地衣類フォトビオントの生化学・生理学的解析と健康分野への応用

 地衣類とは細菌・糸状菌・微細藻類が共生した生物体で、地衣類を構成する藻類をフォトビオントとよびます。地衣類は栄養分の乏しい過酷環境に生息するので、生きていくための栄養はすべて自給であり、構成微生物のそれぞれが自分の得意能力を使い、お互いに栄養のやり取りをしています。

 その中で、フォトビオントは光合成を行って大気中の二酸化炭素から有機物を作り、その一部を細菌や糸状菌にあげる役割を担っています。また、作り出す有機物は糖だけではなく、多くの生理活性物質を生産することも示唆されています。しかし、フォトビオントは固い地衣組織の中に埋まり、細菌や糸状菌と共生していることから、純粋分離と培養が難しく、河川水等に生息する一般的な微細藻類と比較して研究があまり進んでいません。

 そこで本研究室では、密度勾配遠心という方法によって、フォトビオントを純粋分離し、分離株の細胞成分を分析することで、医薬品・化粧品・健康食品等に利用できないかを研究しています。