ここには、イラストが透けて入る。(空白スペース)
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歴史あるヨーロッパのクラシック音楽演奏家の登竜門、ピアノ部門の決勝大会が今正に行われていた。舞台では、最後の演奏者、まだ小さい少女が、不思議な雰囲気を作っていた。オーケストラをバックに堂々と、しかし、一つ一つの音を丁寧に、繊細に、まるで自分の細胞であるかの様に扱い、そしてそれらを遠くの誰か大切な人に伝えようとしている、甘く、熱く、そして切ない雰囲気だった。ピアノの音色がオーケストラの音色と呼応し、オーケストラの音がピアノの音を後押しする。競争しながら協奏する音が、演奏者の気持ちを完璧に表現した。 「これが小学生の演奏なのか!?」 聴衆は最初驚き、そしていつの間にか彼女が小学生である事を忘れ去っていた。 演奏が終わると、暫くの沈黙の後、割れんばかりの拍手が会場を覆った。オーケストラ演奏者達も拍手している。少女は少し放心している様だった。暫く、大切な恋人でも探す様に顔を左右に振っていたが、やがて正気に戻り。ニッコリ笑い、そして立ち上がった。嵐の様な拍手の中、少女は深々とお辞儀をした。 「今年の優勝演奏者は、イスキー!」 とんでもない快挙だった。聴衆のみならず、二位以下の挑戦者達も、納得した歓迎の大喝采が起きた。 「**これで日本に行ける! やっと会える!」 最初に誰かの名を呼んだ様だったが、大歓声にかき消されてしまった。 |
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ここには、イラストが透けて入る。(空白スペース)
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