金澤咲耶子(さくやこ)

 



研究テーマ:

遺産的建造物の維持保全に向けた 国内外産天然スレート屋根材の基礎物性・力学特性の評価

 

研究概要:

1.研究の目的

日本では、古来から天然スレートが硯などに用いられて おり、屋根材としては明治から大正、昭和初期にかけて歴史 的建物に使用されたものが始まりとされている。国内にはス レート葺屋根の文化財建造物が多く現存しているが、国内に おけるスレート産出量は微量であり、定期的な葺き替えが必 要であるスレート屋根においても、葺き替え時に海外産のス レートを用いることが増えている。本研究では、建造物の歴 史的価値やオーセンティシティ(真正性)の確保と、持続可 能な天然スレートの供給を目的とし、国内外産のスレートの 品質・物性評価1).4)を試みた。また。海外産のスレートと 国内産のスレートの物性を比較し、国内産のスレートと併用・ 代替可能か考察する。

2.研究の方法

表1に使用材料を示す。研究1では、調査1として文献調 査を、調査2として国内における天然スレートの採掘場であ る雄勝明神でヒアリングを行なった。研究2では、主に、密 度・曲げ強度・一次共鳴振動数の測定を行なった。密度の計 測は、長さ300mm×幅180mm×厚さ5mm程度の寸法で、産地・ 石種の異なる計6種類の屋根材を使用した。表2に実験要因と水準を示す。曲げ試験体は、長手方向を 長さ方向(d)、幅方向(w)に区別して切断し、計12 種類を使用 した。一次共鳴振動数測定試験では、Sdを除く5種類の屋根 材に対して、3 箇所の打点で曲げ試験体に対して1 箇所の打 点で測定した。

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。
1) 登米石(Jt)は、他の天然スレート屋根材と比べて密度が小 さい。

2) 吸水率評価では、すべての試験体がJIS 規定を満たして おり、Glendyne(Cg)、CUPA 10 Excellence(Sc)では、吸水率 が0.2%を下回っている。

3) Villar del Rey(Sv)の吸水・乾燥速度が他の試験体よりも早 く、Glendyne(Cg)とCUPA 10 Excellence(Sc)の吸水乾燥速 度が低いということが確認できる。

4) 雄勝石(Jo)、 Villar del Rey(Sv)、 CUPA 10 Excellence(Sc)、 Del Carmen(Sd)には、幅方向(w)に切断するより、長さ方 向(d)に切断した方が曲げ強度が出やすいという特性が あり、中でもJoとSdでは明確な差があった。

5) 幅方向に切断した雄勝石(Jo-w)以外は、JIS 規定の曲げ強 度を十分に満たしている。

6) 天然スレート屋根材の共鳴振動数計測時は、屋根材下部 より上部の方が安定した値を計測できる。

7) 屋根材原盤のピーク周波数と曲げ強さには強い正の相関 が見られ、ピーク周波数が高いほど曲げ強度も大きくな ると予測されるが、曲げ試験体のピーク周波数と曲げ強 さには相関はないため、非破壊での品質確認の方法とし ては、屋根材原盤でのピーク周波数評価が有用であるこ とが確認された。

5.研究成果
1)金澤咲耶子ら,その21 天然スレート屋根材の密度・物性調 査 ,2023 年度 日本建築学会研究報告集,pp.441-442,2023.7

2) 金澤咲耶子ら, 遺産的建造物の維持保全に向けた国内外産天然 スレート屋根材の基礎物性・力学特性の評価,日本建築学会関 東支部研究報告書,2024.3

3)金澤咲耶子, 遺産的建造物の維持保全に向けた国内外産天然 スレート屋根材の基礎物性・力学特性の評価工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3