2014年 生物学史研究会
- 原子力展示をめぐる科学と政治
- 今回の生物学史研究会は「原子力展示をめぐる科学と
政治」というテーマで、金子淳さん、五味渕典嗣さんに報告を、中尾麻伊香さんにコメントをおこなっていただきます。研究会・懇親会ともに会員・非会員にかかわらずどなたでも参加可能ですので、みなさまふるってご参加ください。 - 日時:4月26日(土) 午後3:00〜6:00
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- タイムスケジュール:
15:00-15:05 はじめに:発表者の紹介・研究会テーマの説明
15:05-15:50 発表1:金子淳
15:50-16:35 発表2:五味渕典嗣
16:35-16:55 休憩
16:55-17:15 ディスカッション1:中尾麻伊香のコメントとリプライ
17:15-18:00 ディスカッション2:フロアからのコメント・質疑応答
*研究会終了後、18:00から懇親会を行います。会費は3000円前後を予定しています。
- 発表1:金子淳(桜美林大学人文学系)「原子力をめぐる展示とコミュニケーション--博物館における負の記憶の展示との関連から」
- [内容紹介]
原子力発電所には、原子力発電の推進を目的としたPR施設(原発PR館)が併設されている。原発PR館では、3.11以後の逆風に「屈する」ことなく、模型、説明パネル、映像、写真などの展示によって、原子力発電の有効性や正当性を訴える活動を粛々と継続している。ここで表象されているのは、3.11以前から受け継がれている「原子力の夢」であり、原発を推進する電力会社の「欲望」である。しかも、総括原価方式により巨額の運営費が確保されるため、その「欲望」は高い純度で結晶化され得る。本報告では、浜岡原発に併設される浜岡原子力館を事例に、展示というメディアを通して、電力会社の描く「原子力の夢」がどのように表象され、それがどのような手法によりいかなるコミュニケーションを志向していたのかを検討する。また、負の側面を抱え込む原子力の展示を多角的に捉えるため、戦争や公害などの展示と比較しながら、博物館において負の記憶がどのように表象されるのか、あわせて考えたい。
- [参考文献]
金子淳「展示される「原子力の夢」──浜岡原子力館における「原子力コミュニケーション」とその表象」(『静岡大学生涯学習教育研究』15、2013年)
金子淳「公害展示という沈黙──四日市公害の記憶とその表象をめぐって」(『静岡大学生涯学習教育研究』14、2012年)
金子淳「戦争資料のリアリティ──モノを媒介とした戦争体験の継承をめぐって」(『岩波講座 アジア太平洋戦争 第6巻 日常生活の中の総力戦』岩波書店、2006年)
HP:http://gproweb1.obirin.ac.jp/obuhp/KgApp?kyoinId=ymdgygykggy
- 発表2:五味渕典嗣(大妻女子大学文学部)「核を見せる文法――核関連広報PR施設をめぐって」
- [内容紹介]
本間龍『原発広告』(亜紀書房、2013)は、核関連広告は「戦後もっとも成功したプロパガンダなのではないか」と言っている。なるほど新聞や雑誌、テレビを通じて流通したそれらの広告が、3.11原発震災でその破綻が露呈された〈安全神話〉の伝播と拡散に大きな役割を果たしてきたことは確実である。そして、日本列島の核関連施設とセットのように立地している広報PRセンターは、そうした広告の内容と連動しつつ、まさに核の安全性をアピールし、〈啓蒙〉する空間として作られてきた。 ところで、いわゆる〈安全神話〉が一連のイメージの集積の結果であり、ある種のストーリーの信憑性にかかわる問題だとするなら、わたしのような文学・文化の研究者がその検討に参加する余地も少しはあるだろう。いくつかの核関連施設を見学した体験と、関連業界雑誌の情宣関係記事の分析を通じて、現在の核の〈見せ方/見せられ方〉について、わたしの立場から考えてみたい。
- [参考文献]
今西憲之+週刊朝日取材班『原子力ムラの陰謀』(朝日新聞出版、2013)
本間龍『原発広告』(亜紀書房、2013)
- 身体をめぐる言説と技術
- 今回の生物学史研究会は「身体をめぐる言説と技術」と題して、山田理絵さんと佐藤桃子さんに報告と今後の研究の構想をお話しいただき、それらに対して武藤香織さんからのコメントをいただきます。会員・非会員にかかわらずどなたでもご参加いただけますので、みなさまふるってご参加ください。
- 日時:5月10日(土) 午後3:00〜6:00
