DIARY 2002年6月後半



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6月16日(日)

大学の父母会で横浜へ。東横線横浜駅は相変わらず狭くて汚い。繁華街の裏通りに住んでいた91-93年当時とあまり変わっていないように見える。毎年違う場所に行くのだが、どこに行ってもだいだい同じだと思う。子供にはわからない親の不安がたくさん見える。親の気持ちに地域差などないということだろう。

普段プリンタを接続していないパソコンにプリンタをつなぐのに苦心。プリントアウトした原稿を行きの電車でチェック。横浜までは長旅だ。不定期の湘南新宿ラインより、正確に15分おきにある東横線特急が便利。帰りの電車の中では半分寝ていた。

顔のあちこちにピアスを計10個くらいつけた青年が電車の中で読んでいた本は『数秘術』だった。カバラ?

隣に並んで座った親子連れ(母+小学校低学年+幼稚園?)は、それぞれ何か読んでいた。母はサンケイリビング、小学生は「明るい家庭」とか書いてある東京都のパンフレット、幼稚園児が読んでいたのはボロボロになるまで読み込まれて表紙から何枚かはすでにちぎれ落ちている漫画雑誌『別冊コロコロコミック増刊号 ドラえもん総集編2002年春号』(調べたところ昨年末発売)だった。漢字は多いし、意味はわからないしで、小冊子に飽きたらしい小学生は、小さな手帖を取り出して漫画を書き始めた。「6コマまんが Tシャツ君のヒミツ」というタイトルを比較的しっかりしたフォントで上端に手書きした後、ページ内を6つのコマに分割し始めた。途中で降りたのでTシャツ君がどのようなキャラクターなのか結局わからず、大変気になった。全員がそれぞれ活字を追っていたわりにはまったくお金のかかった様子がない。この家族は家庭の節約術の特集でテレビに出ていてもおかしくない。

明日送らなければいけない論文と、学内シンポジウムと、授業のことなどが気になっている。


6月17日(月)

久しぶりに秋津回りで八王子校舎へ。いつもと少し違う時間の中央線は混んでいる。授業後は荷物と一緒に高速道路で新宿へ。渋滞というほどではないが、混雑はしている。車の中からすでに会議が始まっている。

倫理教育を巡る学内シンポジウムの報告者の一人としておよそ10分話す。シンポ全体としては話題の幅が非常に広い。設計の手抜きからタバコの投げ捨てまで問題になる。参加者は意外に多いが、倫理はともかくJABEE問題は今やどこの工学部でも見逃せない話題だからだろう。ちなみに工学院大学の自慢はこちら。(初年度認定校の最初に書いてある。)たぶん来年になったら希少価値はなくなるので、本年度限定だ。

哲学者がテクノロジーを論じ、化学者がマックス・ウェーバーに興味を示す雰囲気は結構良いものだと思う。

某誌への投稿のため22時頃郵便局。自販機で切手を買うつもりだったが、1000円札と新500円(使えない)のみ。1000円札など使ったら500円玉が2枚になってしまうが、これは私の美的な感覚が許さない。仕方なく窓口に並んで500円玉を手渡す。

ノートパソコン(自宅)の故障で、メールによる返答がかなり遅れています。遅いなと思っている方、ごめんなさい。


6月18日(火)

年収が100万円でも楽しく生きられる方法がテーマの本を見つけた。単なる節約術の本かと思ったが、デフレがどんどん進んでこれからは年収100万円が普通になるというあたりでかなり大げさだなあと思って期待して先を読み進めると、「他人と比較しない」とか「自分が幸せでなければ他人を幸せにできない」など人生論が加わってゆき最後はかなり宗教がかっていた。大金持ちでも不幸になった事例がふんだんに挙げられているのも特徴だ。書いた本人はリストラ自殺の防止になる社会的に意義ある本とでも思っているのではなかろうか。

主役が恐喝で逮捕されたため打ち切りになったウルトラマンコスモスは総集編を作って決着をつけるそうだ。子供の夢を壊さないためということらしいが、子供たちは「ろうやにはいった」くらいのことはわかっているに違いない。すでに子供に嘘をついてしまった親や、子供を信じていたい親や、総集編をどのように作るか考えるのが楽しみなマニアックだけどちょっと意地悪なファンがテレビ局に電話をして文句を言ったに違いない。完全変態型(人間だったときの姿が変身後にはまったく反映されない)のヒーローだから良かったが、これが不完全変態型(人間だったときの姿を変身後に一部残している)だったら総集編を作るのは困難だろう。

