ここは、工学院大学総合研究所プロジェクト研究「近代日本における科学言説の浸透と変容をめぐる文化研究」(2006−2009年度)および日本学術振興会科学研究費補助金交付課題「近代日本における科学言説の浸透と変容をめぐる文化研究」(平成16ー19年度、研究課題番号16520111)による研究紹介および成果発表のページです。科研費の研究は終了しました。報告書希望の方は、お早めにお問い合わせ下さい。
研究代表者:吉田司雄。工学院大学教授。日本近代文学・文化研究・映像論。
研究分担者:一柳廣孝。横浜国立大学教授。日本近代文学・文化史。
研究分担者:林真理。工学院大学教授。科学史・科学論。
本研究は、文学研究と科学史研究の両方の側から、科学言説を検討します。文学に見られる科学的な内容の言説、科学者による一般向けの言説の両方を探ることで、科学と文学のに浮かび上がる新たな文化研究の地平を切りひらくことが目的です。
日時:2010年3月13日(土曜) 午後2時30分〜6時
場所:工学院大学 新宿校舎27階2710共同セミナー室
1階または地下1階から高層階用エレベーターで27階までお越し下さい。
http://www.kogakuin.ac.jp/map/shinjuku/index.html
〔プログラム〕
14:30 [発表]タヤンディエー・ドゥニ「ナノテクノロジーとSF、架空の科学と真のフィクション」
15:30 [講演]長山靖生「古典SFと近代日本の想像力」
16:45 [討議]コメンテーター:小林敦
※ 散会後、懇親会を予定しております。
[発表要旨]
タヤンディエー・ドゥニ「ナノテクノロジーとSF、架空の科学と真のフィクション」
ナノテクノロジーという分野は近年飛躍的に発展している。人間社会の目覚しい進歩と豊かな未来を予言している出版物もあれば、ナノテクノロジーによる危険性を強調する科学者、また、技術に恐怖を感じる人々も多数いる。つまり、ナノテクを取り囲む見解は極端であり、肯定的なユートピアと否定的なディストピアしか目だっていない。これらの極端な見方はSFのレトリックを駆使しており、ナノテクノロジーとSFとの境界線を漠然としたものにするという点は既に数名の研究者に指摘されている。しかし、「SFはただのフィクションであること」と「科学は、フィクションではないこと」という二分法を乗り越え、想像力と現実との相互作用を意識すれば、SFは、ナノテクによる社会的影響の討論に大いに貢献できるだろう。ロペス(Jose Lopez)の「文学というジャンルとしてのSFは、ナノテクノロジーに関する文献よりも批判の余地を与える」というコメントを文字通りに受け止め、SFを通して、その批判の余地を探ることは有益なのではないだろうか。日本SFといえば、近年ナノテクを題材とした木城ゆきと『銃夢』という漫画などが、国境を越え、アメリカやヨーロッパなどで反響を呼んでいる。ナノテクの社会的影響を反映し、大衆にこれを紹介し関心を呼び起こしたため、こうした社会性を持った作品に触れる意味があると思われる。
※タヤンディエー・ドゥニ氏は、フランスのリヨン第三大学大学院博士課程院生。修士論文は「サイエンスフィクションを通じて、ナノテクノロジーを巡る検討――星新一の短編『おーいでてこーい』におけるナノテクノロジーの象徴について」。現在、日仏共同博士コンソーシアムのプログラムで慶応大学に留学中。
[講演要旨]
長山靖生「古典SFと近代日本の想像力」
SFというジャンル概念は1920年代に生まれたが、この概念に合致する作品はそれ以前から書かれていた。日本でも明治期には科学技術や社会制度が進歩した未来あるいは異世界を舞台にした作品が書かれている。また社会科学上の仮説や空想を取り入れたユートピア小説、未来を空想するのと同様の手法で架空の過去を物語る偽史フィクションも大衆的な人気を博した。
拙著『日本SF精神史』で論じたように、日本の古典SFは欧米の同系統作品の影響を受けつつも、日本の国状や歴史的条件の下、独自の展開を見せた。主にアメリカSFの影響ではじまったと見られがちな戦後SFも、その戦前の古典SFと連続性を保持していた。古典SF研究は、従来の文学観からは評価される機会が少なかった政治小説、科学小説、冒険小説、奇想小説などに光を当てるためのひとつの評価軸となり得る。それはまた近代日本が内容していた想像力の多様性と特性を解明するうえでも有益だろう。
※長山靖生氏は、評論家。著書に『日本SF精神史』(河出書房新社)、『テロとユートピア』(新潮社)、『奇想科学の肖像』(平凡社新書)、『偽史冒険世界』(筑摩書房)など。
[コメンテーター紹介]
※小林敦氏は、東京都立大学大学院博士課程退学。論文に「《不可視》の肖像、《潜在》への視線――海野十三「赤外線男」小論」(「論樹」第15号)、「かくも永き神の不在に、セカイを語るということ」(『オカルトの惑星――1980年代、もう一つの世界地図』)など。
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吉田司雄気付「科学言説研究プロジェクト」
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