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- タイムスケジュール:
15:00-15:05 はじめに:発表者の紹介・研究会テーマの説明
15:05-15:50 発表1:山田 理絵
15:50-16:35 発表2:佐藤 桃子
16:35-16:55 休憩
16:55-17:15 コメントとリプライ:武藤 香織(東京大学 医科学研究所 教授)
17:15-18:00 全体でのディスカッション
*研究会終了後、18:00から懇親会を行います。会費は3000円前後を予定しています。
- 発表1:山田 理絵(東京大学大学院 総合文化研究科 博士後期課程 1年)
「摂食障害はどのように語られてきたのか―新聞記事の歴史社会学的考察」
[内容紹介]
2010年に「摂食障害センター設立準備委員会」が設置され、同センターの設立を求めて約24000筆もの署名が寄せられた。摂食障害は、日本で「難病」に指定され、国家レベルでの研究が進められているが未だにその問題解決には至っていない。
本報告では<近・現代日本で摂食障害がどのように語られてきたのか>ということを、新聞を分析資料とし、歴史社会学的な視座から描き出すことを目的とする。そのうえで、語りの変化をもたらす社会的動因とはなにか、大衆的概念と発症者が内面化する大衆的概念の間にはどのような溝があるのかということを考察する。これまでの社会学における、摂食障害の研究の主たる問いであった「発症者が社会をどうみるか」から「社会が疾患をどうみてきたか」へと視点の転換を行い、問題解決のための新たな視座を提示したい。なお、本発表は2014年に筑波大学大学院に提出した修士論文の報告である。
[参考文献]
・浅野千恵『女はなぜやせようとするのか――摂食障害とジェンダー』勁草書房、1996年。
・磯野真穂『医療の語らなかった摂食障害――摂食障害の食の文化人類的探究』早稲田大学文学研究科博士論文、2010年。
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/handle/2065/36470
・中村英代『摂食障害の語り――<回復>の臨床社会学』新曜社、2011年。
・斎藤学『家族の中の心の病――「よい子」たちの過食と拒食』講談社、1997年〔初版1993年〕。
・佐藤雅浩『精神疾患言説の歴史社会学――「心の病」はなぜ流行するのか』新曜社、2013年。
- 発表2:佐藤 桃子(東京大学 教養学部 学際科学科 4年)
「日本における羊水検査の導入と女性」
[内容紹介]
2013年4月から実施された無侵襲的出生前遺伝学的検査(以下、NIPT)は安易さと的中率の高さ、高齢妊娠のリスクの普及により関心を集め、研究機関の予想を超える人数の妊婦が受診した。しかし導入に対して障害者団体のほか、フェミニズム団体が強く抗議していた事実がある。実施から1年が経過し、検査は既に自明のものとなりつつあるが、女性団体の反発と受診者妊婦の多さという、一見矛盾する事態の理由は、現段階では解明されていない。
そこで本報告では、NIPT導入まで最も確実で安全とされていた羊水検査の導入と女性に注目し、当時の妊婦が何を求め、なぜ羊水検査を受けていたか分析することを目指す。羊水検査の導入の歴史研究は殆ど見られない。しかし、当時の羊水検査と女性の関係を探ることで、現在自明とされている出生前診断を分析し直す新たな視点がもたらされると考える。なお、本報告は2015年に東京大学に提出予定の卒業論文の構想発表である。
[参考文献]
・土屋敦「「不幸な子どもの生まれない運動」と羊水検査の歴史的受容過程――「障害児」出生抑制政策(1960年代半ば--70年代初頭)興隆の社会構造的要因」『生命倫理』17(1)、2007年、190--197頁。
・谷奥克己「「羊水検査」実施のねらい!!――優生保護法「改正」の意図と関連して<不幸な子どもを生まない運動とは>」『臨床心理学研究』11(1)、1973年、41--47頁。
・Ruth S. Cowan, "Medicine, Technology, and Gender in the History of Prenatal Diagnosis" in Angela N. H. Creager, Elizabeth Lunbeck and Londa Schiebinger eds., Feminism in Twentieth-century: Science, Technology, and Medicine, Chicago: The University of Chicago Press, 2001, pp. 186--196.