ロマノフ王朝の生き残りを自称する女性が現れたというニュース。同じことは何度もあったらしいがこれがたぶん最後だろう。しかし、本当に百歳かどうかはわからないものの、ここまで高齢になってわざわざ出てくるくらいだから、騙そうと意図しているというよりは、そう信じ込んでいる人かも知れないと思う。本当にしても嘘にしても、証人は誰も生きていないだろうから、証言では確かめようがない。

パソコン(Mebius2号機)は動作回復した。ただ、どうしてもそれを使うとハングするようになったカナ漢字変換ソフトATOK他いくつかのソフトをはずしてしまった。


6月19日(水)

クエストがゲーム部門をスクウェアに売り払ったというニュース。せっかく定年になったら「オウガバトル」を今度こそ最後までやろうと思っていたのに、大丈夫だろうか。まだ全8章が完成してはいなかったはずだが、20年後くらいには5世代後くらいのマシンに対応した全作セットの「オウガバトルコレクション」が売り出されていると信じているぞ。老後の夢を壊さないでほしい。

100名の味方に全員固有名詞が付いており、その中から選んでユニットを編成し育成しなければならないというのは、学校の先生に似ているかも知れないと今なら思う。海マップの時だけ力を発揮するタコ型モンスターとか、単独では弱いのにうまく組み合わせで強いユニットが作れるところなど、個性とその融合型が非常に面白かった記憶がある。


6月20日(木)

新たに東京三菱銀行の口座を作ることになった。特にオプションは選択しないで申込書を提出したら、ネットバンキングが便利だという説明を始めようとして「まだご利用になっていないと思いますが」と言うので、もうけっこう前から使っていますと説明を阻んだ。

昨日は少しフラフラしていたが、今日はそうでもない。しかし、早めに引き上げる。

ワールドカップなので休みにして欲しいとか、授業を早く終わらせて欲しいという学生がいるのだが、4年に1度の世界大会で1ヶ月がイベント月間化することができれば、48種類のスポーツで常時イベント化が可能だ。年中祭というのも悪くないかも知れない。私は参加しないが。

民放はニュースがサッカー一色だし、かといって受信料を拒否しつづけているNHKを見るわけにはいかないのでテレビを見ることができないという、まじめな工学院大学生からのメール。心配することはない。NHKも民放と大差ない。

日本の研究者がまたアメリカでスパイ疑惑をかけられたというニュース。嫌疑をかけられたことがらの真偽はわからないが、研究室内で教授と口をきかず、無許可の研究をしていたところから普通ではないように思う。毎日新聞の記事は日本人研究者に多少同情的だが、読売の記事の方では研究者が相当な悪事を働いたことになっている。

水戸黄門の主役交代のニュース。助さんがいつのまにか黄門様になるなんて子供たちに説明がつかないではないか。それに、本当は強いのにどうして自分で戦わないんだろうと思ってしまう。


6月21日(金)

『ムーミンの哲学』(瀬戸一夫著、勁草書房新刊)をついつい読んでしまって、自分の仕事の方が手薄になる。誰もが知っているアニメ「ムーミン」のストーリーを手がかりにして哲学入門できるという本だ。ちゃんと権利を買ってカバーや章扉の絵にキャラクターを使用している。たしかにこういう装丁にすることで、通常哲学書の読者でない人の財布の紐を緩ませる可能性はある。また教科書に指定した場合も、装丁がカワイイから通学時に持ち歩くのになかなか良いので売れるかも知れない。編集者としては『ソフィーの世界』あたりを狙っているはずだ。勁草書房にしては思い切った投資をしている。なお、61頁と224頁の絵だけは著者本人が描いたものと思われる。


6月22日(土)

大塚英志氏によると、日本の出版社はサブカルチャーで儲けることによって文学の出す赤字を埋めており、さしずめ文学は「不良債権」にあたるのだそうだ。話を聞いてちょっと思い当たるふしがないでもない。学術書は文学以上かも知れない。ゲームの攻略本やトレーディングカードをたくさん出している会社から本を出すというのも同じことだろう。

昨日に引き続いて今日は 『ホームレス作家』(松井計)に時間を奪われる。読み進めることに抵抗を感じながらどうしても読まずにはいられないという本に出会ったのは久しぶりだ。新宿の地理がよくわかっていると面白く読める、あるいは新宿を歩き回る貧乏な学生にとって実用的なことが書いてあるところも良い。

