DEIM2021報告
Feb 17, 2022
皆さんこんにちは.北山です.研究室としては毎年参加しているDEIM(データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム)に今年も参加しましたので,その報告です.今年は昨年に引き続き,完全オンラインの開催ということで,私は運営側でもなかったので自宅からの参加をしていました.ちなみに昨年は運営側だったのと,初のオンライン開催でてんやわんやだったのを思い出します.
北山研としては11件の発表を行いました.共著の発表がもう1件あるので,北山の名が入っている発表は12件ということになります.こうなってくると,ほぼすべての時間帯が,発表 or コメンテータのお仕事という状態で,一日中張り付いているような形になりました...ちょっとやりすぎ感もありますので,来年からは考えたいと思います.これ,いつも言ってるような...まあええか.
ありがたいことに,そのうち「ユーザのシチュエーションと振る舞いに基づく提示タイミング制御を用いたニュースリーダー」という発表は「注目研究賞」を受賞することができました.これは,面白そうな記事を見つけたけど,電車を降りるタイミングだったなどで見逃した記事を後から推薦できないか?ということを目指した研究で,数名ですが実際に作成したニュースリーダーのログを,それを使ったペルソナ実験によりクラウドワーカーを使って推薦精度を評価したというものになります.コロナの影響でテーマ設定,実験設定に非常に苦労した研究なので,報われてよかったなと思っています.この発表は,DEIM2021の初日の第1セッションの1番目の発表で,全く同じ時間に別の学生の発表があり,私は見に行くことができなかったのですが,発表学生が非常に頑張ってくれたようです.
こんな感じで,発表した研究をつらつらと紹介したいと思います.このBlogでは,学生の個人名を出しませんが,興味を持った人は,研究室のWebページの論文リストを参照いただければと思います.
[C11]レシピと料理①のセッションでは,2件発表を行いました.
「レシピ検索のための文書頻度を用いたレシピの味特徴の抽出」では,飲食店レビューに書かれる味の感想を利用して食材の味を推定することで,レシピ投稿サイトに投稿される味を予想しよう.という研究です.クラウドワーカーを使って,レシピの味の正解を作成したところ,推定した味と正解の味にある程度相関が見られるという結果になりました.
「レシピ頻度特徴量とLexRankに基づくアレンジ抽出手法の評価」では,同じくレシピの研究ですが,基本的なレシピとの差異を抽出することでアレンジ箇所を見つけようというものです.基本的なレシピとはなにか?手順の差異はどのように表現するべきか?などさまざまな問題を検討したものになります.結果としては従来手法の方がうまく取り出せるという結果になりましたが,検討中に出たいろいろなアイディアは今後に生かして行きたいと思っています.
[F11] 情報検索・情報推薦①のセッションでは,2件発表を行いました.そのうち1件は冒頭に紹介した受賞した発表ですので割愛します.
「技術ブログにおける単語出現の順序構造を用いた全容把握型検索結果の生成」では,検索結果を本の目次のように構造化したいというモチベーションのもと,技術用語に限定したものの手軽にキーワード間の構造を得て,検索結果のタイトルをその構造に当てはめるという手法を提案しました.この学生は大学院進学するので,今後の活躍にも期待しましょう.
[F13] 情報検索・情報推薦②では,「網羅的検索のためのWeb検索結果における拡張情報提示とその評価」というタイトルで発表を行いました.この研究では,Web検索結果のスニペット中に「知らないトピックが含まれる可能性」を示すことで,Webページ選択を支援したり,ことなる検索クエリに誘導したりすることを目指しました.こちらもクラウドワーカを使って実際のWeb検索行動を大量に集めることで評価しています.
[C14] ファッション・コスメでは,「コーディネート検索におけるユーザ評価の提示によるファッションへの意識変化手法とその評価」を発表しました.この研究では,検索結果中に通常表示される「イイね」の数などの評価をあえて隠しておいて,検索結果の選択時に表示させることで,自分の選択と他者の選択の差異を意識させることで,評価の差異に意識を向けさせることの効果を評価しました.このような実験が可能な検索システムを作成し,クラウドワーカの選択行動の変化を分析して評価しています.
[A21] 空間データベースでは「群衆の移動履歴に基づく略地図生成のためのオブジェクト抽出手法」を発表しました.これは北山研ではなく,他の研究室との共著のものになります.略地図作成の主目的となる地物とそれに関連する移動履歴を用いることで,主目的の地物と共に利用されやすい地物を略地図作成時に表示しやすくしようという研究です.
[F21] 情報検索・情報推薦④では「複数人による行き先決定時における嗜好の匿名化を用いた意思表明支援」を発表しました.複数人で飲食店に行く時にどうしても「どうする?」「どこいく?」という謎の探り合い時間が発生するのを解決するために,「誰が提案した店舗かわからなくする」形で,それぞれが心の中に思っている行きたいお店とそれに基づく推薦店舗を,議論のテーブルに乗せることで,行き先決定を円滑にしようという試みです.
[D25] 音楽②では「楽曲のフォロワーにおける使用楽器の割合に基づく音楽動画推薦」を発表しました.楽曲に対して「演奏してみた」動画のように,自分の得意な楽器でフォローするということがあります.これに着目して,フォロアーの割合はある種のその楽曲の特徴になりえるという仮説のもと,その特徴の類似性で推薦することを試みた研究です.特徴量としてはややトリッキーなものの,ランダム推薦よりは良く,コード進行の類似性による推薦と同等くらいの推薦精度を示しました.
[J31] 観光情報では,「他者の興味提示に基づく複数人による旅行先決定システムとその評価」を発表しました.これは,個々の参加者が旅行先の候補を選ぶ段階で,それとなく他の旅行者の興味を意識させるような情報を混ぜ込むことで,その後の行き先決定が円滑になるのではないか?という仮説をたて,それを検証するような研究です.実験の結果,他の参加者が興味を持ちそうなレビューをスポットの説明文として提示すると,他の参加者の興味を意識した選択になりやすく,合意が容易になる可能性を示しました.
[F33] 情報検索・情報推薦⑧では「商品購入履歴中の異カテゴリ商品対を用いた機械学習によるクロスカテゴリ推薦」を発表しました.これは,よくある購入履歴を使った協調フィルタリングにより次の購買の予測のような枠組みなのですが,学習に使うのも予測するのも商品の特徴ベクトルとすることで,内容ベース推薦のような効果ももたせられないか?と取り組んだものです.結果としては,課題が多数見つかったという形になりましたが,初期段階の検討としては興味深かったんじゃないかと思います.
[J33] 地理情報②では「旅行プランにおける体験の共起関係に基づく相性の良いスポットペアの抽出」を発表しました.大きな枠組みとしては,先のクロスカテゴリ推薦とよく似た枠組みで,こちらも大きな枠としては協調フィルタリングで,内部的にはスポットの特徴を使おうというような考えで行っています.この研究を行っている学生も修士に進学するので,今後の活躍に期待です.
はい,ということで12件すべての紹介を行いましたがいかがでしたでしょうか?今日はこのくらいで,ではまた.