高校生の皆さんへ

 


教員よりひとこと

研究室ホームページを訪問していただき、有難うございます。私たちの研究室は、簡単に言えば「環境中から新しい微生物を見つけ、その性質を生化学の観点で研究した上で、それを新たな製品作りに活かしていこう」という目標で教育・研究を進めています。

微生物という語を聞くと、病原菌のような怖いイメージを持つかもしれません。しかし、自然環境に棲息する微生物全体で考えると、病原菌のような悪い微生物は多くはなく、医学の発展もあり、そこまで怖れて生活する必要はありません。

むしろ皆さんの身のまわりには、微生物の能力を活かした製品や技術が沢山あることに気付いていますか?例えば、病気になった時に医院でもらう抗生物質の多くは、実は微生物から見つかったものです。サバンナに棲息する動物のように、土の中では限られた栄養をめぐって微生物どうしの競争がおきています。他の微生物をおさえて自分が優位に増殖できるように放出する”武器”が抗生物質です。

ヨーグルト、味噌、納豆、漬物をはじめとする発酵食品が微生物によって製造されていることはご存じと思います。スーパーやコンビニで飲むヨーグルトを買うことができますが、その陳列棚を見て下さい。数多くの飲むヨーグルトが並んでいませんか?食品メーカーごとに、味が美味しく、健康効果が期待できる乳酸菌を自然界から探し出し、特許までとって、独自のヨーグルト製品を作っているのです。発酵食品以外にも、微生物がつくった成分が利用されている場合が沢山あります。

化粧品やサプリメントにも、微生物が生産する成分を入れて、良い効果を期待する製品があります。例えば、微細藻類が生産するアスタキサンチンや麹菌が生産するコウジ酸などです。洗濯洗剤の箱にある原材料ラベルを見て下さい、微生物の酵素が配合され、衣服の汚れが落ちやすくなるよう工夫されています。

SDGsで注目される環境保全やエネルギー分野でも微生物は活躍しています。皆さんが出す日々の生活排水は、地下の下水管を通って市内の下水処理場に入り、そこで微生物によって汚れが分解され、きれいになって環境に放出されます。他方、タンカーの座礁などで起きる石油による海洋汚染も、石油を分解する微生物を使って解決します。石油に代わると期待されているバイオエタノールは酵母菌の発酵能を利用しないと製造できません。天然ガスの代わりになるバイオガスもメタン生成古細菌を含む微生物群集によって生産されます。

このように見てみると、微生物を使った製品や技術が多いことがわかりますね。しかし、実は、自然界の微生物でこれまで研究されたものは全体の0.1%程度であり、残りの99%はまだ研究されたことがない未知の微生物であることがわかってきました。私たちは、社会をより豊かにする優秀な微生物を探す「微生物ハンター」として研究を進めています。皆さんが興味をもち、一緒に研究に参加してくれることを期待しています。

私たちを含め、生命化学科では、オープンキャンパスに加えて、アカデミック・キャンプという実験体験イベントを夏休みに実施しています。時期が近づくと、生命化学科のホームページに案内がでますので、是非ともご参加下さい。また、高校への出張講義も募集しているので、担任や進路指導の先生に「工学院大学の生命化学科を呼んで欲しい」とお願いしてみて下さい。大学行事や高校で皆さんとお話しできることを楽しみにしています。

社長