DIARY 2002年1月後半



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1月17日(木)

複数の図書館をハシゴして、いくつか疑問点を調べる。成績表も提出。

郵便局でお釣りに2000円札。しかも、貼り紙があってお釣りに2000円札を用いることに対するお詫びまで出ている。そこまでしなければ流通しない新札とはいったい何の意味があったのか考えてみた。(1)印刷機、レジスター、自販機など関連業界の活性化。(2)嫌なお札を早く財布から出そうとする心理を誘発して、消費の拡大を計る。(3)執政の失敗の責任が総理だけに及ぶのを避ける盾となるため、あえて経済企画庁長官が行った失政。(4)日本も将来ユーロを使うときに備えての、国民のあいだでの心理的な下準備の育成。

男同士での「結婚」に踏み切った大臣について伝える報道。男女別姓が問題になっているが、この際ついでに同性で家庭を作る自由についても論じて欲しい。所得税の配偶者控除などがあることを考えれば、同性のカップルは制度的に不利な立場に立たされている。


1月18日(金)

私と同じように日記を書いている同業者を発見。こちら

明日と明後日は、国内で一斉に研究が停滞する日だ。これも、よくこんな日にやるなあと思うが、勉強熱心な学生は他にやることがない(学校に入れてもらえない)ので集まりやすいかも知れない。

ここに「近日発売予定」として予告画像が出ている「ハードディスク・ビデオ・レコーダー」がちょっと気になっている。テレビモニタとパソコンの両方で見たい人にはちょっと良いかも。雪深い地方にあるこの会社の製品はけっこう愛用している。こんなのを使う人が何人いるんだろうというような使い手の限られていそうなボードなど作って、ユーザーの関心にきめ細かく応えるところは立派だ。


1月19日(土)

近所の公園で爆発が起こったり、総武線が遅れたりしていたらしいが、特に問題なく初めての「独立行政法人」大学入試センターの試験が始まった。

どのように受験者が会場に配分されているのかよく知らないが、S県立W高校の現役生がたくさん。たしかこの学校は工学院大学への合格者が多い学校のはずだ。何らかの配慮がなされているのだろうか。それとも、ただ単にこの学校の学生達にとって交通の便が良いところに大学があるからそうなっているだけなのか。

英単語が背中に書かれたトレーナーを着ている受験生が、外国語の時間に注意を受ける。教室はそれほど暖房が効いているという感じではなかったので、上からコートを着ていた。細かいと思われるかも知れないが、マニュアルにも明記されている注意事項の一つだ。「和歌や格言」の書かれた鉛筆は用いないようになどという注意事項は、受験生にも徹底されている。英語のロゴが入ったカバーの消しゴムなら良いのだろうか。

イギリスとアメリカの手話の違いについての英語の文章が一番面白かった。数学では三角形の内心と外心の関係に関する問題が気になったが、(最後の解答はすぐわかるものの)頭の中では図が書けず証明の手順がよくわからない。しかし、こういうことをあまり書いていると本当にちゃんと監督をしていたのかと疑われるのだろう。監督に集中するのはいかに難しいことか、ということだ。


1月20日(日)

教室は結構寒くてコートを着たままの受験生も多い中、半袖のTシャツ1枚(上は)になった女の子の熱の入れようは大したものだと感心。

監督者用のマニュアルは、たいへんすばらしいものだ。熟読すればするほど、そのことがよくわかる。例えば最後にFAQがあって、受験生から耳栓を使いたいと申し出があった場合は、監督者の指示が聞こえなくなる場合があるので認めないでくださいとなっている。これを読んで「耳栓をしている受験生には注意」と思ったら間違いである。あくまでも申し出があった場合のことで、耳栓をしている受験生がいたら注意しろとは書いていない。なぜか? 大学入試センターの心配は、受験生から文句がくることにあるからだ。自分で勝手に耳栓をして、注意を聞き落とすのは勝手である。しかし、監督者が耳栓の使用を積極的に認めた場合、受験生が監督者の指示を聞き落とした責任が監督者に及ぶ可能性がある。したがって、申し出があったとき、それを認めなければ良いと言うことになる。いわばこの注意事項は、受験生に責任を追及されるような行為はしないようにという大学入試センターの気持ちを、具体的な事例で示したものと読むべきである。単なる「耳栓」についての注意事項ではないことが、熟読によって見えてくる。また、申し出があった場合にのみ応答するように監督者に言い含めることで、逆に受験生の耳栓利用の自由を強制的に奪うことのないように心掛けてもいる。もし耳栓を強制的にはずさせられたため受験に集中できなかったという文句があった場合も、入試センターとしてはそのようなことをするように監督者に指示を出してはいないとして、行為者に責任を押しつけることができるからだ。官僚による優れた作文とはこのようなものを言うのかと感心。