- 進化論と植物学
- 今回の生物学史研究会は「進化論と植物学」と題して、中尾暁さんに報告を、それに対するコメントを飯田香穂里さんからいただきます。会員・非会員にかかわらずどなたでもご参加いただけますので、みなさまふるってご参加ください。
- 日時:6月7日(土) 午後4:00〜6:00
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- タイムスケジュール:
16:00-16:05 はじめに:発表者の紹介・研究会テーマの説明
16:05-16:55 発表:中尾暁
16:55-17:10 コメント:飯田香穂里(総合研究大学院大学)
17:10-18:00 全体でのディスカッション
*研究会終了後、18:00から懇親会を行います。会費は3000円前後を予定しています。
- 発表:中尾暁(東京大学大学院 総合文化研究科 修士課程)
- [内容紹介]
現代の進化学の基本的なパラダイムである「進化の総合説」は、1930〜50年頃の「進化論の総合」において築かれた。しかしこの「総合」のあいだ、植物を専門とする研究者たちは理論の構築にあまり貢献することができず、総合説は主に動物をモデルとして構築された。総合説の枠組みへの植物学の参入は、1950年になって植物学者ステビンズが出版した『植物の変異と進化』という本によって達成されたと考えられている。
本報告では、総合期の植物学が進化理論の構築に際してどのような課題に直面していたのか、そしてステビンズがそれらの課題をどのように処理して総合説を植物に適用しようとしたのかを検討する。本報告は特に、『植物の変異と進化』の中に登場する「遺伝的システム」という細胞学由来の概念、および「遺伝的システムが進化する」という発想に注目し、ステビンズが植物進化は総合説で説明できるということを訴えるにあたって、これらの考え方が果たしていた役割について考察する。
- [参考文献]
・Harman, Oren Solomon. “Method as a Function of “Disciplinary Landscape”: C. D. Darlington and Cytology, Genetics and Evolution, 1932--1950.” Journal of the History of Biology 39 (2006): 165--197.
・E.マイアー『ダーウィン進化論の現在』、養老孟司訳(岩波書店、1994年)。
・Mayr, Ernst and William B. Provine eds. The Evolutionary Synthesis: Perspectives on the Unification of Biology. Cambridge, MA: Harvard University Press, 1980; reprint, with a new preface by Ernst Mayr, 1998.
・Smocovitis, Vassiliki Betty. Unifying Biology: the Evolutionary Synthesis and Evolutionary Biology. Princeton: Princeton University Press, 1996.
・Smocovitis, Vassiliki Betty. “Botany and the Evolutionary Synthesis.” In The Cambridge Encyclopedia of Darwin and Evolutionary Thought, pp. 313--321. Edited by Michael Ruse. Cambridge: Cambridge University Press, 2013.
・Stebbins, Jr., G. Ledyard. Variation and Evolution in Plants. New York: Columbia University Press, 1950.
- 今回の生物学史研究会は、発光生物を研究されている大場裕一さんをお招きします。第1部では、研究のかたわらで長年調べてこられた発光生物研究の歴史についてお話しいただきます。第2部では、今年の読書感想文コンクールの課題図書に選ばれた『ホタルの光は、なぞだらけ』を執筆された経験をもとに、科学書のありかたについてのお考えをお話しいただきます。一部だけのご参加も歓迎いたします。
- 日時:8月9日(土) 13:00〜15:00(第1部)/15:30〜17:30(第2部)
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- 発表:大場裕一(名古屋大学大学院 生命農学研究科 助教) http://obayuichi.web.fc2.com/
- タイムスケジュール:
第1部(13:00〜15:00) 発光生物学の歴史
特別編(14:30〜15:00) ウミホタルが光るようすを見てみよう(小学生以上むけ)
第2部(15:30〜17:30) 児童向けの科学書を書いてみて思うことなど