昨日に続いて校正。メールを何通も書いている。


6月23日(日)

お茶の間留学のCMでは、お茶の間で授業を受けている生徒たちの背景がとてもきれいに写っているが、本当にお茶の間のテレビの前に座ってカメラに向かったら、生活の実態やら、家族関係やら、家計の苦しさやらを示す様々なものが映し出されるのではないのだろうか。他の生徒は気になって仕方がないし、テレビ画面もごちゃごちゃしてとても見にくいはずだと思うのだが、どうなんだろう。テレビ電話の背景は消したりできるのだろうか。使ったことがないのでよくわからない、素朴な疑問だ。

いきなり「インターネットの世界では、お金を使う人と、お金を受け取る人に分かれます。あなたは,どちらを選択されますか ? 」なんて書いてあるビジネスへのお誘いは、どう見ても怪しくて笑ってしまうほどだ。そんなに簡単なものなら、競争相手がいないなんてことはないだろう。市場規模2000兆円のビジネスというのも、ちょっと計算してみればおかしな数字だとわかるはずだ。「お金を受け取るつもりで実は使う人」への道が待っている。ちなみに、どうしてこんなページを見つけたかというと、電車で隣に座った若者がいかにも怪しげなビジネス書らしきものを読んでおり、そこに出ていた企業名を記憶していて検索をかけてみたからである。

改装閉店セールのスーパーを物色。欲しいものに限って売り切れている。本屋まで商品が少なく見えるのはどういうことだろう。


6月24日(月)

府中に住んでいるという非常勤講師氏としゃべっていて、府中の名物という話題になったので、かろうじて頭の中に残っていた「一務所二馬身三億円」という文句を披露したところ初めて聞く言葉だと言われた。府中では小学生でも知っているのかと思っていたが、ネットで探してもここ(東京競馬場の項参照)くらいでしか見つからないので、そうでもないのだろう。

郵便局に行って 生物学史関係の郵便物と校正原稿を送る。夜だというのに、窓口は非常に混んでいる。ハガキ300枚をまとめて持ち込む人とか、外国郵便をいくつも出している人がいるため、なかなか順番が回ってこない。

最近甘いコーヒーが飲みたくなる。暖かいインスタントにも角砂糖を入れてしまう。自販機で冷たい缶飲料を買う時にも、お茶でもなく、苦そうなのでもなく、甘そうなのを探している自分に気づく。身体が糖分を欲しているのがわかる。


6月25日(火)

組合の「婦人部」が主催する「ひなまつり集会」(?)の「講演会」で話をする。ほとんどが職員の人であり、会の性格上8割が女性だ。学生でも教員でもなくしたがって普段別のチャンネルで接している人に対して、話をするのは切り替えがとても難しいということがわかった。単にこちらの考え方の問題だと思うのだが、まったく知らない相手の方が何も考えなくて済む分話し易いということもあるのだろう。貴重な体験だったと思う。

婦人部という名前がかなりアナクロだが、アナクロという言葉も近頃あまり聞かない。

多数の女性の中に少数者の男性として入って自分の専門に関連する話をするのはあまり機会がないことなのではないかと、会のセッティングをした社会学者(女性)に指摘される。たしかにそうかも知れない。女子大で教えたことはあるが、学生相手というのとはまた違う。生物学史の月例会など女性の出席者の方が多いときもあるが、それでも明らかに男性が少数ということはない。特に意識するつもりはなかったのだが、そういわれると考えてしまう。女性の研究者の場合、多数の男性にかこまれて一人だけ女性であるというようなことがあたりまえになっているのを、逆の立場の男性は普段体験していないから理解できていないのではないかということを考えさせられた。

郵便局のレジが清算のたびに電子音を奏でるのが気になる。かつての「チーン」という無機質な音より心地良いかも知れないが、違和感はある。最近のレジは担当者情報も入力されているので、そのうち着メロのように担当者によってそれぞれ違う音楽が鳴るようになるかも知れない。


6月26日(水)

