土田 健太(つっちん)



研究テーマ:

漆喰仕上げ土壁建築における漆喰面剥離現象の検証と簡易補修技術の提案

研究概要:
土壁工法"水合わせ"により繊維状になった稲わらが,壁土の耐久性(靭性)向上に効果があることは,複数報告されている。しかし,稲わらが発酵分解する過程で滲出する成分(リグニン等)が土壁に与える保水性や防水性に与える効果は,職人らの経験的な知見は存在するものの,その原理は未だ報告されていない。そこで,M1研究では壁土中のリグニン成分が土壁に与える影響を調査する。
1)土壁工法における"水合わせ"の整理 ・水合わせ期間と土壁の耐久性能に関する既往文献の調査(平野氏,浦氏らを中心に)
2)JASS15をはじめとした,左官工法の仕様書から既存の左官工法の調査
3) 既存"水合わせ"材料を用いた物性調査 ・錦見らが2013年に作成した荒壁土を用いてs,スサの性状の調査
4) 稲わらからの滲出液(主にリグニン成分)が壁土に与える影響の調査 ・リグニンに関する基礎的知識の取得 ・稲わらからの滲出液が土壁に与える影響の予想
5) 工業リグニンの左官活用に関する調査
6) リグニン系の添加剤を用いた高耐水壁土の開発
7) 土壁建築の早期補修への有用性を検討 

未利用地産資源を,景観配慮仕上げ材料として活用するための方法として,これまではセメント系固結材を用いた活用を行ってきた。しかしこの活用は,土材料の再利用という観点を無視したものであったと考える。また,仕上げ性能としてこの固結方法は,過剰であると考える。そこで,自然素材を用いた土壁性能向上としてリグニン成分に着目した。リグニン成分が土壁の性能に対して有効ならば,パルプ廃液や混和材などの工業リグニンを用いた簡便な性能向上も可能であると考えられる。 昨今,環境への関心の高まりから,自然素材を用いた土壁や漆喰が住宅や店舗に用いられる例が多い。この研究が,これまでに職人らが行ってきた左官工法の科学的裏付,また更なる改善を工業的に行うための基礎考察になればよいと考える。

特技・趣味:
バイク/キャンプ/ギター

研究成果:
1)土田健太,田村雅紀,未利用地産資源を改良活用した無機系構造・仕上材料の開発,2016年度日本建築学会関東支部研究報告集1,pp.217-220, 2017.3
1)土田健太,未利用地産資源を改良活用した無機系構造・仕上材料の開発,2016年度工学院大学卒業論文報告集1,pp.217-220, 2017.3
2)土田健太,田村雅紀,地産材料を改良活用した左官仕上げの検討,2016年度日本建築仕上学会研究発表論文集,pp.157-160, 2016.10
3)土田健太、田村雅紀喰仕上げ土壁建築における漆喰面剥離現象の検証と簡易補修技術の提案,2018年度 日本建築学会関東支部研究報告集,CD-ROM, 2019.3
4)土田健太,田村雅紀、地域特性を踏まえた地産資源による建築資本改良,その4 未利用資源モルタルの物性評価,2018年度日本建築学会学術講演梗概集,CD-ROM, 2018.9
5)K. Tsuchida, M. Tamura , Development of Structural and Finishing Materials Utilizing Unused Local Resources in the Asian Region, 13th KOREA-JAPAN Joint symposium on Building materials & Construction, Korea Hanbat, 2017.8

6)土田健太,漆喰仕上げ土壁建築における漆喰面剥離現象の検証と簡易補修技術の提案,2018年度 工学院大学修士論文報告集,CD-ROM, 2019.3