総合理科では「ドラえもん」の道具に関係する出題があった。こういうのは、新聞が好きなので取り上げられるかも知れないと思ったが、科目がマイナーなのでそうでもないかも。どうせなら道具を巡って会話する2人を「のび太」と「しずか」にすれば良いのにと思ったが、そうはいかないのだろう。また、この会話文には、性別役割分担を固定しないような意図的配慮が感じられた。「総合理科」にしては上出来だ。


1月21日(月)

最後の定期試験問題の作成と提出。会議。ワープロ教室(!?)。会議。新年会。

今年卒業の(つもりの)学生が、すでに先々週終わった試験の成績を聞きに来た。喜んで帰っていった。

この科目の採点名簿によって、前期の試験でただ一人ほぼ完璧な答案を書いていた学生も、歴史が大好きなのでもっと詳しく知りたいといって質問に来た学生も、すでに大学に籍を置いていないことを知った。4月に後期科目まで登録するため名簿に名前は記されているが、後期になってから一度も授業には出ておらず、学籍を失った印がついている。二人とも1年生。別の道が本人にとってより良いものであるなら、それが良かったのだろうと思う。

新年会では、もうすぐ定年になる先生方に囲まれて「初めて短大卒の女子職員が工学院大学に就職した時の話」(それまではすべて高卒であったらしい)や「勤続45年で表彰されることになる最初の教員の話」(67歳が定年なので原理的に最長)を聞く。

ISO14001のシールを作って学校の封筒に貼るなどというのは、資源の無駄遣いで本来の趣旨に反するような気がする。


1月22日(火)

先日実家に帰った際に、東京人への土産物を探しに近所のスーパーに行った。東京では「お好みソース 」以外見ないおたふくの商品が他にもある。その中から「カロリーオフ」を選んで購入。ここで調べてみると、「カレーソース」という味の想像できないものなど、他にもいろいろあることがあって驚きだ。「ソースカツ丼ソース」と「トンカツソース」と「カツレツソース」が区別されているのも、私の理解を超えている。

丸美屋の「すきやきふりかけ」も発見した。これも東京では見ない(東京でもよくあるとの調査結果が寄せられました 2001/01/25)。まだあったんだと驚く。さらにネット上で調べると数年前に復刻版が出たことを知った。富士山を背景にした牧場の風景の描かれたパッケージがそのまま使われているだけでなく、「エイトマンシール付」とあるのはなかなか素敵だ。

レポートの添削と原稿の校正。


1月23日(水)

最近宣伝またはウィルスと見られる中国からのメールがたくさん来る。ホームページに公開しているアドレス宛になっているので、ウェブ上からアドレスを採取して勝手にメールを送っているものと思われる。中国からと見られるのは、メールアドレスの国名がcnになっているからだ。

ウィルスの疑いの濃いメールの1つは、添付ファイルがあって、本文中には是非その添付ファイルを見るようにとの指示が英語で書いてあるものだ。もちろんその添付ファイルは怖くて開けない。

そう言えば、『噂の真相』の裏表紙がとうとうビレッジセンターじゃなくなった。先月まで、10年前くらい前に出てかつて愛用した覚えのあるMS-Dos上のソフトウェア「Vz Editor」の広告だったのだが、とうとう終わってしまった。PC-9800シリーズにも対応しているとか、5インチフロッピーのもあるとか、10年前の広告をそのまま載せていた、ほとんど意味のない化石のような広告だった。いつまで続くのかと思っていたので残念だ。

よくよくこの会社の製品紹介の頁を見てみると、まだ「Vz Editor」も販売しているようだ。しかし、宣伝文句に「Windows3.1の登場により、パソコンの環境は大きく変わろうとしています」とある。いったいいつ書いたんだろう。


1月24日(木)

