ここには、イラストが透けて入る。(空白スペース)
|
音楽室の扉が少し開いていた。優雅で可憐な、どこか懐っこいピアノの調べが聞こえる。ちょっとお邪魔して良いだろうか? 「イディティシダ。(入って。)」 その少女は笑顔だけこちらに向けて、演奏を続けながらロシア語で手招いた。そう、この少女はロシア人、そして今やこの少女の名を知らない音楽愛好家はいない、超一流のピアニストだ。 「あと2分待ってネ、この曲が終わるかラ。」 流暢な日本語で良かった。生憎ロシア語は喋れない。 今演奏しているのは、ベートーヴェンの第8ピアノ奏鳴曲「悲愴」の第二楽章。イスキーのお気に入りなのだそうだ。ロシア人が日本でドイツ音楽を奏でる、何と国際色豊かなのだろうか。 「練習は1日8時間ぐらいしたいのヨ。でもネ、いろいろここのお仕事もあるでショ? だから、手の練習は4時間デ、後は頭で鳴(慣)らしてるのヨ。」 流石に超一流ともなると、練習量が半端ではない。 「体のメンテも重要なのヨ。おん先生がちゃんとケアしてくれるから、私助かってるのヨ。ヤボザダリン(感謝)!」 時折ロシア語を混ぜて、静かに明るく喋る姿を見ていると、大柄なのにお人形さんの様に見えてくる。ピアノ演奏を任せたよ。 |
|
|
ここには、イラストが透けて入る。(空白スペース)
|