鎌田理沙(りさ)



研究テーマ:

遺産的建造物に使用された国内外産天然スレート屋根材の 持続的利用に向けたテクスチャー評価

 

研究概要:

1.研究の目的

スレートは12世紀頃からヨーロッパで一般的な屋根材と して使用されてきた。一方、日本では古来から天然スレー トが硯などに用いられており、屋根材としては明治から大 正、昭和初期にかけて使用され、遺産的建築物として今日 まで残るものが多い。持続可能な天然スレートの供給につ いては、国指定の重要文化財である場合、オーセンティシ ティ(真正性)を確保する必要がある。現存する遺産的建 物のオーセンティシティを確保するためには、天然スレー ト屋根の保存復元は重要な課題となっている。 そこで本研究では、海外産の天然スレート屋根材で代替 可能なものか、材料の観点から判断することを目的とする。 建築外観の印象は構成部材や外装材料に施されている表面 加工などにより変化する2)。そこで本研究では、表面性状 を特徴づけている色・つや・凹凸3) の3 点に着目をした。 研究1 では色感とつや感については、各産地の明度等を数 値化することでそれぞれの違いを明確にする。凹凸感につ いての数値化には、機械的な一断面から得られる2 次元的 情報である表面粗さの測定を行う。また、研究2 と題して 汚れ試験体からの汚れの採取や画像解析を行うことで、耐 久性や表面性状に影響が出るのかの測定を行う

2.研究の方法

今回報告する実験に用いた試料については、表1 に示す 国産から雄勝石(Jo)・登米石(Jt)の2 種類、カナダ産から Glendyne の1 種類(Cg)、スペイン産からVillar del Rey(Sv)・CUPA 10 exellence(Sc)・Del Carmen(Sd)の3種 類、合計6種類を選定した。Del CarmenはNo.1.3まで、 それ以外は1 種類につきNo.1.6 まで用意した。また、研 究2 では埼玉県飯能市での葺替え工事で採取した既存材を 用いた。研究3 では鉱物を含有している試験体を用意した。 国産から雄勝石と登米石、スペイン産からCUPA 10 exellenceを用いたが、雄勝石のみ既存材となっている

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。
(1) 表面の粗さが少なくなると明度L*が多少大きくなり、光沢も 現れることが確認された。

(2) 各試料の明度、彩度を見ると多少のバラつきがあるものの、 明度においては国産の登米石と雄勝石は外国産よりも低い値 であり、彩度において雄勝石はより無彩色に近いものである。

(3) 研究2 では汚れを大まかに4 種類に分類することができた。 場所によって発生しやすい汚れが分かれているため、他のス レートにおいても場所などから汚れの細分化を行うことが可 能と考えられる。

5.研究成果
1)鎌田理沙ほか:建築物のLCM における維持保全と保存的活用ストラテジー その20 天然スレート屋根材の表面粗さと光沢度の評価,日本建築学会学術講演梗 概集 p.439-440 2023.7

2) 鎌田理沙ほか:遺産的建造物に使用された国内外産天然スレート屋根材の持続 的利用に向けたテクスチャー評価,日本建築学会関東支部,2024.3

3)鎌田理沙:遺産的建造物に使用された国内外産天然スレート屋根材の持続 的利用に向けたテクスチャー評価工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3