DIARY 2001年1月後半



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1月16日(火)

東京外かく環状道路の未開通部分が地下式でできるかも知れないと言う。練馬区大泉〜世田谷区用賀なんて、計画時の30年前ならともかく、今は土地も高騰して建物だらけだろう。地上に作れるとはとても思えない。「外かく」という名前も時代遅れだ。

定期試験の採点。久しぶりにやるとなかなか進まない。

血液型人間学のページを発見した。ここです。さっそく「お気に入り」の「とんでも」ディレクトリに登録。でも世界の血液型分布は面白いかも知れない。


1月17日(水)

やっと勁草書房に原稿を送った。新宿郵便局で「内容証明」送付の現場を生まれて初めて目撃。

組合専従職員の方と組合紙のことで話し合い。予算のオーバー分について課程事務職員の方と相談。教務課職員の方に来週木曜分の試験問題提出。その他諸々細かい事務的仕事の多い日。

2部「科学思想B」の試験。この授業に出ている4年生で、病院の建築について卒論で調べるからとフーコーの本を借りていった学生が、試験の後持ってくるのを忘れたと言って来た。返さないと卒業できないかもよ(笑)

「やむをえない」と書けなくて「やむおえない」と書く学生がけっこう存在する。発音の違いはないので、指摘されることも少ないのだろう。そのうち全面的に置き換わってしまうかもしれない。


1月18日(木)

教育学者の竹内洋氏が雑誌『中央公論』に連載している「大学という病」の2月号分によれば、旧制の時代には大学の授業の半分近くが休講というのがあたりまえであったらしい。特に忙しい先生ほど休講が多く、それがその先生の地位を示していたということだ。授業時間をきちんとこなすことが重視される現在では信じられない。

同じ雑誌には森岡正博「日本の『脳死』法は世界の最先端」も載っているのだが、読み忘れた。

この時期、授業の教科書に使えるかどうかという観点から本を見てしまう。左巻健男他著『素顔の科学誌』(東京書籍)は、とてもわかりやすい本だ。でも、専門家的には、「ここをこんなふうに言い切って良いのかな」と思ってしまうところもある。井山弘幸、金森修『現代科学論 (ワ−ドマップ) 科学をとらえ直そう』(新曜社)の方は、とてもコンパクトに重要なことがまとめられていて勉強になる本だが、記述があっさりしすぎているので初学者には少し難しいかも。


1月19日(金)

警察官の制服がYahoo!オークションに出ていたと話題になっているが、もっとチェックが甘かった頃にはパトカーの出品があったのを記憶している。

チェックを入れようにもあんなに出品があれば追いつかない。どう見ても違法なものや、どう考えても偽物というのが混ざっている。Yahoo!では採算を考えたらそれらをチェックするだけの人を配置するのは無駄だと思っているのだろう。セキュリティや公序良俗まで配慮としようとすればそんなに儲けになる商売ではないと思う。それでも将来の利益が見込まれて(一時期ほどではないが)法外な株価になっているということは、Yahoo!の無責任さが評価されているということでもある。

Yahoo!の株価は、ブラウザが最初に開くページとしてYahoo!を登録している人に支えられているのかも知れない。そういう人はけっこういるようだ。家族が設定を行ったパソコンを使ってインターネットをしているという学生と話をしていて、(まるで「インターネット」という本の目次であるかのように)Yahoo!のページが自然に最初に出てくるものだと思っていて驚いたことがあった。

そういえば、自分もインターネット初心者のパソコンのブラウザの設定をしたとき、最初に開くページをYahoo! Japanにしたことを思い出した。


1月20日(土)

またサーバが落ちていたようです。18日朝から19日夕方までアクセスしてくれた方、ごめんなさい。今回は予告がなかったので何かの事故だと思います。

でも、入試情報などの重要な告知が掲載されている新宿のサーバは動いていた。八王子は冷遇されているのか? ちょっと新宿の研究室にサーバを立てたくなった。たぶんしないけど。

昨年は出生数がわずかながらアップしたらしい。大学産業が不況から抜け出すのにあと18年かかるということだ。減少する18歳人口の中、大学は新規需要の開拓先として社会人と外国人をねらっている。工学院大学でも2部(夜間)の開始時刻を来年度から繰り下げることになった。


1月21日(日)

電話勧誘で有名な不動産業者M和地所から、夜の9時台に電話がかかってきた。

一時期ナンバーディスプレイ(相手の電話番号が表示されるサービス)を頼んでいたが、結局どこからかかってきたのかわからない電話でもとってしまうのでやめた。ちなみに、番号非通知の電話にも何度か出たが、ことごとく勧誘だった。

ただし、ナンバーディスプレイを解約した今でも、パソコンからダイアルアップルータの「システムログ」というのを表示させると、通話記録が電話番号付きで残っている。(ちょっと変な気がするが、そういうものなのだろうか?)M和地所はやはり非通知らしくログに番号が出ていなかった。

