2016年 生物学史研究会
- 2月20日(土)に生物学史研究会が開催されることが決定いたしましたので、ご案内申し上げます。多くの方の参加を心よりお待ちしております。なお、配付資料の準備などの関係から、事前に応募フォームでご登録いただけますと幸いです。
応募フォーム:https://docs.google.com/forms/d/1ZPAJPpK6J48bJBrLmQdUt67bo8mBz8lLvXxoFjExG3I/viewform
- 日時:2月20日(土)15:00〜18:00
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- タイムスケジュール:
15:00-15:05 はじめに:発表者の紹介・研究会テーマの説明
15:05-15:50 発表1:松原宏之
15:50-16:35 発表2:山岸智弘
16:35-16:55 休憩
16:55-17:15 ディスカッション1:発表者間でのコメント・リプライ
17:15-18:00 ディスカッション2:フロアからのコメント・質疑応答
*研究会終了後、18:00から懇親会を行います。会費は3000円前後を予定しています。
- 報告者1:松原宏之(立教大学文学部)
「訪問看護婦のラディカリズム―20世紀初頭アメリカの医療、 福祉、社会運動」
- [内容紹介]
19世紀以降の公衆衛生学の成長が都市社会の人命を救うとともに、都市民を規律もしたことはよく知られている。しかし、移民や労働者のもとに出向いた訪問看護婦という存在に着目すると事態は複雑になる。20世紀初頭ニューヨークの事例を中心にみてみたい。
訪問看護婦はある意味では公衆衛生学のエージェントに過ぎず、専門性やジェンダーの点ではいっそう周縁的な存在である。しかし看護史の成果によれば他方で、臨床の場における彼女たちは大きな主体性をも持ちえた。当時の医療の力量は未熟であった。とりわけ病院外での施療では、患者や地域との関係を取り持ち、設備にも薬にも事欠く現場に対応できる看護婦の役割は無視し得なかった。 この訪問看護婦たちには、机上の狭義の医学にとどまらず、患者の背後に広がる 社会状況が見えていたと思われる。「長い19世紀」の終わりにあって、これら看護婦たちは社会改良の構想をも抱きはじめるのである。
- [参考文献]
松原宏之『虫喰う近代―1910年代社会衛生運動とアメリカ の政治文化』ナカニシヤ出版、2013年.
- [HP]
http://319.air-nifty.com/
- 報告者2:山岸智弘(同志社大学大学院文学研究科博士課程(後期課程))
「ドイツの看護職への第一次世界大戦の影響を巡って―研究序説―」
- [内容紹介]
第一次世界大戦期ドイツ看護史研究は近年盛んに行われてきている。その成果によって、戦争看護婦のイメージや役割、また看護活動の在り様が一定程度明らかになってきたと言えよう。他方、ヴァイマル期ドイツ看護史研究はそもそもそれほど多くないが、職業化の流れは一定程度明らかになっている。しかしながら、これらの架橋を如何に行うのかが管見の限り先行研究において十分には示されてきていないと思われる。本報告はこれに関する研究の第一歩として、先行研究を確認しつつ同時代に刊行された看護雑誌(本報告では主としてドイツ看護婦職業機構が発行した『ラザロの十字の下に』誌を用いる。)などの分析からその一端に迫りたい。
- [参考文献]
Unterm Lazaruskreuz, Berlin, 1914-1920.