懇親会
- [参考図書]
大場裕一(2013) 『ホタルの光は、なぞだらけ―光る生き物をめぐる身近な大冒険』 くもんジュニアサイエンス http://shop.kumonshuppan.com/shopdetail/004002000013/
大場裕一・井上敏(2007)「生物発光の進化―ルシフェリンの由来・ルシフェラーゼの起源」『化学と生物』45 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/45/10/45_10_681/_pdf
下村脩(2014) 『光る生物の話』 朝日選書
羽根田弥太(1972)『発光生物の話―よみもの動物記』 北隆館
羽根田弥太(1985)『発光生物―Luminous organisms』恒星社厚生閣
- [内容紹介]
(第1部 発光生物学の歴史)
私は、発光生物全般の基礎研究をしており、あわせてその歴史にも興味を持ってコツコツ調べ集めてきました。ですから今回は、発光生物の研究がひとつのまとまった科学史の対象となりうるかはわからないものの、(その辺の議論も含めて)私が調べてきたことを初めて皆さんの前でお話ししてみたいと思います。さてどうなりますか。
実際に発光生物学の歴史を調べた書籍は存在します。初期の歴史については、自身も発光生物学者であり「発光生物学の父」とも讃えられるニュートン・ハーヴィが A History of Luminescence From the Earliest Time Until 1900 (1957)という大著を残しています。最高の発光生物学者でありながら、歴史に関するこれだけの著作を残したハーヴィは、私の中ではスター的な存在です。
しかし、発光生物の研究が本格的な勢いを見せるのは、ハーヴィ没後(1959年以降)といってもいいでしょう。ルシフェリンの化学構造の決定、ルシフェラーゼの遺伝子クローニング、バイオイメージング技術として応用、そして下村脩博士らのノーベル化学賞(2008年)といった具合に、これまで半ばディレッタント的に行なわれてきた発光生物学が生命科学としての地位を確実なものにしてゆく過程が、まさにハーヴィ亡き後のその後継者たちの活躍にあるからです。
発光生物学が生命科学の重要な「ツール」として認識されるようになった現在、その一方で、発光生物学の基礎研究は再びないがしろにされ始めています。まるで、もう終わった学問であるかのように。しかし、私は、発光生物学にはまだ知のディレッタンティズムが息づいていると思っています。なぜなら、発光生物の基礎研究はこんなに楽しいのですから。
(第2部 児童向けの科学書を書いてみて思うことなど)
「私なら、こう書いてやる!」。くもん出版から児童向け科学書の執筆依頼があったとき、最初に頭に浮かんだのは、この言葉でした。私は、自分自身がポピュラーサイエンス本に大きな影響を受けて今の道を歩んでいるという思いもあり、普段から積極的に児童向け科学書や一般向け新書を数多く読んでいました。そして、これはイイとかこれじゃあダメだとか、勝手な考えを頭の中でくすぶらせていましたので、いざ自分が書くことになったとき、とっさに冒頭のような言葉が頭をよぎったのです。
私の本『ホタルの光は、なぞだらけ』は、そんな熱い意気込みをやわらかく綿にくるんで書きました。ですからそうしたトゲトゲしさは一見どこにも見えないかもしれません(あとがきに、それが多少見え隠れしているかもしれませんが)。今回は、そんな綿にくるんでおいた部分をひとつひとつ取り出して紹介しながら、児童向け科学書やポピュラーサイエンス本のありかたについて皆さんとディスカッションできればと思います。
今年の3月、この私の本が今年の青少年読書感想文全国コンクールの課題図書(中学生の部)に選ばれたという連絡が入りました。子供のころ読書感想文が苦手だった私にとっては、とても不思議な気分です。それはともかく、私の本を読んだ子どもたちは、どんな読書感想文を書いてくれるのでしょう。私が意図した意気込みは子どもたちに伝わるでしょうか。それとも、やっぱり通り一遍の科学読み物として受け取られるのでしょうか。私の熱い思いが伝わっていなければ、私の失敗です。ですから、感想文の作品を読むことになる今年の秋は、楽しみでもありまた恐ろしくもあるのです。
- 今回の生物学史研究会では、「小さな生き物、小さな博物学者――泉鏡花をめぐって」と題して、お二方にご発表いただきます。前半は、数々の優れた鏡花論を発表されている日本文学研究者の金子亜由美さんに、関東大震災後の時代と鏡花文学のなかの動植物の形象をテーマにご発表いただきます。後半は、『折口信夫 独身漂流』(人文書院)、『荷風へ、ようこそ』(慶應義塾大学出版会、2009年度サントリー学芸賞)、『泉鏡花 百合と宝珠の文学史』(慶應義塾大学出版会)などの著作で近代日本文学の幅広い対 象を研究・批評されている持田叙子さんに、生き物をとらえる小さな観察者という観点から鏡花の文学世界、鏡花の描く生物世界の魅力を語っていただきます。多くの皆様のご来場をお待ちしております。
会場や配布資料の準備のため、下記のフォームよりご登録いただければ幸いです。