今年はラッキーなことにセンター試験の監督に当たらなかった。これがまわってくると、監督者のための説明会に出なければならないし、2日間朝から晩まで拘束される。必ず大学教員がやらなければならないことになっているので、この2日間は日本の学問が足踏みすると言われるのも頷ける。

北海道暮らしを経験したことのある2人に東京の寒さとの違いを聞いたら。一人は「東京は冬でもコートが要らない」と強がった。もう一人は「札幌の方が湿度が高いので暖かく感じる」と気象学的な裏付けのなさそうなことを言った。どちらも嘘ではないかと疑っている。


1月22日(月)

新宿校舎のエレベータで八王子の授業に出ている学生とバッタリ。たった今八王子の授業の成績を新宿教務課に提出したばかり。昨日採点したばかりなので試験のできは覚えており、それに言及したくなったが、彼が落ち込むといけないと思ってやめておく。

新年会。共通課程の教員全体での飲み会は新宿西口のビルの中が多い。しかし、いまだにいくつもある高層ビルの名前がほとんど覚えられない。人は顔や格好や雰囲気で見分けられるが、ビルはいったいどこで見分けるのか誰か教えて欲しい。

アルコールにはほとんど手をつけない。年輩の先生に、飲めないのに来るとはエライと変な誉められ方をする。


1月23日(火)

昨日新年会をやった店の靴箱の上には目覚まし時計が置いてあった。いったいどのような目的で使用されているのかとても気になる。調理時間を計るならタイマーを使うだろう。毎日誰かが宿泊しているのだろうか。

会社を退職した年金生活者らしき男性が、自分の在籍していた会社の社債に投資しようと決意するというN村証券のTVCMを見たが、これはリスクの分散という観点からは望ましくないのではないかと心配になった。会社あるいはその業界がダメになると年金の先行きも怪しくなると思うのだが。


1月24日(水)

有理さんという名前の人と会った。名前をつけた親(?)は、数学者か毛沢東主義者(ここの最下部参照)のどちらかに違いない。ちなみに男性。そういえば、物理学者の親に「量子」と命名された人もいた。

組合の仕事、試験の採点、学会の仕事などの用事をちょうど片づけたところ、学生が現れる。何というタイミングの良さだ。明日の試験のことを聞きに来たが、関係ない話の方をたくさんしていった。やっとインターネットを始めたが、それは浜崎あゆみのファンクラブに入るためだということだ。定期試験中はなかなか仕事が進まない・・。


1月25日(木)

鳥海書房から送られてきた目録を電車の中で読む。いろいろと欲しい本はあるが、購入資金と置き場所に欠ける。

先日しばらくぶりに江古田の古書店「落穂舎」に行った。「哲学、思想、宗教系の本高く買います」と書いてあるが、あまり本が変わっていない。良い本は多いし、薄いカバーをかけて綺麗にしてあるのだが、なかなか売れていないようだ。経営状態は大丈夫だろうか。(斜向かいにはブックオフがある!)でも、ここはこの近くに居住していた学生時代、開店を目撃した記憶があるので、もう15年以上は続いているはず。そのころは、たしか店先にネコ(たぶん老ネコ)の入った段ボールが置いてあった。

「科学と社会」の試験。登録者数も(私の授業にしては)比較的少なく、すでに2本のレポートをこなした学生だけが残っているので、小教室で少人数のこぢんまりとした試験。「この授業を受けて、何のために勉強しているのかやっとわかった。3年前にこの授業を受けていればよかった」という感想の添えてある3年生の答案があった。授業最後のアンケートでも似たような感想があった。学びの中身より先に学びの意味を教える教育が必要ということだろうか。自我の確立まで面倒を見なければならないとは大変だ。でも、大学or工学部というのがどういう場所なのか、情報不足で高校生はよくわかっていないのは確かだろう。


1月26日(金)

有明海の海苔被害。因果関係があるとわかれば水門を開けても良いと言っている人もいるが、こういう複雑な問題で因果関係が明確になることはない。問題はわからないなりに何をすべきかということだ。

夜に停電。一瞬ブレーカーが落ちたのかと思うが、窓から見える他の建物も真っ暗だ。近所中明かりが消えている。我が家はすぐに復旧したが、ずいぶん時間のかかったところもあったようだ。不意に停電になった集合住宅からは、人が次々に出てきてうろうろする様を見ることができる。その様子を上から見下ろせば、蟻の巣に意地悪をした幼い日か、創造主を擬似体験できるちょっと古いシミュレーションゲーム「ポピュラス」で相手の居住地に天罰を加えたときの気分だ。

非常勤先で定期試験。同じ時間に教えるK氏と、いつもはなぜか会わないのに今日は顔を合わせた。K氏がもうすぐ1年になる勤務先で一番頭を悩ませている仕事は、学科の予算を使い切ることらしい。別に氏の勤める某私立大学が特別潤沢な資金をもっているというわけではなく、予算額が自分の勤める前から決まっていること、予算執行の手続きが複雑なことが原因のようだ。

