2-4.第四日野小学校(遮熱塗料)

実測対象となる建物は東京都品川区のH小学校である。第四日野小学校屋上に、緑化(芝生)と一般塗料(緑色)が並べて既設されている。本報告では、一般塗料の一部分に高反射率塗料(以下、遮熱塗料と呼ぶ)を塗布し、一般塗料と遮熱塗料と緑化の表面温度、グローブ温度を計測し屋外環境の改善効果について比較検証する。さらに遮熱塗料、一般塗料、屋上緑化の施工部分の真下にはそれぞれ教室があり、スラブと天井の表面温度を計測する温度計を設置する。しかし教室の開口部が広くカーテン、空調の使用時間は不規則であり、屋外環境を中心に評価する。以下にに第四日野小学校の屋上および室内風景、第四日野小学校の平面図を示す。
 

塗料は一般的に明度が高いほど反射率が高く、明度が低くなると、反射率は下がる傾向にある。遮熱塗料は近赤外線光域の反射率が一般塗料より高く、表面温度温度明度を高くせずに日射をより多く反射することが可能である。遮熱塗料は太陽エネルギーの50%を占める近赤外線光域(780〜2100nm)を、効率よく反射することで、塗布面の表面温度を大幅に低減することができる。太陽光線の波長域と遮熱塗料反射域を示す。これにより建物の温度低減、夏期の冷房負荷削減効果、CO2排出量の削減効果が期待できる。遮熱塗料と一般塗料の違いを、わかりやすく概念図にて示す。


第四日野小学校に設置した計測機器一覧および計測項目を示す。また、遮熱塗料・塗布後の計測機器設置箇所を示す。


(1) 遮熱塗料面計測機器設置
遮熱塗料面計測機器設置は遮熱塗料施工前の7月9日に行った。遮熱塗料面計測機器設置手順を示す。屋上の高反射率塗料を塗布する場所に表面温度計を設置した。両面テープで固定し、剥離しないようにエポキシ樹脂で固定した。そして、その上から日射の影響を考慮して銀テープで付着した。
 
 

(2)グローブ温度計設置設置状況
グローブ温度計設置状況を示す。屋上緑化上のグローブ温度計測機器を示す。三脚に小型無線温度計を取り付け、地表面から高さ約40cmに黒球を取り付け温度計測を行った。

 
(3) 室内計測機器設置状況
無線小型温度計設置状況を示す。教室の廊下側壁面に無線小型温度計を設置した。教室の廊下側から、部屋中央まで延長ケーブルを伸ばし、天井表面および、スラブ・梁にセンサー部分を貼り付け、計測を行った。
. 
(4)遮熱塗料の施工作業
遮熱塗料の施工作業風景を示す。7月5日に塗布面の洗浄作業を行い、7月6日に塗布作業を行った。本報告で屋上に塗布した、塗料の色は一般塗料と同じく、緑色を選定した。
 
 
 
一般および遮熱塗料の日平均日射反射率(10:00〜14:00の平均値)を示す。そして、一般および遮熱塗料日射反射率を示す。長短波放射収支計で計測した波長域は、短波長放射(300〜2800nm)である。選定日は快晴である12月26日〜12月27日である。遮熱塗料と一般塗料を日射反射率が安定している昼間の時間帯で比較すると、約5ポイント、遮熱塗料が高いことがわかる。しかし、遮熱塗料の日射反射率は50%以下と低い結果になり、一般塗料と遮熱塗料で大きなポイント差を確認することができなかった。


(1)外界気象選定日の概要
選定日の気象データを示す。日射量が多く、外気温が高い夏期である8月15日の外界気象を示す。次に日射量が多く、外気温が高い中間期である10月21日の外界気象を示す。



(2)屋上表面温度の比較検証
8月15日の一般塗料、遮熱塗料、緑化の表面温度を示す。緑化面の温度低減効果が大きく、一般塗料および遮熱塗料と比較すると約22℃低いことがわかる。また、遮熱塗料と一般塗料を昼間のピーク時で比較すると、差がほぼない結果となった。この結果の要因として、一般塗料と遮熱塗料の日射反射率の差が少ないことが挙げられる。

(3)グローブ温度の比較検証
10月21日の一般塗料、遮熱塗料、緑化上グローブ温度を示す。昼間で各温度を比較すると、一般塗料、遮熱塗料はほぼ同じあることがわかる。しかし屋上緑化は最大で約5℃低いことがわかる。

(4)WBGTの比較検証
10月21日のWBGT(湿球黒球温度の略)を示す。実測した外気温、グローブ温度から湿球温度を算出してから、WBGTを求めた。遮熱塗料、一般塗料、屋上緑化のWBGTを比較すると、緑化が若干下がっていることがわかる。しかし遮熱塗料と一般塗料で大きな差異はなかった。

(5)PMV(予想平均温冷感申告)の比較検証
clo、metの値をともに1.0とした場合のPMVを示す。遮熱塗料、一般塗料、屋上緑化のPMVを比較すると、緑化が若干下がっていることがわかる。しかし遮熱塗料と一般塗料で大きな差異はなかった。

|