冨田 澪(みお)

 



研究テーマ:

斜壁を有する建物外壁仕上げの都市部施工量実態調査と 下地含水条件を変えた透明樹脂保護試験体の環境要因による劣化影響の検討

 

研究概要:

1.研究の目的

日本では、数多くの建物の外壁にタイルやモルタル仕上げ が使用されてきた。しかし、当該仕上げ材は環境変化に伴い、 本体及び下地の劣化に伴う両者の接着強度が低下することで、 剥離・剥落を生じることがある。一方国内では、道路や隣地 の日当たりを守るための日影規制により建物上部を斜壁とし、 建築基準法上の規則を満たす方法がよく採用されており、斜 壁部における外壁仕上げ材の劣化・剥離が問題となる建物は 数多く存在するといえる。一般に、斜壁は雨水の滞留時間が 長さや、日照によるムーブメントの違いから垂直壁に比べて 劣化しやすいとされ、施工建物で竣工後10 年未満に不具合を 生じるケースも存在している。本研究では、都市部における 実建物での斜壁割合とその材料特性を実態調査し現存する斜 壁が抱えるリスクを検討するとともに、下地含水条件を変え ることで、環境要因による透明塗膜への劣化影響を検討する

2.研究の方法

垂直壁と比べ劣化しやすいとされる斜壁について実態調査 することで斜壁の仕上げ及び施工の重要性を示すことを目的 とする。本調査は、川崎市幸区の約34.5ha を対象に現地及び 航空写真により一軒ずつ判定を行った。対象エリアは図2 の 通りで、A,B の2 エリアに区分けした。土地の選定理由は、 人口密度の高い都市で築年数の経った建物が密集してお り、構造種別の多様度が生じている可能性があると想定し たためである。調査方法は、対象エリアにおける住宅・非住 宅の件数を調査した上で、それぞれの斜壁件数の割合を算出

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。
1)斜壁件数、割合は、用途地域の特性が見られ、対象地区 の全建物調査における斜壁割合は6.4%であり、調査対 象の商業地域では全体の22%の建築物が斜壁を有する。

2)斜壁における仕上げ材の種類は、タイルの割合が高く全 体の43%を占める。

3)斜壁に付着するタイル等の仕上材への各種剥離・剥落保 護対策は経過観察状態にあり、保護対策で安全性を高め た場合、故障率を評価できる可能性がある。

4)斜壁内部への含水影響により仕上材の剥離・剥落が生じ る仕組みの解明は、構工法的な長期的安全対策に繋がる 可能性がある。

5)斜壁は1 年を通し垂直壁よりも紫外線の影響を受ける。

6)サンドモルタルの影響により、下地内部には保温効果が 発揮されるものの、タイル表面つまり塗膜付近には熱だ まりを発生させているといえる。 7)サンドモルタルを用いた試験体では、版の重量、内部水 分量ともに水分量が高くなる

5.研究成果
1)Tomita M, Tamura M, Research on the Actual Condition of Buildings with Diagonal Walls due to Diagonal Regulations,Korea & Japan BMC Symposium,2023.08

2) 冨田澪,田村雅紀、斜線制限により斜壁を有する建築物の外壁仕上げ劣化 想定を踏まえた都市部施工量実態調査建築学会関東支部、2024.3

3)冨田澪、斜線制限により斜壁を有する建築物の外壁仕上げ劣化 想定を踏まえた都市部施工量実態調査 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3