、科学と文学のに浮かび上がる新たな文化研究の地平を切りひらくことが目的です。

公開研究会案内:科学言説研究プロジェクト第8回公開研究会「科学神話の時代―ポピュラーサイエンスから読みとく―」

今回は、雑誌『科学世界』の分析を行って、優生学を例にしながら、メディアを通して形成される科学のあり方を示す興味深い論文を書かれた日本近代史専攻の横山尊氏(九州大学)と、メディアにおける科学表象の持つ固有の世界を論じる仕事を、一連の書籍で発表されてきたことでよく知られている原克氏(早稲田大学)をゲストに迎えて研究会を開催します。開始時間等のさらに詳細については、近日中にこのページを更新してお伝えします。

日時:2011年2月27日(日曜) 14:30−17:50

場所:工学院大学 新宿校舎27階2710共同セミナー室
  1階または地下1階から高層階用エレベーターで27階までお越し下さい。   http://www.kogakuin.ac.jp/map/shinjuku/index.html

〔プログラム〕

14:40-15:40
[講演]
「優生保護法の成立と展開の側面史――谷口弥三郎の戦中と戦後」
講演者;横山尊(九州大学大学文書館百年史編集室)
紹介:専攻は歴史学。主要論文に、「明治後期-大正期における科学ジャーナリズムの生成−雑誌『科学世界』の基礎的研究を通して」『メディア史研究』vol.26(2009)、 「国民優生法成立の再検討−法案論議と科学啓蒙のあいだ」『社会思想史研究』vol.34(2010)がある。

15:40-16:40
[講演]
「20世紀科学表象の世界」
講演者:原克(早稲田大学教育学部)
紹介:専攻は、表象文化論、ドイツ文学。2010年の出版物に、『美女と機械』(河出書房新社)、『気分はサイボーグ』(角川学芸出版)、『身体補完計画』(青土社)がある。

休憩

16:50-17:50
全体討論

[横山氏講演要旨]

 報告者は、近現代日本の優生学運動の展開を研究してきた。そのことで雑誌メディアを中心とした科学啓蒙、アカデミズム、科学運動、政策化の構造と時代ごとのあり方を明らかにしようとしている。
 今回の報告では、拙稿「国民優生法成立の再検討」に続けて、1948年に制定された優生保護法の成立と展開の分析を通し、優生法とその担い手の理解の枠組みを戦前と戦後の関連性を視野に入れて、再検討する。
 その際、本報告は優生保護法の通過、改正に中心的に携わった参議院議員、谷口弥三郎の思想と行動に注目する。今日まで、谷口の構想の独自性、政治家としての性格、政治資源のあり方などは十分に検討されていない。しかし、谷口は戦前から熊本県医師会長、日本医師会副会長として医師界に影響力をもった一方で、人口政策に大きな関心を示し、特に1939年から断続的に実施した熊本県下22万人の婦人に実行した出産調査は、内外から高い評価を得ていた。この出産調査を支えたのは、衛生行政拡充の構想と、人口増強の理念だった。こうした、谷口の軌跡をたどった場合、これら戦前の構想と戦後の優生保護法の連続性が見えてこよう。
 加えて、本報告は、戦前と戦後の優生学運動と政策の担い手の変容に注目する。実は、戦前、戦後にかけて優生政策は国策化し強化されたのに、民族衛生協会などの優生学啓蒙のツールだった優生学雑誌は衰微した。谷口はその動向と適度に距離をおきつつ政治力を発揮し、専ら医学雑誌や県医師会、国政を基盤に言論と政治活動を展開した。昨今はプランゲ文庫の雑誌・新聞記事のデータベース化の恩恵もあり、分析を従来の研究より多くの素材をふまえたかたちで展開できる。上記の言論・政治空間を分析することで、第二次大戦前後における科学啓蒙、科学運動、政策の交差点の変容と特殊性に関する興味深い論点が提示できよう。

[原氏講演要旨]

 本来、論者の関心は、科学啓蒙雑誌(ポピュラー・サイエンス・マガジン)の「語り口」を読み解くことにある。
 正確な科学知識といえども、一般読者に伝達される際に、市民的欲望とか進歩主義的未来像とか、本来科学知識そのものとは関係ないはずの表象ノイズが混入してくる。それは、いわば神話的語り口とでも言うほかないようなメカニズムであり、したがって、二〇世紀とは「科学の時代」というよりも、むしろ「科学神話の時代」といったほうが適切なほどである。そうした事態の根深さを掘りおこすこと。これが最近の関心事である。
 20世紀は科学情報の時代だった。人びとの暮らしは、科学情報抜きには考えられなくなっていた。しかし、人びとの暮らしや考え方に影響を与えたのは、正確な科学的知識であったというよりも、むしろ、そうした情報から人びとが得た、科学についての漠然としたイメージのほうだった。ときに誤謬をふくんだ「科学表象」のほうが、人びとの生活習慣や価値判断に大きな影響をおよぼしたのだ。
 20世紀の科学表象を生みだしたもののなかでも、とりわけ19世紀後半から流行するようになった「科学啓蒙雑誌」というジャンルが重要である。学会誌や研究論文といった、専門家集団による閉じた知的サークルのなかだけで通用するものではなく、科学知識をひろく一般大衆に伝えることを目的とした情報ツールである。それらの特徴は、最先端の知識を正確におさえることはいうまでもないが、同時に、読者である大衆の受容傾向にたいする配慮がなされているという点である。記事に使われていることばづかいやエピソードの振り方ひとつとっても、編集者の気づかいをうかがい知ることができる。つまり、その時代の関心や知的水準、嗜好や欲望を敏感にかぎわける嗅覚がはたらいているのだ。そして、ほかならぬテキストへのこうした気配りこそが、時代の欲望をあぶりだす触媒の役割をはたしているのである。

 過去の研究会は研究会記録をご覧下さい。

研究成果紹介

 関連する成果のウェブ掲載や出版物の紹介を行います。研究成果をご覧下さい。

プロジェクト連絡先

〒163-8677 東京都新宿区西新宿1-24-2共通課程
吉田司雄気付「科学言説研究プロジェクト」
wwf1019@ns.kogakuin.ac.jp