B. Panke-Kochinke (2004) : Unterwegs und doch daheim, Frankfurt am Main.
A. Prufer (1997) : Vom Liebesdienst zur Profession?, Hagen.
A. Nitschke (2003) : Helfen im Menschenschlachthaus?, Berlin.
- 佐藤恵子著『ヘッケルと進化の夢』(工作舎、2015年)合評会
- 日時: 2016年3月5日 14時開場 14時30分開始 17時30分終了予定
- 会場: 東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- 主催: 日本科学史学会生物学史分科会、共催: 東海大学総合教育センター
- 登壇者: 著者・佐藤恵子(東海大学)、評者・奥村大介(東京大学)、司会・松本俊吉(東海大学)
- 3月の生物学史研究会は、佐藤恵子著『ヘッケルと進化の夢(ファンタジー):一元論、エコロジー、系統樹』(工作舎、2015年 。詳細:http://goo.gl/qw1d3x)の合評会を開催いたします。昨年9月に刊行され、すでに広く話題を集めているこの大著は、エルンスト・ヘッケル(Ernst Haeckel, 1834-1919)に一冊を尽くして論じた日本人著者によるモノグラフとして戦後初のものであり、ヘッケルの来歴と学問、さらにヘッケルが思想を形成した時代と社会、さらには彼が同時代や後世に与えたインパクトをも論じた、きわめて広範な関心に基づく研究書です。今回は、著者の佐藤恵子氏を迎え、本書の合評会を行ないます。通例の研究会よりも時間を拡大して開催しますので、会場の皆様と活発な議論ができることを期待いたします。多くの皆様のご参加をお待ちしております。会場や配布資料の準備のため、下記のフォームよりご登録いただければ幸いです(参加無料。どなたでもご参加いただけます)。
登録フォーム: http://goo.gl/forms/3XnuOF4i5m
- 参考文献:
・佐藤恵子『ヘッケルと進化の夢(ファンタジー):一元論、エコロジー、系統樹』工作舎、2015年(出版社による内容紹介http://goo.gl/qw1d3x)
・奥村大介「ささめく物質:物活論について」、『現代思想』、青土社、2014年1月号
- 3月26日(土)に生物学史研究会が開催されることが決定いたしましたので、ご案内申し上げます。多くの方の参加を心よりお待ちしております。なお、配付資料の準備などの関係から、事前に応募フォーム(http://bit.ly/1Ld4n08)からご登録いただけますと幸いです。
- 広島、長崎、マーシャル諸島……。核兵器によって計り知れない損害を被った地域を訪れ、子どもたちの診察を行ったワタル・ウォルター・ストウ(1912?1981)。福島をルーツに持つ日系二世の小児科医ストウは、広島ではABCCの小児科責任者を務め、マーシャル諸島では子どもたちの深刻な甲状腺異常を見出しました。また、ヒューストンのMDアンダーソン病院では、小児がん化学療法において多大な貢献をします。すなわちストウは、冷徹な「核の研究者」と多くの子どもの命を救った「小児がん化学療法の先駆者」という二つの顔を持ちます。12年におよぶ丹念な取材によって埋もれかけていたストウの生涯を掘り起こした本書は、一人の医師に光をあてて歴史を紡ぐことで、被ばく者調査をめぐる歴史研究に新たな風を吹き込みました。合評会では著者を迎え、ストウの二つの顔をどのように理解したらよいか、医師個人の物語を被ばく者調査というより大きな物語とどのように接続させることができるか、議論したいと考えています。関心を寄せるみなさまのご参加をお待ちしています。
- 日時:2016年3月26日(土)14:00〜17:30
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- 著者・長澤克治(共同通信社)
- 評者・飯田香穂里(総合研究大学院大学)、柿原泰(東京海洋大学)、聞間元(生協きたはま診療所)、高橋博子(明治学院大学)、中尾麻伊香(立命館大学)
- 司会・中尾麻伊香
- 長澤克治氏略歴
1960年、静岡県沼津市生まれ。83年、筑波大学第二学群比較文化学類卒業、共同通信入社。93?96年、広島支局で<被爆半世紀>を取材。2003?04年、名古屋支社編集部デスクとして<ビキニ事件半世紀>を取材。04?05年に広島支局デスク、<被爆60年>を取材。その後、警視庁キャップ、千葉支局長、科学部長、編集委員などを経て15年から名古屋支社次長。
- 紀愛子(早稲田大学文学学術院 )「「弁別」された生命をめぐって ――ナチ体制下の医学犯罪とその「過去の克服」に関する試論 」
- 日時:2016年7月23日(土) 午後2:00〜4:00
- 場所:東京大学駒場キャンパス14号館3階308号室(※京王井の頭線「駒場東大前」駅下車、渋谷寄り改札を出て正面手前に構内案内板があります。)http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html
- 内容紹介: 1945年は、ドイツの病者や障害者にとって「解放の年」ではない。ナチ体制下、彼らに対して行われた強制断種および「安楽死」という医学犯罪は、ナチ体制の崩壊とともに終わりを迎えた。しかし、その生命を「弁別」しようとする思想は、1945年以降もドイツにおいて存続し、医学犯罪の「過去の克服」に影響を及ぼしてきた。本報告では、ナチ体制下の医学犯罪をめぐる「過去の克服」について、(1) 戦後ドイツにおいて、犠牲者とその遺族が置かれた状況とその変化、(2) 連邦政府の補償政策、 (3) 戦後ドイツ医学界の「過去との取り組み」、この3つの観点から考察する。その際、戦後ドイツにおいてもなお根強く存在した優生学思想が、これらの観点に与えた影響について検討する。以上の手続きを経ることで、本報告は、病者・障害者に対するまなざしの変化という視点から、ナチ体制下の医学犯罪をめぐる「過去の克服」を捉え直そうとする。
- 参考文献:
エルンスト・クレー(松下正明監訳)『第三帝国と安楽死:生きるに値しない生命の抹殺』批評社、2001年。
木畑和子「ナチス『医学の犯罪』と過去の克服」『世界』(岩波書店)613号、1995年、280-286頁。
小松美彦『生権力の歴史:脳死・尊厳死・人間の尊厳をめぐって』青土社、2012年。
米本昌平/ 松原洋子/ 島次郎/ 市野川容孝『優生学と人間社会:生命科学の世紀はどこへ向かうのか』講談社、2002年。
紀愛子「ヴィルヘルム期〜ヴァイマール期ドイツにおける安楽死論と障害者観:ナチス「安楽死」作戦との関連において」『史論』(東京女子大学読史会)第67号、2014年、101-122頁。
紀愛子「『ナチスによる「安楽死」および強制断種被害者の会』の歴史と活動」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』(早稲田大学大学院文学研究科)第61輯、2016年、91-106頁。