棚橋 瑞貴(みずき)



研究テーマ:

表面加工を施した木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材仕上げによる耐候性技術の検討及び社会実装調査

 

研究概要:

1.研究の目的

近年、低炭素社会の実現が掲げられている。木材は炭素の貯蔵、 二酸化炭素排出削減の効果があり、低炭素化へ貢献している。2010 年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」、2014 年に「木造建築の普及に関する法律」、2021 年に「脱炭素社会の実 現に資する等のための建築物等における木材の利用促進に関する 法律」が施行され、木材の積極的な利用が促進されている。しかし、 木材は気象劣化に弱く、木材を建材として利用する場合、表面補塗 装を行うことが一般的である。アクリルシリコン系透明保護塗料 (以下AS 系塗料)は優れた耐久性があり、透明度の高い塗膜により 木の風合いを外観に表すことが可能である。 研究1~2 で、暴露試験による木口部分のひび割れを確認した。ひ び割れは無塗装にて多く発生し、AS 系塗料を全面塗装した試験体 では確認されていない。また、暴露面のみを1 面塗装した試験体で は、塗装面周辺おいてひび割れが抑制されている。以上より、AS 系 塗料は木口のひび割れ抑制効果が期待できる。木口のひび割れ防止 技術に関して現状、経年劣化によるひび割れについては未だ無い。 よって、AS 系塗料を施した試験体を中心に、経年劣化による木口 部のひび割れ抑制の技術開発の検討を行う

2.研究の方法

木材を用いた近年の建築物における使用部位の調査から、後の建 築物の合理的な維持保全マネジメントの仕方を検討する。また、表 4 の建築を対象に、実際に現地に出向いてヒアリングを行った。 図11 に木材を使用した建築における木材の使用部位の割合を示 す。木材は気象劣化が起こりやすいため、木材を外装に使用するよ り内装に使用する割合が高い。また、床・柵に使用する割合が低い が、これは雨が直接当たり気象劣化を引き起こしやすいからである。 図12 にヒアリングによる木材塗料におけるレーダーチャートを、 写真4 に木材の使用箇所を示す。全体的に紫外線よりも雨の影響が 顕著に確認された。流山市立おおぐろの森小学校では雨による劣化 対策が施され雨掛かりに配慮した設計が行われたため、他2 つに比 べて劣化が抑制されていた。みなみあいづ森と木の情報・活動ステ ーション「きとね」では外壁の木材交換を前提にしたメンテナンス が行われているが、今後は塗料によるメンテナンスを推奨していく。 AS 系塗料は設計者の間でまだ普及しておらず、多くの建物で浸透 性のある化学系塗料が使われていることが現状である。流山市立お おぐろの森小学校では自然由来の塗料が使用されておりAS 系塗料 の採用は難しい状況だが、他2 つの建築では今後AS 系塗料の採用 が進む可能性がある

3.想定される結論とその研究が果たす社会的貢献度

本研究により、以下の知見が得られた。
1) ウレタン系の塗料は、AS 系塗料と同程度の退色抑制効果 を有しており、1 面塗装でも退色の進行を抑制できる。

2) 木口部のコーティングを重点的に施した場合、木口部の塗 膜が薄い方が退色や重量変化の進行が大きい。

3) AS 系透明保護塗料の下塗剤において、水系下塗剤を用い た試験体の退色抑制効果が高い。

4) 塗膜は溝部分に塗膜が引っ張られ、その周辺では膜厚が確 保されず、退色劣化が他の部分より進んでいる。

5) 角部の塗膜は引っ張られ薄膜化するため、角度の小さいピ ン角(90°)を持つ試験体は、ひび割れが進行しやすい。

6) 木裏を暴露すると退色しやすいが、ひび割れは抑制できる。

7) 紫外線による劣化より雨による劣化の方が顕著に見られた。 8) AS 系塗料はまだ設計者の中で定着しておらず、浸透性のあ る保護塗料を使用している建築が多いことが現状である。

5.研究成果
1)棚橋、田村ら木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材 仕上げによる耐久性向上技術に関する研究 その8 保護塗料 による木口部ひび割れの抑制効果,2024 年度 日本建築学会大 会学術講演集, 2024.8

2) 棚橋、田村ら木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材 仕上げによる美観保持等の耐久性向上技術に関する研究 そ の4 木片加工形状を考慮した保護塗料のひび割れ抑制効 果,2024 年度 日本建築学会関東支部研究報告集, 2025

3)棚橋 木質建材へのアクリルシリコン系透明保護塗材 仕上げによる耐久性向上技術に関する研究 工学院大学卒業論文,CD-ROM, 2023.3