体調の良いときはそれほど思わないのだが、ちょっと悪くなってくると感じる。100人規模の授業は殺人的だ。先週のプリントありませんか、レポートの課題を忘れた、レポートにこんな本を読もうと思うがどうか、レポート今日出します、いつ試験ですか、レポートの提出日は・・・・・・。どうやって処理して良いのかわからないクエスチョンが続く。終わるとヘトヘトになっている自分を発見する。2部の2限。最後の学生が教室を出たのは授業時間終了後30分を過ぎてからだった。研究室に戻ろうとすると、残って遊んでいる学生が廊下で「さようならあ」と挨拶してくる。一人目には答えたが、二人目には生返事。愛想悪いなと自分でも思う。普段から決して愛想の良い方ではないけど。


6月27日(木)

昨日は固形物がまったく喉を通らず、結局そのまま寝てしまう。体調不良で授業も休講。よく寝て、おかゆを食べて回復したので、明日からまた復活します。工学院大学内からウェブページへのアクセスが多いのと、PHSに何回も連絡が入っていたのが気になっている。気にして下さった方、連絡取れなかった方、申し訳ありません。

昨夜の体重は47.8kg、体脂肪率は14%だった。ダイエッターではない私にとっては好ましい数字ではない。

昨日深夜から昼過ぎまで、トップページの代わりに日記の目次が出てくるようになっていました。ファイル転送に失敗したからのようです。アクセス数を無駄に増やさないため、自分ではトップページにできるだけ飛ばないようにしているので指摘されるまで気づきませんでした。ご迷惑をおかけしました。


6月28日(金)

本郷3丁目の社屋が決して美しくないのも知っていたし、それほど売れる本が出ていないとも思っていたが、社会思想社が清算というニュースには驚かされた。現代教養文庫に入っている『奇妙な論理』は「とんでも科学」論の古典だ。なくして欲しくない。

深夜から午後にかけて八王子のサーバがダウンして、このページも見られなくなっていたそうです。ハードウェアの異常だとか。

試験日程が発表になったが、4日間で5つの試験があることになった。1週間以内に採点して成績をつけることは不可能ほぼ確定! その1週間のあいだに広報部依頼の泊りがけ出張もあるんだぞ。

もうすぐ7月だが、7月中は休めそうにない。と思ったら、8月も私的公的にいろいろある。そして、9月14日(土)から授業(しかも月曜日の授業)。某学会なんて夏休みを見込んでの発表大会を14日まで組んでいるというのに。


6月29日(土)

最近読んだものが頭に残らないので(?)、できるだけ後味が悪くて嫌な気持ちを引きずりそうなものを読むことにした。宮沢賢治の「フランドン農学校の豚」を読んでそうしようと思った。とりあえず吉野朔実『ECCENTRICS』(集英社 Bouquet Comics)から。同一性の病? ちょっとふらつきそうだ。他に適切な小説などあったら教えてください。昔読んだ中では『家畜人ヤプー』や『コレクター』が結構キタのだが。

やたら眠そうな学生がいたので事情を聞いたところ、自分だけ止めるわけにいかないので朝までネットゲームを続けていたという。金曜の夜なので他の人は翌日休みなのだろう。それとも6月末まで無料だからか?

練馬の西友が23時まで営業することになったのは良いが、西友入り口そばの西武池袋線改札は22時30分で終わりだそうだ。連携が全然とれていない。


6月30日(日)

更新歴にも書いたようにサイトを一部更新しながら見つけたのが「福岡教育大学を「大学」に!」というページ。「単位制度」というえらい古めかしい規則に一律に合わせていくことだけが解決策だと私は思わないが、大学の中に大学らしい奇妙な矛盾のあることがよくわかる面白い論説だ。

毎日毎日ワールドカップのことを日記に書きつづけている元サッカー同好会のY氏と違って、ほとんど言及しないのもどうかと思うので、決勝戦記念にこれ。ドイツに住んでいるらしいこのサイトの日本人管理者氏は、ドイツとトルコが決勝戦で当たらなくてほっとしているようだ。サッカーとナショナリズムの結びつきがどれほどのものかはよくわからないが、トルコ系移民と移民排斥論のナショナリストがにらみ合ったりしたら何が起こるかわからないという心配もわからないではない。気のせいかも知れないが、「走」という字の縦棒は上から下までまっすぐ一画で描かれたように見える。

今年も前半戦が終了。

岩館真理子「キララのキ」(集英社)は、頭が混乱した。ここを読まなければ中身がつかめなかった。一応親子姉妹関係はわかったつもりだったのだが、夢と現実の区別やファンタジーのルールなど読書のための基礎力が不足しているのを感じる。



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