一点あたりの値段が高額になる商品を購入するとその際の手続きが面倒なので、「自分で組み立てるパソコンを部品ごとに買う」という技を思いついた人がいたらしい。というのも、あらかじめそんなことはしないよう釘をさされているからだ。


1月27日(土)

大雪だ。といっても都心数センチ。郊外でもせいぜい10センチ。こういう日の試験には遅刻者が続出。

試験を受けられない理由にはいろいろある。病気はよくあるが、たしか「田舎で姉の結婚式」とか「芸能活動」というのもあった。

風邪で試験が受けられないがどうしたら良いかと、娘の代わりに母親が電話をしてきたのは今回が初めての経験だ。

出生時の体重が重いほど認知能力が優れていると述べた論文があると朝日の報道。原文は こちら 。興味深いようだが、当たり前の結果のようにも思える。1946年3月のある1週間に生まれた人々という年齢の上で均質な集団を追跡調査しているが、生まれたときの体重はおなかの中にいた日数と関係あるだろうから、実質的には「年齢」ですでに差がついているのかも知れない。


1月28日(日)

新大久保の線路転落死は、過剰に人員を削減したJRの無理なリストラに原因があるという批判は誰もしないのだろうか。昔と違ってホームに駅員さんがいないのは確かに危ない。時々そう思う。それに対して、池袋駅地下のオレンジカード売りの人は、たいていとても暇そうにしている。

入試出願情報が工学院大学の入試情報のページにある。毎日更新される。これは、志願先を検討する受験生のためなのだろうが、実は自分の生活を心配する大学教職員も熱心に見ている。


1月29日(月)

組合関係の印刷物を作る。職員の人といっしょに動いて学内を少々探検することになった。まだまだ足を踏み入れていない場所はたくさんある。きっと最後まで行くことのない場所がたくさんあるのだろう。だいたいビルの地下が何階まであるのかもよく知らない。

束になった紙を1枚ずつ取って次々に折っていく機械(しかも何通りもの折り方が指定できる)は、初めて使った。事務機器販売の会社が出している分厚いカタログなど読むとわかるが、事務用品の世界はなかなか奥が深いものだ。

学内印刷室からは排除されつつあり、生協職員も認める人気のなさの「100%再生紙」を先日生協で注文して購入した。ISO14001には何がふさわしい? さくら銀行は、印刷用紙をすべて再生紙にしたらしい。

香川知晶『生命倫理の成立』はとても面白い本だ。生命倫理の歴史などの勉強になる。

ヒトクローン技術を手がけようとしている医師は、それを「不妊治療」と呼んでいるらしい。こういう言い方には当然違和感を覚えるが、「人工授精」が始まったときから、(本来の意味で)「治療」するのではなく別の(人工的な)手段で子供を作ることを「治療」と呼んできたのだから、正当な呼称のようにも思える。


1月30日(火)

近所の古い建物(今度はアパート)がまた一つつぶれた。ずいぶん遅れた地上げの波というより、古い建築物がどれもちょうど建て替え時になったということのようだ。今度はどこだろうかと考えてしまう。雨戸の閉まりっぱなしの部屋がいくつもあるアパートや、庭の荒れている家が候補だ。

更地になったスペースは、土曜日に降った雪がまだきれいに残っている。

やっと試験の採点が終わりかけている。意外に時間がかかった。


1月31日(水)

研究業績リスト等を学校に提出。これは、毎年求められるもので、ちゃんと研究しているかどうか学校がチェックし、また必要とあらば外部に公開するためのものだろう。私は、ここですべて公開している。HP参照と書いて出そうとも思ったが、素直に空欄を埋 めた。

研究した跡が残っていないからといって別にクビになるわけではない(と思う、少なくともうちの大学は・・・)。しかし、「なし」などと書くようにはなりたくないと皆(とは言わないまでもほとんど)が思っている。プライドが自分のノルマを増やす。考えてみれば不思議な世界だ。

近所の商店街でも本屋、古本屋、銀行キャッシュコーナなどがつぶれている。新しくできるのは、薬局薬店、100円ショップ、それに「携帯電話屋」だ。特に、薬屋に関しては、もともと100mくらい離れて古い店が2軒あったが、新しく安売り系2店が両者のあいだに、しかも向かい合って開店したという超激戦状態。

通信関連業種だけは絶好調なのだろうか。数年前はたしかにペラペラで驚かされた(けど最近少し厚くなってきた)景気回復のバロメータ=アルバイト情報誌で、近頃やたらとたくさん募集されているのは「マイラインの勧誘」だそうだ。

授業中アルバイト情報誌を机の上に出している学生がいる。むこうは何を読んでいるのかわからないだろうと思っているのかもしれないが、装丁もページの作りも創刊(たしか1982年頃)以来あまり変わっていない『フロムA』など遠くからでも一目で見抜ける。



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