朝日によれば、植物の遺伝子を組み込んだブタが日本で作られたそうだ。植物性タンパク質が欲しければ植物製品を摂れば良いのにと思わないでもない。もちろん、このブタをそのまま実用化しようというわけではなく、植物の遺伝子が動物細胞で作用する(しかも世代を経て遺伝子が伝わる)というのが重要なことなのだろうが、何となく健康に良い豚肉ができそうなイメージも伝わってくる。

新宿で試験が2時間。試験時に返却するレポートをすべて見終わったのは今朝であった。まだ別の授業のレポートがある。

この授業の感想で一番驚いたのは、学生の名前を憶える先生は大学に入って初めてだという3年生のものだった。4年生になると研究室に入って名前どころか私生活の細部まで知られることだってあるというのに。


1月25日(金)

科学技術政策研究所科学技術に関する意識調査を見た。面白いのは、基本的な理科の知識に対する質問の結果(科学技術基礎的概念の理解度)だ。「男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子である」というのは1.5秒ほど意味がわからなかったし、ビッグバンはすでに「定説」なのかどうか疑問だが、よく考えられた質問だと思う。日本は正答率が低いと書いてあるが、誤答率はどうなんだろう。「わからない」が多いのでは? ほぼ二者択一なのだから、正答率だけ比較しても無意味だ。もし誤答率も低ければ、日本の回答者の奥ゆかしさや慎重さを示していることになる。いずれにしても、調査者が日本人の理科離れ(興味がないし知識もない)に危機感を持っていることは見て取れる。

提出締め切り前日にメールでレポートの課題内容や締め切り(!)を質問してくるというのは、要領が良いのか悪いのかよくわからない。

どうもふくらはぎが痛いと思ったが、昨日階段を16階分駈け降りたからに違いない。


1月26日(土)

どうしてそんなにと思うほど好きな人はとことん好きなフランスの社会学者ピエール・ブルデューが亡くなったらしい。今頃多くの日本のファンが追悼文を自らの心の中で書いているに違いない。と思ったら、ネット上で一つ発見。ここ

この著者の日記を少し読んだ。けっこう好きかも知れない。

国立大学の多くが、合併の方針を発表しているらしい。だいたい山梨大学+山梨医大や筑波大学+図書館情報大学のような、総合大学+単科大学という吸収合併(といって良いのかどうかわからないが)型のようだが、そうでないものもある。しかし、多くのことは学部が決定権を持っている。合併しても名目がかわるだけかも知れない。管理職の数だって減らない。例えば、先の例で言えば山梨医大の学長が山梨大学医学部の学部長になるだけで、それ以外には何も変えないということさえ可能である。本当に国立大学の組織をリストラしたいのなら、学部の数を減らすことだ。それが良いことかどうかは別だが。


1月27日(日)

某大学校の助手公募(研究者データベースに出ているやつ)で、応募資格「非喫煙者に限る」を発見。いったいどうしてだろうか。上司が嫌煙家なのか、学内が禁煙なのか、あるいは研究室の研究テーマが肺ガンなのか、クリーンルームでの作業が必要なのか。(「大学校」なんて数少ないからデータベースの検索ですぐわかるぞ。)

こういう応募資格って、ありなんだろうか。「非飲酒者」ならどうなのか。飲酒だって人に迷惑だし、喫煙者でも決まった場所で吸うだけなら人に迷惑をかけない。「コーヒーを飲まない人」は? 採用の際の参考にするならわかるが、応募条件に入れるとは何か特別な事情があるとしか思えない。


1月28日(月)

八王子で試験。出席率が驚くほど高い。レポート提出でふるいにかけると、だいたい登録者の7割くらいしか試験を受けないはずなのだが、今回の試験では9割近い出席率だ。授業の出席率はそんなに高くない。ということは試験のできは・・・。特に1限!

といっても2年生の必修科目なのに、3年生専用の受験室ができるほどたくさん落とす学生がいて「1回では通らない」と噂される某先生ほどではないだろう。

90分の試験を最後までねばった学生は計7人。そのうち、6人が環境化学工学科または応用化学科。なんとなく、電気、機械関係の学生はあっさりしていて、化学系は粘りがあるという印象が日頃からあったのだが、それが数字の上でも確かめられた?