登録フォーム:http://bit.ly/1sW5pVu
- 日時:9月13日(土) 15:00〜17:30
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- [発表概要]
一坪半の異界――泉鏡花と小さな生き物たち
金子亜由美(早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学)
関東大震災後の泉鏡花は、震災時の東京の様子を報告するルポルタージュ等を含め、幾つかの小品を書いている。その中でも、「二三羽――十二三羽」(大一三・四)を取り上げ、震災以前に書かれた短編作品「楓と白鳩」(大一一・七)と比較しつつ、作中に描かれる動植物の形象を分析する。その上で、震災後、明治(あるいは江戸)の面影が消え、近代から現代へと本格的に時代の趨勢が移り変わっていく東京の中にあって、鏡花が自らの作品世界をどのように(再)構築しようとしていたかを考察する。
小さな博物学者――うつむく視線
持田叙子(國學院大学非常勤講師)
泉鏡花の作品には、くも、蟹、蛙など水や地を這う小生物、あるいはキノコや苔など地面に近い植物が印象的に出てきます。神秘と怪異の霧は、そこから湧きおこります。
このミクロな景観は、幼児がまずその低く小さな視線でとらえる原初のいのちに他ならないのではないでしょうか。鏡花文学の怪異とは、小さな博物学者である子どもがいのちを感ずる。ミクロな世界から始まる――そんな問題を入り口とし、鏡花についてお話させていただきたいと存じます。
- [文献]
泉鏡花「二三羽――十二三羽」
・『鏡花全集』、第二七巻、岩波書店、昭和一七年
・『鏡花短編集』、岩波文庫、昭和六二年
・青空文庫 http://bit.ly/1qQdlsI
泉鏡花「楓と白鳩」
・『鏡花全集』、第二二巻、岩波書店、昭和一五年
・近代デジタルライブラリー http://bit.ly/1vVTWqS
金子亜由美「夢の転機――「甲乙」における関東大震災の影響」『文芸と批評』一一巻四号(二〇一一年一一月)
持田叙子『泉鏡花――百合と宝珠の文学史』慶應義塾大学出版会、二〇一二年
- 今回の生物学史研究会「進化の総合説再考」では、進化の総合学説についての新視点を切り開いたUnifying Biology (Princeton University Press, 1996)の著者V. B. Smocovitisさんをお招きし、総合説の歴史研究の状況について議論したいと思います。また、東京大学大学院の中尾暁さんからは、植物学における総合説について話題提供していただきます。使用言語は英語になります(質疑では適宜翻訳を入れます)。どなたでも参加できますので、お気軽にお越しください。準備のため、以下の登録フォームよりご登録いただければ幸いです。
http://goo.gl/forms/V3gv2m6Quv
- 日時:11月30日(日)15:00〜17:30
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- [発表概要]
15:00-15:45
中尾暁(東京大学大学院)
The Evolutionary Synthesis in Botany and "Genetic Systems"(植物学における進化論の総合と「遺伝的システム」)
16:00-17:30
Vassiliki Betty Smocovitis (University of Florida)
Evolutionary Synthesis: Reflections and Current Understanding(進化の総合説:回顧と現在の理解)
- [History of Biology Seminar:Rethinking Evolutionary Synthesis]
Date: November 30, 2014 (Sun)
Time: 15:00〜17:30
Location: University of Tokyo, Komaba, Bldg. 14, Room 308
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/eng_site/info/about/visitors/maps-directions/
Language: English (translation for Q&A)
15:00-15:45
Gyo Nakao (University of Tokyo)
The Evolutionary Synthesis in Botany and "Genetic Systems"
16:00-17:30
Vassiliki Betty Smocovitis (University of Florida)
Evolutionary Synthesis: Reflections and Current Understanding
Organized by the Biological Unit of the History of Science Society of Japan
Contact: sumidatomohisa@gmail.com