初めて学内で「15週問題」について議論されるのを聞いた。「15週問題」というのは、大学の半年間の授業は本当は15週間やることになっている(のに実際はそうなっていない)、というこれまで見逃されてきたことを敢えて質そうという問題提起のことである。近頃文部科学省がこの点にうるさくなっていて「授業は15回やることになってますよね」とチェックを入れて圧力をかけてくることがあると聞く。しかし、実際に15週きっちり授業をやるようになってしまった某私立大学(名前は敢えて秘す)に勤める知人の教育学者によれば、こういうこと(杓子定規に文部科学省の言うことをきくこと)は「偏差値の低いところから始まるんだよなあ」とのことだった。ここは胸を張って、私立大学には15週やる余裕はないと言うべきか?


1月29日(火)

ちょっと寒い部屋でFD(ファカルティ・ディベロップメント=教育改善)関連の学内シンポジウム。

工学院大学では(そして似たような職場は多いと思うが)、何事もmale,Japanese,scientist(男で日本人で理系)が標準だ。私はscientistじゃないので、障害が1つ。200名近くいる大学教員の中で、female,Japanese,non-scientist(2名)とmale,non-Japanese,non-scientist(1名)の計3名が二重苦。female,non-Japaneseはまだ該当者がない。

昨日のこと。成績表をつけていて発見した未登録の履修者について教務課に相談したところ、そういう学生は呼び出して脅かした方が本人のためだとアドバイスされ、電話番号を渡された。仕方ないので教務課で登録のし直しをするようにと学校から下宿(?)に連絡を入れて、その後他の用事を済ませて新宿駅に向かっていたところ、郵便局のATMで当該学生を発見。今新宿に来たところだというので、一緒に教務課に行く。学生が教務課からもらった書類を書いて教員に渡し、それに教員が印鑑を押して学生が受け取り、教務課に提出するという作業が瞬時に完成した。「印鑑もらいにいつどこに行けば良いか」というメールを受け取って返答するのは面倒だからね。

郵便局のものは郵便局に。17日におつりとして入手した2000円札を振り込みに使用した。そんなに使いたいのなら、返してあげよう。申し訳ないとわかっているなら、2000円札なんて使わなければ良いのに。人に嫌がられるとわかっていることは、しちゃいけないって習ってないのかな?


1月30日(水)

交通費の計算書類を学校に出したら、運賃を計算する某ソフトの結果と違うという連絡があった。複数の時刻表で確かめたところ、やはりこちらが正しいとわかり再連絡。納得してもらった。「コンピュータを100%信じてはいけないと言う教訓ですね」と言われた。世間の計算機に対する期待度や信頼性は、計算機の設定に悩まされることの多かった半可通で疑り深い性格を要求される職業の私が考えるより、ずっと高いのかも知れない。

弘済出版社が交通新聞社に吸収合併されたため、交通案内社と紛らわしくなった。書店では両者の時刻表が並べて売られている。マニアでなければ、どちらを買っても同じだと思うのだが。

連日大学で来年度のシラバス形式の話ばかり。うーん。

大学の成績評価については全国的に、例えば「試験60%、レポート40%」というように評価の内訳を明記するのが非常に望ましいと言われるようになってきた。説明責任とか、評価の公正さという点では確かにそうだろう。しかし、試験とレポートの点数をただ加えて出すわけではないということもあるだろうし、受講人数によって評価方法を変えることもあるだろう。それが柔軟な対応というものだ。それとも、評価項目Xiの評価点をxi、受講人数をn人としたさいの、点数を示す関数f(n, x1, x2, x3, ....xi...,)の式を書き出せということだろうか。不確定要素があるさいに確率変数を用いてもよいのか?


1月31日(木)

この時期、入試の志願者が今どのくらいの人数なのか、毎日変化していくその数字を教職員全員が気にしている。インターネットでも出願可能。詳しくはこちらで。

大学時代の後輩K氏の壮行会。同時多発テロの国にいく社員は、できるだけ同じ飛行機を使わないそうだ。総務は避けるべき航空会社名も具体的に指摘したという。

自称「引きこもり」G氏は電車に乗るのが数カ月ぶりらしい。パスネットを知らない。自動改札の「2枚重ねて通せます」も当然意味がわからなかった。

10年ぶりに井の頭線に乗ったA氏が感動したのは、神泉駅の変わりようだ。確かに以前は、上りホームが無人改札だったし、踏切は閉まっていても勝手に人がわたるし、東京電力の会社員が殺されたところのような古いアパートがあるし、周りはラブホテルだらけだし、後ろ2両はドアが開かないし、というたいへんな駅だった。今では駅が大きくきれいになったうえ、駅前も明るくなっている。



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